なぜこの写真を撮ったのか|コハラタケル × Kimura Hinami #01(後編)
はじめに
みなさん、こんにちは。
今回は、コハラタケルとKimura Hinamiが、東京・日暮里を一緒に歩きながらスナップ撮影をしてきました。撮影したあと、お互いの写真を見ながら、「なんでこの写真を撮ったの?」をテーマに話をしています。今回は後編です。
この写真のどこが好きなのか

■撮影環境:絞りF3.2 SS1/125秒 ISO800
■写真:Kimura Hinami
コハラ「この写真って花だけを撮る方法もあると思うんだけど、実際は手を添えて撮ってる。どういう使い分けをしてるの?」
Hinami「私が花と一緒に自分の手を写すのは、写真の中で被写体との距離感を近く感じてもらいたいからです。花だけでも綺麗だし可愛いんですけど、自分の手を添えることで、被写体との距離や空気感が伝わりやすい気がして。だから、よく手を入れて撮っています。」
コハラ「実際の距離感よりも空気感を大切にしている印象がある。日常の中にある景色として感じてもらいたいというか。前編に話してた敢えて自転車を入れているという話にも通じるけど、『自分がこの場所にいる』という感覚を写真に入れたいんだよね。」
Hinami「そうです。」
コハラ「空気感を近づけるために手を添えるっていう考え方は、自分の中にはなかったな。」

■撮影環境:絞りF4 SS1/250秒 ISO400
■写真:コハラタケル
Hinami「これはまさに #なんでもないただの道が好き っていう一枚ですね。」
コハラ「この場所で撮った理由はいくつかあるんだけど、まず色数が少なくてシンプルだったこと。それと、日本って自動販売機や道路標識がすごく多いじゃない?でも、この写真は引いて撮っているのに、ほとんど写っていない。」
Hinami「確かに。」
コハラ「道路の白線もほとんどないし、それがいいなと思った。hinamiちゃんの前編の路地裏の逆光の写真でも話したけど、こういう曲がり角の道って絵になりやすいよね。手前が広くて、奥にいくにつれて細くなっていく。続きが見えない感じも良い。」
Hinami「なるほど。」
コハラ「あと、このフェンスを覆うくらい緑があるのが好きだな。」
Hinami「もし空が真っ青だったら、この場所では撮らなかったですか?」
コハラ「いや、それでも撮っていたと思う。本当はハイライトを下げれば空の表情ももう少し出せるんだけど、今回はその必要はないと思った。」
Hinami「わざと飛ばしたんですね。」
コハラ「デジタルの場合、ハイライトを下げすぎると不自然に感じることもあるから。空よりも道や緑が見えれば良いという考えだった。」

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/125秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/125秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF3.2 SS1/125秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF5.6 SS1/1250秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF2.0 SS1/125秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami
コハラ「メダカってずっと泳いでるじゃない。シャッターを切るタイミングはどうやって決めるの?」
Hinami「特には意識していなかったです。本当は生き物のときは、もうちょっと絞って撮るんですけど、このときはそのままの設定(絞りF2.0 SS1/125秒 ISO160)で撮っていました。メダカがここに来た瞬間を狙うというより、自由に泳いでいる雰囲気を撮りたかったので。」
コハラ「絞るときはどれぐらい絞る?」
Hinami「例えばF4〜F5.6くらいです。少し絞ることで、多少動いてもピントが合いやすくなるから。」
コハラ「ちなみに普段はどのくらいの絞りで撮ることが多いの?」
Hinami「基本は開放です。主役をしっかり際立たせたいので。」
コハラ「なるほど。今でこそ開放で撮ることもあるけど、自分は昔、開放で撮るのがあまり好きじゃなくて。F8とかF11で撮ることが多かったな。」
Hinami「そうなんですね。」
コハラ「背景をボカさず、空間全体をフラットに見せたかったから、絞って撮ることが多かった。」

