キヤノン EOS R6 Mark IIIは野鳥撮影に適しているか?|戸塚学
はじめに
キヤノン EOS R5 Mark IIについては以前、設定や各機能に関しての記事を書きました。今回はEOS R6 Mark IIIは野鳥撮影に適しているのか?について書いてみたいと思います。

■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
■撮影環境:FVモード F9 1/320秒 ISO200 WBオート

この朝は気温も下がらず、太陽も出ないし気嵐も上がらず「終わったな」と思っていたが撮影を切り上げる寸前、東の空が明るくなり川面を染めた。レンズをタンチョウに向けると全域AFは素早くタンチョウの姿を捉えた。露出は若干アンダーにして川面の色を活かした。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
■撮影環境:FVモード F9 1/250秒 ISO640 WBオート

タカの渡りはコースが同じなのだろう、小鳥たちも飛んで行く。ただ撮影は難しく全域AFでは中央以外にピントが合うと、それをAFトラッキングが追ってしまうのでフレキシブルゾーンAF1で対応するといい。ピント精度は素晴らしくしっかり追ってくれる。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4L IS II USM + EF1.4xIII
■撮影環境:FVモード F5.6 1/4000秒 ISO800 WB太陽光
EOS R5系とEOS R6系との違いとは?
初代のEOS R5とEOS R6が発売された時に何がどう違ったか?ざっくり言えば画素数と価格だけしか違いはありませんでした。どちらもフルサイズセンサーで操作系もほぼ同じ。では画素数の違いでどんな差があるかと言うと、画素数の少ないR6は高感度に強く、画素数が少ない分データが軽いのでパソコンでの作業もはかどります。一方で総画素数が減る分、プリントで大きく伸ばす時の足かせになったり、1.6倍クロップ時やトリミング時で画素数の少なさを実感しました。したがってR5とR6の2台体制で使う場合、「適材適所」で使い分けるプロもいましたし、私もそうしていました。
現在ではEOS R5系はEOS R5 Mark IIに進化しましたが、EOS R6系はもう一段進んだEOS R6 Mark IIIになっています。前機種EOS R6 Mark IIは所有していないので借りて使った感想になりますが、確かにAF系の進化はあったものの、劇的な変化は感じられませんでした。その後発売されたEOS R5 Mark IIはEOS R5からブラッシュアップを超えて別物になったと実感したため、すぐに購入して現在私のメインカメラとなっています。
ではEOS R6 Mark IIIはどうなのか?私的にはEOS R5 Mark IIとの2台体制で使用した時の感想は、どちらがどちらだかわからなくなるほど、ほぼEOS R5 Mark IIと同じと感じました。若干機能的に省かれている部分がありますが、ある意味野鳥撮影において「余分なぜい肉を落とした」仕様になっていると感じます。
R5 Mark IIにできてR6 Mark IIIにできないこと
上位機種にあたるEOS R5 Mark IIには、カメラ内RAW現像時に適応することができるニューラルネットワーク系(ノイズ低減とアップスケーリング)の機能が搭載されており、これがEOS R6 Mark IIIでは非搭載となります。視線入力機能もEOS R6 Mark IIIにはついていませんが、これはAFエリアを選択することで対応が可能です。
一つ残念なのは「ファインダーの見え具合」で、EOS R1やR5 Mark IIに比べるとEOS R6 Mark IIIのファインダーは荒く感じることです。たとえるならEOS R7のファインダーを大きく見やすくした感じが否めず、順光の時はいいのですが、逆光や半逆光で山バックになった時は木々の葉の反射による照り返しで鳥が飛翔する姿が非常に見えにくくなります。ただしAFはしっかりピントを追従しているので「エイ、ヤァ!」と高速連続撮影+で連写した場合、ほとんどピントを外していません。とはいえファインダーが見づらいのは使いづらい。しかしこの感覚は個人差があり、ファインダーの明るさ調整である程度対応ができるので、気になる方は調整すると使い勝手がよくなると思います。
総画素数もEOS R5 Mark IIが約5030万画素、EOS R6 Mark IIIが約3420万画素なので、ここまで画素数が上がれば1.6倍クロップやある程度のトリミングでも十分な画素数を得られます。

中央に夕陽を配置するとナベヅルがかなり見えづらくなるが、AFの青いポイントはしっかりと狙った右のナベヅルから離れない。シャッターを切ったあとモニターで確認するとしっかりとピントが来ていた。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 IS USM
■撮影環境:FVモード F10 1/400秒 ISO400 WB曇り

