フィルムカメラを始めよう!大切な思い出は日付が残るカメラで:デート機能編

鈴木啓太|urban
フィルムカメラを始めよう!大切な思い出は日付が残るカメラで:デート機能編

はじめに

 こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回は僕がライフワークとして撮り続けているフィルム写真から、デート(日付入力)機能付きフィルムカメラの魅力について発信していきたいと思います。

※掲載写真に一部日付表示が見えにくくなっているものや、日付が欠落しているものがあります。あらかじめご了承ください。

見たことありますか?日付入り写真

 デジタルカメラもスマホもなかった時代の写真の楽しみ方は、フィルムをカメラに入れて撮影、それを現像してプリントを見るというのが一般的な方法でした。お父さんが撮ってくれた写真をお母さんが少し大きなアルバムにしまって、一緒にメッセージを添えてくれる。20代くらいの方も、そんな手作りアルバムをご覧になられたことがあると思います。

 僕がフィルムで家族の写真を撮ろうと思ったきっかけは、まさにこのアルバムの存在でした。30年以上経っても色あせないプリントと、温かみのある色。当時、一家に一台あったであろう、普及機のフィルムカメラで父が撮ってくれた、なんてことのない写真なのですが、心から良い写真だなと思った記憶があります。写真を本格的に学び始めてからは、家族写真が僕の目指す写真のひとつとなりました。

スマホでも写真が撮れる今、なぜフィルムカメラを使うのか

■撮影機材:CANON EOS KISS 7 EF 40mm F2.8
■フィルム:FUJIFILM C200

 現在、高校生や若い女性の間で「写ルンです」や「フィルムカメラ」が人気です。何度かヒアリングの機会があり尋ねたところ、返ってきた回答は「思い出に残る」、「失敗した写真も良いと思える」と言う内容が多く、驚いた記憶があります。

 勿論、なかには「スマホと違ってエモい写真になる」や「結果が分からなくてドキドキする」と言った回答もありましたが、写真として見られるようになるまで時間が掛かるコンテンツに(頻度は多くないものの)、お金をかけるというのはそれだけの魅力がある「体験」なんだと、改めて考えさせられた瞬間です。

 その中で、アナログな魅力のひとつとして、デート機能付きカメラが人気だという発見もありました。友達と行った旅行や遊園地、そして学生生活のワンシーンなど、二度と戻らない日々を1枚1枚デート機能付きカメラで残すという行為は、「楽しかった思い出の瞬間を、記憶と共に記録に残す」という写真本来の行為に他ならないでしょう。写真とともに思い出として記憶に焼き付けることが、デジタル世代がフィルムカメラを使う理由なのかもしれません。

 僕もこの「記録と共に記憶に残す」ために、産まれてきた子ども、そして家族をライフワークとして撮り続けています。僕が仕事で不在の時は妻にカメラを渡し、毎日1枚撮ってもらう。そして現像から帰ってきた写真を見返して、この日はこんなことがあったんだねと振り返りをするのが、今では日課となっています。

デート機能があるおすすめのコンパクトフィルムカメラ

■撮影機材:CANON EOS KISS 7 EF 40mm F2.8
■フィルム:KODAK GOLD200

 デート機能付きフィルムカメラで毎日1枚ずつ撮影する方法は、学生だけでなく、お子さんがいらっしゃるご家庭や、おじいちゃんおばあちゃんと住んでいる方にもとてもおすすめしたい方法です。ここではすぐに始められる、デート機能付きのコンパクトフィルムカメラをご紹介します。

 実は、デート機能付きフィルムカメラは2019年以降を記録できないカメラも多く、2020年以降が印字できるカメラは数が限られています。今回は、そちらも紹介して行きます。

 

富士フイルムシリーズ

■撮影機材:FUJIFILM NATURA CLASSICA 28mm F2.8
■フィルム:FUJIFILM SUPERIA X-TRA400
■撮影機材:FUJIFILM NATURA CLASSICA 28mm F2.8
■フィルム:FUJIFILM SUPERIA X-TRA400
■撮影機材:FUJIFILM NATURA CLASSICA 28mm F2.8
■フィルム:Lomography Color Negative 800
■撮影機材:FUJIFILM KLASSE W 28mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX 400

 富士フイルムのコンパクトフィルムカメラシリーズは、2019年を超えても日付を印字できるものが多く存在します。その中でもNATURAシリーズ、特にNATURA CLASSICA、NATURA Sは筆者も使っているおすすめのカメラです。

 ハイエンド機としては最後期に出たKLASSEシリーズが至高ではありますが、より安価に日付入り写真を楽しみたいのであれば、SilviシリーズやZOOM DATEシリーズも選択肢に入ります。どちらも2030年代まで日付の印字が可能。フラッシュを炊かずに自然な写真が撮りたいという方は、やや高価ですがF2.8程度の明るいレンズを搭載している機種を選ぶのがよいでしょう。