■撮影環境:絞りF3.5 SS1/200秒 ISO400
■写真:コハラタケル
コハラ「自分はメダカも撮ったけど、近くに落ちていた葉っぱを撮ってたんだよね。」
Hinami「私は気づかなかったです。なんでこっちを撮ろうと思ったんですか?」
コハラ「メダカのほうは難しいなと思ったのと、良すぎるなって感じた。」
Hinami「良すぎる?」
コハラ「うん。撮りたくなる感じだったから。観光地でも同じなんだけど、みんなが撮るものじゃなくて、その脇にあるものを撮ってしまう。だから、この写真も主役のそばに何かないかなって探していた。」
Hinami「カッコいいですね。」
コハラ「街を歩くときも同じで、メインストリートより一本入った路地裏のほうが気になる。」
Hinami「その気持ちは分かります。ありきたりじゃないものを撮りたいというか、少し個性を出したい気持ちがあります。」
コハラ「自分の場合は日の目を浴びない存在に目を向けてほしいという気持ちのほうが強いかな。」
Hinami「なるほど。」
コハラ「昔からそうなんだよね。例えば舞台でもステージに立つ俳優さんは素晴らしいんだけど、その舞台を支えている裏方の人たちにもスポットライトが当たってほしいって思う。写真でも、そういう存在に自然と目が向くんだと思う。」
Hinami「すごくコハラさんらしいですね。」

■撮影環境:絞りF4.5 SS1/250秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/60秒 ISO400
■写真:コハラタケル

■撮影環境:絞りF3.2 SS1/125秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF2.0 SS1/125秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/500秒 ISO160
■写真:Kimura Hinami
コハラ「この写真は、言語化するのが難しいって言っていたよね」
Hinami「すごく好きな写真なんですけど、うまく説明できなくて。」
コハラ「どんなところが好きなの?」
Hinami「まず光ですね。夕方の光の色も好きですし、サイドから当たる光も好きです。それと、この写真には生活感があるんですよね。」
コハラ「生活感。」
Hinami「ここに住んでいる人が、この植物をひとつひとつ掛けて育てている様子が自然と想像できるんです。そういう背景が感じられるところが好きです。」
コハラ「やっぱりHinamiちゃんの写真には『日常感』というテーマがあるんだと思う。この植物を掛けた人の暮らしが想像できるからこそ、自然とシャッターを切ったんだよね。」
Hinami「そうですね。見つけた瞬間に『あっ』と思って、すぐ撮りました。」
コハラ「撮るのは早かった?」
Hinami「早かったです。花や植物は寄って撮ることも多いんですけど、この写真は引いて撮ったほうが生活感が伝わると思って、引きで撮りました。」

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/50秒 ISO400
■写真 コハラタケル
Hinami「この写真は、どうして撮ろうと思ったんですか?」
コハラ「実は、自分も言葉にするのが難しい写真だね。」
Hinami「難しそう(笑)。」
コハラ「そもそも、この写真はなんで撮ろうと思ったかがない。」
Hinami「そうなんですか?」
コハラ「ほかの写真は理由がある。でもこれは違う。地面の落ち葉が一瞬目に入って、歩きながら流れるようにシャッターを切った。構図もほとんど考えてないし、立ち止まってもいない。その場の感覚だけで撮った写真。でも、そういう写真をあえて入れたいんだよね。」
Hinami「どういうことですか?」
コハラ「全部が『構図を考えました』『光を意識しました』という写真ばかりじゃなくて、何も考えずに撮った写真を混ぜることで、写真全体の見え方に幅が生まれると思ってる。」
Hinami「そんな考え方をしたことなかったです。」
コハラ「展示や写真集でも同じかな。あえて自分もよくわからないと思うような写真を入れる。そういう写真が入ることで、『考えて撮った写真』と『自分でも理解しきれていない写真』の両者がより引き立つことがある。」
おわりに
言葉にするのは難しいと感じていても、「どこが好きなのか」をあらためて質問されることで、自分でも気づいていなかった理由が少しずつ言葉になっていきます。そんな対話も、この企画の面白さのひとつだと感じています。
次回は三ノ輪を一緒に歩きながら撮影します。どんな写真が撮れるのか、ぜひ楽しみにしていてください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コハラタケル
1984年、長崎県生まれ。東京在住。建築業、フリーライターを経てフォトグラファーに転身。幼少期から手足の多汗症(掌蹠多汗症)に悩んできた経験を背景に「症状の認知を広げること」を動機のひとつとして制作を続けている。主な個展に2022年『未だ知らないで』(FUJIFILM WONDER PHOTO SHOP)2023年『撮縁』(ライカギャラリー東京・京都)2025年『Contrast』(イリスギャラリー)。
Kimura Hinami
1996年、神戸生まれ。大学時代にカメラと出会い、以来、写真の世界に魅了される。理学療法士として働く傍ら、日常の風景やポートレートを撮り続け、2025年8月よりフリーランスフォトグラファーとして独立。日々の中に潜む光や美しさを見つめ、現在は写真集出版や個展など、作品発表を中心に活動している。2025年10月、写真集「In Light, I Live」(ミツバチワークス)を発表、11月に個展「In Light, I Live」を開催。