空バックで飛翔する小鳥の群れを撮るコツは、あるポイントにピントを合せておく「置きピン」が有効になる。空でピントを合せると斜面でもかなりの確率でAFトラッキングは追い続けてくれるが、逆光や半逆光のバックの反射でファインダーが見えづらくなる。そんな中でもピントを追い続けるAFトラッキングに驚かされる。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4L IS II USM + EF1.4xIII
■撮影環境:FVモード F5.6 1/4000秒 ISO1600 WB太陽光
おすすめボタンカスタマイズ1:プリ連続撮影
EOS R1やR5 Mark IIにも装備されていた「プリ連続撮影」機能がもちろんEOS R6 Mark IIIにも装備されています。ただしここがポイントで、R1やR5 Mark IIはボタン1つにこの機能のON/OFF切り替えを割り当てることができず、メニューから呼び出さなければいけませんでした。そのためすぐに切り替えたくとも必ずワンクッションおくことになり、とっさに使いたい機能なのに手間を取る事がストレスでした。しかし、EOS R6 Mark IIIはボタンカスタマイズでこの煩わしさから解放されました!
私が以前「推し」ていたAF-ONボタンでのAF操作ですが、現在の機種(R1・R5 Mark II・R6 Mark III)はAF系が劇的進化したことで、デフォルトのシャッターボタン半押しでのAFでほぼ事足りるため、私はAF-ONボタンでのAF操作をしなくなりました。そこで使わなくなったこのボタンに「プリ連続撮影」を割り当てる事で、ON/OFFを素早く切り替えることができるようになりました!他の機種もアップデートでこの機能が早く使えるように熱望しています。






※プリ連続撮影は電子シャッターかつ高速連続撮影+(秒間約40コマ)に設定することが必須になる。それ以外の設定ではプリ連続撮影はできないので注意が必要

カツオドリが海に飛び込む時は進行方向や風向きをチェックしておき「どちらに飛び出すか?」を予想する。飛び込んだ水しぶきにピントを合わせ「置きピン」した後、シャッターから指を離して待つ。水面の色が変わった瞬間シャッターボタンを半押しするとすぐにピントを合せる。飛び上がった瞬間シャッターを切るがプリ連続撮影はシャッターを切る前から記録をしているのでこんなシーンを撮ることができる。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 IS USM + RF1.4x
■撮影環境:FVモード F10 1/2500秒 ISO2000 WBオート

ダイサギにピントを合せて、飛び上がった瞬間にシャッターを押し高速連写40コマで対応する。本来ならばタイムラグと瞬発力が遅れた場合、フレームから顔がはみ出したシーンからの連写になるが、プリ連続撮影ならシャッターを押す前から記録しているのであとから気に入ったものを選べばいい。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4 L IS IIUSM + EF1.4xIII
■撮影環境:FVモード F5.6 1/4000秒 ISO200 WBオート
おすすめボタンカスタマイズ2:呼び出し
こんな経験はないでしょうか?飛翔している野鳥がロケーションのいい場所にとまった。しかし自分のカメラ設定は1/2000秒・F8・ISO6400。これでは素晴らしい姿が、荒い画質の写真になってしまう。しかし慌てて設定を変えていては飛んでしまうかも?そんな時に便利なのが「呼び出し」です。設定は覚えるまでちょっと煩わしいのですが、撮影時にあらかじめ「どちらを優先するか」を決めて「SS・絞り・ISO」を設定しておけば、ボタン一つで素早く切り替えられてどちらもベストのシーンをものにできます!
例えば「高速で飛翔する姿」と「きれいなバックにとまる姿」を狙う場合、ボタン一つで飛翔する1/2000秒・F8・ISO6400も、きれいな姿の1/125秒・F5.6・ISO200でどちらも狙い通りに撮れます。
「流し撮りでのスローシャッター」と「手ブレを止めた姿」を狙う場合でも、流し撮りの1/15秒・F11・ISO200も、手ブレのない1/500秒・F4・ISO400のどちらも撮れます。もちろんこの逆でも可能ですし、自分の好みで使い分けが簡単にできます。





※同じように絞り値・ISO感度を設定
通常撮影が高感度・高ISOだった場合、「呼び出し」に低感度・低ISO設定します。
例:1/2000秒・F8・ISO6400が通常撮影の数値とすると、低感度時の数値の1/125秒・F5.6・ISO200
通常は高速で飛翔する場合はそのまま撮影。木の枝にとまった時にAEロックボタンを押すことで、設定した低感度時の設定での撮影ができます。これでまたチャンスに強くなり、思い通りの撮影ができるようになります!
※AEロックボタンを押したままにしないと「呼び出しで設定した数値」は使えません。

この日は天気が悪く、暗いのであえてスローシャッターで流し撮りに挑戦した。流し撮りは個人的には99%失敗するが1%の確率で成功カットが撮れればいいと思っている。この時はバックに街灯りと観光船を入れて流したシーンを撮ることができた。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
■撮影環境:FVモード F9 1/60秒 ISO1000 WBオート

