キヤノン EOS R6 Mark IIIでヒコーキを撮る|A☆50/Akira Igarashi
はじめに

■撮影環境:ISO100 F11 20sec 焦点距離約450mm 松山空港
キヤノン社のRFシステムの中核を担うオールマイティカメラ「6」シリーズがフルモデルチェンジされました。2025年11月21日に発売されたEOS R6 Mark IIIは、RFシステムの中でもとくに人気のモデルであるEOS R6 Mark IIの正統後継機。IIIが発売されてからもなお、IIが併売されることからもわかる通り、その人気の高さがうかがえます。Mark IIIもMark IIの支持されてきた部分をしっかり継承しつつ、このクラスのカメラに求められる性能をより加えてきた印象。IIで「ココがもう少しあれば…」と思った部分を、しっかり満たしてきました。
Mark IIから変更されたところでまず目につくのが、Mark IIの2420万画素から3250万画素に高画素化されたところ。また、Mark IIでは記録方式がSDカードのダブルスロットだったものが、CFエクスプレスとSDカードのダブルスロットに変更されました。高画素化と高速化。この2点がMark IIから大きな進化となっています。これがヒコーキ撮影を含めた動体撮影においてどのような変化をもたらすのか?R6 Mark IIとの比較を中心にして撮影を進めてきました。
外観と操作性
EOS R6 Mark IIIの大きさは138.4(幅)×98.4(高さ)×88.4(奥行)mm。これはEOS R6 Mark IIと完全に一致しています。重さは本体のみで609g。こちらはMark IIの588g(本体のみ)からやや重くなっていますが、それでも約20gと微少な差となっています。外観はペンタ部などがIIに比べエッジの効いた形に。ボタンの周囲などの張り出しがよりクッキリとし全体的な押し出し感が増しました。ボタン配置などはMark IIからほぼ変更ナシ。「RATE/COLOR」ボタンの追加やスチルと動画の切り替えボタンがより触感でわかりやすくなるなど細かな変更はあれど、基本的にIIからの乗り換えでも違和感なく操作できるようになっています。機能面では、新たにフィルター効果を確認しながら撮影を進めることができるカラーフィルター機能を搭載。色彩豊かな美しい風景の中に機体をワンポイントで入れる場合などに使える良い機能です。
画質1

■撮影環境:ISO1600 F11 1/400sec 焦点距離約1200mm 羽田空港
心臓部となるセンサーには、有効画素数約3250万画素の新開発フルサイズCMOSセンサーを搭載。R6 Mark IIの有効画素数2420万画素から約35%画素数がアップしました。機体を美しい風景の中にワンポイントで撮った時には色の階調のさらなる豊かさを感じます。また、機体をアップで撮った場合などは、ディテール部分の解像感に高画素化の恩恵を感じることができました。さらに、ニューラルネットワークアップスケーリングツールのアプリを使用することにより、約1億3000万画素の画像にパワーアップさせることが可能。大きく印刷する際や、光学で機体に寄りきれなかった時、さらなる解像感を得たい時など、あると助かる機能といえます。
画質2

■撮影環境:ISO12800 F4.5 1/6sec 焦点距離約600mm 大阪国際空港
高感度性能におけるR6 Mark IIとの違いは、Mark IIでは常用ISOとして102400まで設定可能でしたが、Mark IIIでは64000までとなっている点。大幅に画素数がアップしたことで常用感度の上限が少し抑えられています。また、Mark IIで好評を得る高感度域の画質の良さについても、これだけの画素数アップがありながらしっかりと継承されていて、輝度ノイズやカラーノイズを上手に抑え込んでいる印象。ディテールについてもバランス良く残してくれます。さらに、アプリにてニューラルネットワークノイズ低減を使用すれば、高感度域で撮られた作品をさらに美しくブラッシュアップすることが可能。この技術により躊躇なく高感度域を使用できるようになりました。
ニューラルネットワークノイズ低減

■撮影機材:キヤノン EOS R6 Mark III + RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO512800 F3.5 1/125sec 焦点距離111mm 中部国際空港
▼ニューラルネットワークノイズ低減使用前

