ネイチャースナップのすすめ|接写アクセサリーを使ってみよう

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|接写アクセサリーを使ってみよう

はじめに

最近のレンズは最短撮影距離の短いものも増えてきて、ちょっとしたクローズアップもできるようになっていますが、それでももうちょっとだけ近づいて撮影したいということもありますよね。

また、前回の記事でマクロレンズを紹介しましたが、本格的なマクロレンズが必要になるほど使用頻度が高くないけど、簡易的にクローズアップをしてみたいという人もいるでしょう。

今回は、そんな方の希望をかなえるアクセサリーを紹介していきたいと思います。気になるものがあれば、ぜひ活用してみてください。

日没が間近になり草の上にとまって休むモンキチョウ。クローズアップレンズをつけると撮影できる距離を適度に近くすることができるので、手前にある草などを避けて撮影できた。小さなものだが、持っていると便利なのが接写用アクセサリーだ。
■撮影機材:Nikon D850 + TAMRON SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD + ケンコー クローズアップレンズNo.3
■撮影環境:F2.8 1/160秒 +1.7EV補正 ISO400 WB太陽光

お手軽なクローズアップレンズ

一番手軽なアクセサリーは「クローズアップレンズ」です。最近は「マクロフィルター」とも呼ばれています。これはフィルターの形をした凸レンズで、レンズの前にねじ込んで取り付けるだけです。自分のレンズに合ったフィルター径のものを使います。撮影するレンズの前に虫眼鏡をつけているようなものだと思ってください。

クローズアップレンズには焦点距離があり、この焦点距離によってどのくらい近づけるか決まってきます。Kenkoやマルミ光機のものでは、クローズアップレンズの番号(No.2や+2など)で1000を割ると焦点距離となります。No.2の場合は1000÷2で500mmということになります。撮影するレンズのピントリングが無限遠の時に、500mmの距離にピントが合うということになります。さらにピントリングを最短撮影距離まで回せば、最短撮影距離よりも近いものにピントを合わせられます。ただ、クローズアップレンズをつけていると遠くにはピントが合わなくなりますから、注意してください。

クローズアップレンズはネジ式フィルターと同じ形状をしている。この写真は4枚のクローズアップレンズを重ねて持っている。利用するときには、使いたいレンズのフィルター径と同じものを選ぶことが必要。焦点距離はいろいろ発売されているので、使うレンズの最短撮影距離と同じかそれよりも短くなるものを使ってみるといいだろう。
クローズアップレンズの取り付けはレンズ先端にフィルター同様にねじ込んで固定する(左)。パッと見るとつけているのがわからないくらいで、扱いも楽だ。クローズアップレンズは単純な凸レンズで、レンズの前に虫眼鏡を取り付けているようなもの(右)。シンプルな構造なので高画質は求めにくいが、手軽に使える接写アクセサリーとして活用してほしい。価格も手頃で接写入門にぴったりだ。
クローズアップレンズをつけるとどんな感じに大きく撮れるようになるのか比較している。レンズは50mmで最短撮影距離の45cmに設定。ある程度被写体を大きく撮影したい場合は、そのレンズの最短撮影距離よりも短い焦点距離のものを使うと効果的なのがわかるだろう。ここではNo.2の焦点距離が500mm、No3の焦点距離が330mmとなるので、50mmのレンズにはこのあたりから使ってみるといい。

選び方として、近づいてより大きく撮影したい場合は、クローズアップレンズの番号が大きい物を選べばいいのです。いくつか種類がありますから、とりあえず1枚だけ持っているとしたら、No.3あたりが使いやすいと思います。
目安としては、取り付けるレンズの最短撮影距離と同じかそれよりも短い焦点距離のものを選ぶといいです。ズームレンズと組み合わせるとズーミングで被写体の大きさを調節できるので便利です。

ただ、画質に関しては高画質とはいえないところもありますので、逆にクローズアップレンズならではの写りを活かすようにした方がいいと思います。少しでもいい画質をということであれば、ちょっと高価になりますが、ACタイプという高画質のものをお勧めします。
小さくて持ち運びにも便利なので、よく使うレンズ用に1枚用意しておくといいですね。

オオハンゴンソウの上でのんびりしているツユムシ。85mmの単焦点レンズにクローズアップレンズをつけて、市販のマクロレンズに近い画角を利用して撮影。ほどよい大きさでツユムシを画面に入れながら、花の咲いている雰囲気も見せることができた。柔らかいボケもきれいだ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF85mm F1.8 USM + ケンコー クローズアップレンズNo.3
■撮影環境:F2.8 1/320秒 +1.7EV補正 ISO400 WB太陽光
望遠ズームとクローズアップレンズの組み合わせで、ヒメジオンの花を撮影。背景に入れた太陽のボケがちょうど画面いっぱいになるようズーミングで調整している。ズームレンズとの組み合わせだと、フレーミングしやすいので便利だ。
■撮影機材:Nikon D850 + TAMRON SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD + ケンコー クローズアップレンズNo.3
■撮影環境:F2.8 1/8000秒 +1.3EV補正 ISO64 WB太陽光
50mmのレンズにNo.10のクローズアップレンズをつけて小さなネジバナを撮影している。F1.4から絞りを一段ずつ絞っていくと、被写界深度だけでなく描写が変わっていくのもわかると思う。高倍率の撮影では描写が甘くソフトフィルターをつけたような雰囲気にもなるが、絞ることで解消される。どの描写がいいかは好みなので、うまく絞りを使い分けてみよう。
マクロレンズとは違った柔らかな描写が気に入ったので、F1.4の開放絞りで撮影したカットを採用した。大口径レンズならではの大きなボケと柔らかい描写は、この組み合わせならではのものと言える。もっとシャープさがほしい場合は少し絞り込もう。
■撮影機材:CANON EOS 7D Mark II + EF50mm F1.4 USM + ケンコー クローズアップレンズNo.10
■撮影環境:F1.4 1/3200秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光
クサフジの花をクローズアップ。望遠ズームの望遠側とクローズアップレンズの組み合わせでは、ソフトな写りになりやすい。クサフジの花の優しい雰囲気を表現するために、あえてソフトな描写になることを意図してクローズアップレンズを利用している。
■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS + ケンコー クローズアップNo.3
■撮影環境:F5.6 1/200秒 +1.3EV補正 ISO400 WB太陽光