上の写真を撮る場合どうしてもスローシャッター優先になるが、とまっている姿を狙う場合、設定を変えなければいけない。しかし「呼び出し」をAEロックボタンに割り当てておけば、「手ブレを抑えられるシャッタースピード」での撮影がボタンを押すだけでできる。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
■撮影環境:FVモード F9 1/500秒 ISO2000 WBオート
ニューラルネットワーク系を活用するアプリ
EOS R6 Mark IIIにはカメラ内でのニューラルネットワークノイズ低減とアップスケーリングという機能がありませんが、有料のアプリケーションをダウンロードすれば使うことができます。それがNeural network Image Processing Toolです。
ノイズ低減とアップスケーリングは別のアプリなので使いたい方を別々に使うことになります。どちらも細かな設定はできますが、使った感じではデフォルトでいいと思います。R1やR5 Mark IIのカメラ内現像では1.6倍クロップで撮影したRAW画像でもニューラルネットワークノイズ低減が適応されますが、そこで現像されたJPEG画像をアップスケーリングすることができない弱点がありました。しかしこちらはアプリなので、PC上でトリミングした画像もアップスケーリングができる=メーカー問わずJPEG画像ならばアップスケーリングも可能になります。必要であれば有料アプリでの対応を考えればいいとも言えます。

夕陽が手前のセイタカシギにだけ当たると赤く輝いた。プリ連続撮影がメインな撮影だったが、この頃はまだ「呼び出し」を設定していなかった。高速シャッタースピード・高ISO・高速連続撮影+だったが、設定を変えている時間が無いのでそのまま撮影した。しかし高感度に強いカメラなので美しい画像を得ることができた。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4L IS II USM + EF1.4xIII
■撮影環境:FVモード F5.6 1/4000秒 ISO1250 WB室内

ねぐらに戻るタンチョウが頭上を通過する姿を狙う。鳥自体が大きくかなり低い位置を飛ぶのでレンズをズームしながら撮影したが、AFトラッキングはズーミングをしていてもしっかりとピントを追い、合わせ続けた。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:FVモード F9 1/1000秒 ISO200 WB太陽光

展望台でタカの渡りを撮影していると1羽のハイタカがこちらに向かってきた。頭上を越えるシーンが70%、横が20%、正面は10%の割合で滅多にない。こんな時もR6 Mark IIIはファインダーの中から外さなければAFトラッキングがピントを合わせ続けてくれた。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4L IS II USM + EF1.4xIII
■撮影環境:FVモード F5.6 1/4000秒 ISO1250 WB太陽光

伊藤タンチョウサンクチュアリではタンチョウが近くにいる+青空+いい雲が出ている午前中は、必ず柵の下からローアングルで広角寄りのズームを使用して撮影する事にしている。全域AFでも大丈夫だと思うが、領域拡大AF上下左右や周囲で手前のタンチョウにピントを合わせて撮影すると失敗が少ない。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:FVモード F13 1/2500秒 ISO200 WB太陽光

海岸で採餌しながら移動するオオソリハシシギを狙う。彼らの動き見つつ、浜をゆっくり這うように近づき撮影をした。ここで1.6倍クロップを活用してアップ気味での撮影を挟みながらFullと1.6倍で撮影した。用途によって1.6倍クロップで十分なことがあり後処理が楽になる。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4L IS II USM
■撮影環境:FVモード F5.6 1/2000秒 ISO320 WB太陽光

市街地をバックに飛翔するノスリ。以前はこのようなシーンであればAFはバックの街並みにピントをとられてノスリに合わせることはなかったが、EOS R6 Mark IIIは飛翔速度にもよるが、かなりの確率でピントを合わせてくれる。空で捉えたあと斜面や市街地バックに入ってもほとんどピントを外さない。
■撮影機材:CANON EOS R6 Mark III + EF500mm F4L IS II USM + EF1.4xIII
■撮影環境:FVモード F5.6 1/4000秒 ISO1000 WB太陽光
まとめ
EOS R5 Mark IIとEOS R6 Mark IIIの価格差は約20万円。これを高いとみるか、安いとみるかは使う方次第です。どんなに高性能だといっても高価格帯のいわゆるフラグシップ機はどのメーカーも100万円近くの価格になります。そうなった場合、高くていいのは当たり前ですが、自分は何を優先したいのか?が重要になってきます。高感度ノイズ低減もアップスケーリングも使い方次第では無駄で邪魔な機能だとも言えます。シンプルで快適な野鳥撮影を楽しむのであれば、EOS R6 Mark IIIはおすすめの1台になると思います。
■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員