▼ニューラルネットワークノイズ低減使用

AF

■撮影環境:ISO100 F16 1/2000sec 焦点距離約400mm 羽田空港
オートフォーカス(以下AF)も着実に進化しています。R6 Mark IIよりもセンサーの画素数が増えているためAF枠の選択できるポジションが大幅に増加。より精密かつ柔軟にAF枠を設定できるようになりました。また、合焦速度や反応、トラッキング性能もしっかりとレベルアップしています。正面気味に向かってくる機体も粘り強く追従。機体がシルエットになるような場面でも、瞬時に機体にフォーカスを合わせてくれました。もちろん、近年のRFシステムに搭載される被写体認識「飛行機」も搭載。非搭載機に比べ、置きピンをする回数が劇的に減り、AF枠をフルフレームで運用する回数が大幅に増えるなど、ヒコーキの撮り方自体が変わるほどの機能です。低輝度合焦限界は最大EV-6.5。夜空に鈍く光る星でさえ合焦してくれるので、夜空に浮かぶヒコーキにもしっかり合焦してくれます。
手ブレ補正

■撮影環境:ISO1600 F2.8 1/8sec 焦点距離約190mm 羽田空港
手ぶれ補正は使用するレンズなどにもよりますが、最大で中央8.5段、周辺7.5段。Mark IIは最大で8段の補正なので、どちらも大きな効果を発揮してくれます。ヒコーキ撮影はフェンスなどの影響もあり、手持ち撮影の機会が少なくありません。また、望遠レンズを多用することからカメラやレンズの手ぶれ補正に頼るシーンの多い被写体と言えます。これだけの効果があれば、流し撮りや駐機している機体を超スローシャッターを用いて手持ち撮影する際などに、その効果の大きさを実感することができます。
ドライブ性能

■撮影環境:ISO12800 F4 1/1000sec 焦点距離約600mm 羽田空港近郊
ドライブ性能は電子シャッターで最高約40コマ/秒。メカシャッターや電子先幕では最高約12コマ/秒となります。この数値はR6 Mark IIから変わっていませんが、前述の通りMark IIIから記録メディアのひとつがCFエクスプレスに変更されました。そのため、Mark IIに比べバッファが詰まるまでの時間に余裕を感じます。ヒコーキ撮影においてはヴェイパーシーンの撮影や、エンジンリバース時に雨煙や雪煙を巻き上げているシーンの撮影でバッファに余裕があると助かります。いつヴェイパーや雨煙が盛大に盛り上がるかわからないので、長くシャッターを押すことがあるためです。電子シャッターは秒間40コマあるため、たとえば月のど真ん中に機影が通過するシーンなどで助かります。機影がピッタリど真ん中に止まる確率が高くなります。また、プリ連写も装備されているので、決定的な瞬間を逃しにくくなっています。シャッターを全押しする0.5秒前から記録をしてくれるこの機能は、前述のヴェイパーシーンや月に機影が刺さるシーンなどでも重宝しています。
まとめ

■撮影環境:ISO200 F6.3 1/1000sec 焦点距離400mm 羽田空港
キヤノン社のRFシステムの中核を成すR6シリーズの最新モデルであるMark IIIは、非常にバランスのとれたモデル。同じくバランスのとれたスペックで好評を得るR6 Mark IIの良いところをしっかりブラッシュアップさせ、細かい部分をより発表時期の時流に合わせてきたカメラです。上位モデルであるEOS R1の高速性、R5 Mark IIの高画素など、尖った部分はありませんが、すべてのスペックが高レベルにバランスよく配置されたカメラ。ヒコーキ撮影など動体撮影にも向きますが、風景やポートレートなどどんな被写体の撮影にも高レベルで対応してくれるカメラです。1台でヒコーキ撮影にある色々なジャンル…型式写真や風景的写真、夜景写真などを撮られる方、ヒコーキ撮影に限らずポートレートや風景など色々なジャンルの被写体を撮るという方にもオススメ。
動画性能もMark IIにはなかったRAW動画やオープンゲート記録が可能など、このクラスのカメラとは思えないほどの機能が搭載されているので、スチルだけでなく動画撮影を楽しまれる方にもオススメです。
■写真家:A☆50/Akira Igarashi
またとない一瞬を追い求め全国の空港を放浪する瞬撮系航空写真家。幼少の頃より山下清画伯に憧れる。雑誌、WEBなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどの公式カレンダーやオフィシャル撮影を数多く担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。

