 特にNATURA Sは24mm F1.9のレンズを搭載した非常に珍しい機種です。逆にフラッシュを使ってもOKという方は、より安価なF値が4~5.6あたりのカメラが購入しやすいと考えます。屋内は必ずフラッシュを使うという撮影ルールに従えば、写ルンですによくみられる、暗くて何も写っていない!という失敗をぐっと減らせるはずです。

 

RICOH/PENTAXシリーズ

■撮影機材:PENTAX ESPIOmini 32mm F3.5
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400
■撮影機材:RICOH GR10 28mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400
■撮影機材:RICOH GR1 28mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400
■撮影機材:RICOH GR10 28mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400

 RICOH/PENTAXといえば、デジタルでも絶大な人気を誇るGRシリーズやコンパクトフィルムカメラで一世を風靡したESPIOシリーズが有名です。初代GRは、類まれなるコンパクトさと描写力が両立されていた機種で、プロのサブ機から一般ユーザ層にも広がっていきました。

 そんなGRシリーズは2024年までデート機能が利用可能です。GRの姉妹機としてリリースされたR10(別名:ELLE)はレンズのスペックこそF3.5とGRには劣りますが、2099年まで日付の入力が可能とGRより安価な機種です。

 一方、ESPIOシリーズはそのほとんどがズームレンズ搭載機ではあるものの、デート期限も2030~2100年までと長期にわたり、フラッシュ併用が問題なければ今でも始めやすい機種がそろっています。単焦点レンズを搭載したESPIOminiは32mm F3.5のスペックを誇り、最短撮影距離も30cmと2~3万円で買えるなかでは非常におすすめの機種です。ESPIOシリーズは1万円以内と安く高性能機が揃い、これから始めてみたい人にとってイチオシであることは間違いありません。

 

Canonシリーズ

■撮影機材:CANON AUTOBOY TELE QD 40mm F2.8
■フィルム:KODAK GOLD200
■撮影機材:CANON EOS KISS 7 EF 40mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400
■撮影機材:CANON AUTOBOY S 38mm F3.6
■フィルム:FUJIFILM SUPERIA X-TRA400
■撮影機材:CANON EOS KISS 7 EF 40mm F2.8
■フィルム:KODAK GOLD200

 Canonのコンパクトフィルムカメラといえば、50種類ものバリエーションを誇るオートボーイシリーズが有名です。オートボーイシリーズに共通することはその写りの良さ。筆者のおすすめは40mmF2.8と70mmF4.9の2焦点レンズを持つオートボーイ TELE QD、ズーム搭載機には珍しい、ボケを楽しめるオートボーイSシリーズです。

 前者は単焦点ならではの描写性能と2焦点レンズにより、ポートレートに適したカメラです。後者は開放F値を積極的に使うようにプログラミングされた機種で、描写性能の高い非球面レンズを搭載、ズームレンズ機ながら素晴らしい描写とボケを楽しむことができるように作られた高級機となっています。

 また、同様の使い方としてEOS KISS 5や7にパンケーキレンズのEF40mmF2.8をつけて、疑似コンパクトフィルムカメラとして運用するのも最高の選択肢のひとつです。2029年程度まで印字が可能(KISSは2099年)で、どちらも1万円代で購入できるとあって、フィルムを始めてみたいという方にも猛プッシュできるシリーズです。

撮影した写真はスマホ転送とプリントで楽しもう

■撮影機材:CANON EOS KISS 7 EF 40mm F2.8
■フィルム:KODAK ColorPlus200

 これらのカメラで撮影したフィルムはカメラのキタムラをはじめとするDPE店に持ち込むことで、データCDのほか、現在ではスマホへのデータ転送も可能です。仕上がりも最短1時間とスピーディーで、現像を待つワクワク感も味わうことができるのはフィルムならでは。

 受け取ったデータはSNSへの投稿はもちろん、L~2Lサイズ当たりであればプリントも可能ですので、昔のようにプリントアルバムも作成することが可能です。プリント、そしてアルバムという物理メディアを通すことで、いつもと違った写真の楽しみ方ができるのもフィルムのメリットだと考えています。

まとめ

■撮影機材:RICOH GR10 28mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400

 日付入りカメラで日々を記録することをライフワークとするのであれば、いつでも持ち運べるコンパクトフィルムカメラが便利です。近年、フィルム・フィルムカメラは高騰が続いていますが、探せばまだまだ安価に始められる機種もそろっています。無限に撮れるスマホやデジカメとは異なり、1日1枚とデジタルとは異なるアプローチをすることで、まだまだ楽しめる余地は残っていると考えます。

 さあ、今こそ何気ない日常を撮り始めてはいかがでしょうか。撮り続けることで日常が素晴らしい作品群になる、そう考えています。より詳しくフィルムについて知りたい方は、僕が講師を務めるワークショップ「フィルムさんぽ」にも是非ご参加ください!では、また次の記事でお会いしましょう。

■撮影機材:RICOH GR10 28mm F2.8
■フィルム:KODAK ULTRAMAX400

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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