『世界に、なにを見よう』開催記念 特集記事|後編「花澄 氏に聞く、写真展への道のりと見どころ」

ShaSha編集部
『世界に、なにを見よう』開催記念 特集記事|後編「花澄 氏に聞く、写真展への道のりと見どころ」

はじめに

2024年2月23日(金)-2024年3月19日(火) の期間中、新宿 北村写真機店 6F イベントスペースにて写真展『世界に、なにを見よう』を開催いたします。開催を記念して主催者の花澄 氏にインタビューを行いました。

前編では花澄 氏のこれまでの活動にフォーカスを当て、写真家としての活動や前回の写真展開催までの経緯をお聞きしました。後編では本写真展の開催までの道のりや見どころをお聞きしましたので、ぜひご覧ください。

花澄写真展『世界に、なにを見よう』の詳細ページはこちらより

前回開催の写真展『Scent of a…』が終わって

写真展『Scent of a…』が終わり新型コロナウイルスもそれまでと比べて落ち着きを見せ始め、もともと好きだった風景や花を撮るために外に出ての撮影ができるようになった。

「外で撮影が難しかった2年間と解放されてから撮影した写真は共通点が無いかといったらそんなことはないと思っています」

景色や花のエッセンスを掬い取り、写実的でなく昔から好きな印象派の絵画ような1枚にしたいという思いがある。それは箱庭で撮っているセルフポートレートにも共通しているという。

Photo by Kazumi

そしてコロナ禍にセルフポートレートを撮りためていた頃は何が撮りたいかが分からなかったものの、撮り続けている中で「好きだ」と感じる芯が通っていた。

「ずっと撮り続けたからこそ”テーマ”のようなものが見えてきたんです。そのとき、以前の写真と今の写真を組み合わせることができると思いました」

ライカの銘玉、タンバールとの出会い

組写真での写真展の思いを強くさせたのはライカの銘玉の一つであるタンバール M f2.2/90mm(復刻版)との出会いだという。もともとオールドレンズが好きな花澄 氏だが、レンズの本を読むとタンバールが紹介されていることが多く気になっていた。

生産が終了したこともあり、なかなか見つからなかったが奇跡的に中古のタンバールと出会い「世界を変えられるかもしれないレンズを試す価値はある」と思い購入したそうだ。

- Leica THAMBAR M f2.2/90mm
1935年に製造されたタンバールを復刻したモデルとして2017年に発売。ライカで唯一のソフトフォーカスレンズで、ギリシャ語で「不鮮明な」を意味する「thambo」が名前の由来。ライカスクリューマウントのオリジナルになるが故 木村伊兵衛 氏が愛用してしたことでも知られる。

「タンバールは画角が狭くなる分、自分が見ているものの主題が切り取れます。テイストもライカのレンズで唯一無二の写りで私が好きな雰囲気にぴったり。使ってみると何でも撮れるレンズだと思い凄く仲良くなれました」

タンバールのソフトフォーカスな描写は花澄 氏の絵作りや世界観とも近しく、今回の写真展で展示されている作品でも多く使われている。

『世界に、なにを見よう』のイメージが浮かんだきっかけ

タンバールで瀬戸内や海を撮ると夢のように美しく感動したという。その後、紅葉の季節になり、山に行くと紅葉とタンバールの相性の良さに驚いた。そしてそのとき「世界は美しい」と改めて思った。

Photo by Kazumi
Photo by Kazumi

「紅葉を撮ったときの相性が良かったので、雪も絶対に素敵に撮れると確信を持っていました。山の雪は見たことがありましたが平原の雪は見たことがなく、寒いのが苦手なものの1週間北海道で撮影しました。」

北海道で撮影した写真の撮れ高は非常に良く、北海道から東京へ帰る飛行機に乗る直前に今回の写真展『世界に、なにを見よう』の開催を決意した。

写真展の見どころ

そして開催となった写真展『世界に、なにを見よう』の見どころを花澄 氏に伺った。

北海道で撮影した写真

Photo by Kazumi

本写真展のDMやイメージビジュアルにも採用されており幻想的な描写で撮影した瞬間に「さすがタンバール」と感じた1枚。

釧路湿原に抜ける道から少し外れた場所で撮影した写真。北海道の中でも太平洋側に位置する釧路湿原は比較的雪が少ないようだが撮影日前に多くの雪が降り、手を震わせながら撮影したそうだ。

セルフポートレート

Photo by Kazumi

タンバールで撮影したセルフポートレート。撮影のために新しく用意したランプの影が美しく、自身の背中をキャンバスにしてランプの影を写し撮った。

作品にマッチしたセミグロスペーパー

写真の色味や印象を決める大切なペーパーには、ピクトリコのセミグロスペーパーを使用している。セミグロスペーパーは明暗の階調が広く色乗りも良いため花澄 氏の作品とも非常にマッチ。反射も抑えられているのでスポット光が当たっても非常に見やすい用紙だ。

会場の空気を感じるウィンドチャイム

会場内にはBGMが流れていないが耳を澄ますと上品な風鈴の音がする。その正体は天井につけられたウィンドチャイムだ。会場内の風に合わせて音が鳴るためいつ行っても新鮮な気持ちで楽しめる。

右奥にあるオーガンジーにはサンキャッチャーで拡散された光が投影されており、天使の羽根を思い起こさせる光は夢の中のような優しい空間に仕上げられている。

音と光と風がただそこにふわりと存在しており、ゆっくりした時間が流れる。

最後に

今回の写真展も前回と同じく仕事の合間を縫って在廊しており作品について聞かれると、本記事では載せきれなかったそれぞれの作品に込められた想いや撮影時のヒストリーをたくさんお話しされていました。

花澄 氏より提供
花澄 氏より提供

随所に花澄 氏のこだわりが詰まった本写真展は2024年3月19日(火)までの開催で期間中は写真集『Scent of a…』やポストカードも販売しています。まだご覧になっていない方は期間中にぜひご来場ください。

花澄 写真展『世界に、なにを見よう』開催中

写真展の詳細ページはこちら

 

映画『ゴールド・ボーイ』
花澄 氏が出演している映画『ゴールド・ボーイ』が2024年3月8日(金)より全国公開されます。金子修介 監督の作品としては『信虎』『百合の雨音』に続き3度目で、今回は打越遥 役として出演。俳優として出演だけでなく写真家としてもバックステージを撮影されていますので、花澄 氏のInstagram(@textisan)もぜひご覧ください。

 

- 花澄氏 プロフィール

埼玉県熊谷市生まれ。
俳優・ナレーターとして、舞台・映画・ドラマ・CM・ラジオ等で幅広く活動。
同時にLeicaとの出逢いから写真家としてもデビュー。
オールドレンズをこよなく愛し、やわらかいタッチと視線で世界を見つめている。
コロナ禍を機にセルフポートレートにも取り組みライフワークとしている。本会場での展示は2度目となる。

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