利用範囲の広い接写リング

続いてのアクセサリーは「接写リング」です。「中間リング」や「エクステンションチューブ」とも呼ばれます。これは、撮影するレンズとカメラボディの間につけるものとなります。そのため、カメラマウントごとに用意する必要がありますが、マウントが同じならどのレンズとも組み合わせられます。

接写リングには厚みの違うものが用意され、12mm、20mm、36mmなどがセットになったものもあります。厚みのある方が近づいて撮影できるようになりますが、撮影するレンズの焦点距離によって適切な厚みがあります。広角レンズと組み合わせるとごく薄いものでかなり近づけるようになり、望遠レンズでは厚みのあるものが必要になります。ズームレンズにつけた場合、同じ厚みの接写リングでは広角側の方が近づいて撮れることになりますが、被写体に近づきすぎて扱いにくいこともありますので、利用しやすい範囲で使うようにしましょう。

接写リングもクローズアップレンズと同様に、つけている時には遠くにピントが合わなくなりますので気をつけてください。

3枚の接写リングがセットになったもの。ここでは12mm、20mm、36mmが1組になっている。マウントごとに用意されていて、マウントが同じなら利用することができる。光学系を持たない単純な筒なので、マウントにガタがないものを選ぶようにしたい。
接写リングはレンズとボディの間に装着する(左)。取り付けはちょっと面倒なところもあるが、きちんとロックがかかっていることを確認しよう。連動ピンがあるものでは制約があるものもあるが、接写リングを重ねて使うことも可能だ(右)。厚みが増せばより近づいて撮影できるようになる。
レンズを前に繰り出すほど近くにピントが合うようになるのだが、それぞれのレンズには繰り出せる物理的な限界があり、最短撮影距離が決まってくる。そこで、ただの筒の接写リングを間に挟むことでレンズを前に繰り出すという仕組みだ。中央の穴のところには何もない。
50mmに接写リングをつけてどのくらい大きく撮影できるか比較してみた。ピントリングは最短撮影距離の45cmにしている。厚みのある接写リングをつけるほど、近づいて大きく撮れるようになるのがわかる。もとのレンズの焦点距離によってどのくらい近づけるのかは違ってくるので、接写リングは複数持っているといい。
24-70mmの24mm側最短撮影距離で撮影(左)。そこで12mmの接写リングをつけると、一気に近づけるようになってかなり大きく撮影できるようになった(右)。ただ、レンズ先端から数cmとかなり花に近づかないとピントが合わないため、花がレンズの影になってしまっている。
24mmの広角側でかなり接近しているために、花の形がちょっとデフォルメされて面白い形になっている。背景に見える花もレンズの影が落ちるのは仕方ないので、露出を調節したり光の当たり方を考えて被写体を選ぶようにするといい。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF24-70mm F4L IS USM + エクステンションチューブEF12
■撮影環境:F4 1/400秒 +0.7EV補正 ISO800 WB太陽光
24-70mmの70mm側最短撮影距離で撮影(左)。12mmの接写リングをつけると、だいぶ花も大きく撮影できるようになり、本格的な接写という雰囲気だ(右)。適度な距離から撮影できるので、カメラポジションの自由度も高く扱いやすい。
70mmという焦点距離なので、花を自然な形に再現しながらクローズアップできている。画質的にはやや甘い描写となっているが、少し絞れば改善する。もう一回り大きく撮影したいというときに接写リングを持っていると便利だ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF24-70mm F4L IS USM + エクステンションチューブEF12
■撮影環境:F4 1/500秒 +1.7EV補正 ISO800 WB太陽光
背景の雰囲気が残るよう、クサレダマの花を24mm側でクローズアップした。ちょっと見上げるくらいの高さに咲いていたので、花がレンズの影になることもなく、すっきり撮影できた。背景の入れ方を考えてレンズの焦点距離を選ぶことでイメージした絵柄にすることができる。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF24-70mm F4L IS USM + エクステンションチューブEF12
■撮影環境:F5.6 1/400秒 +2.3EV補正 ISO800 WB太陽光
ヒャクニチソウの上で花粉を食べるハナアブ。小さな虫だが、標準レンズでも接写リングを組み合わせれば、ほどほどの大きさで撮影することができる。ピントの合う距離はかなり限られてくるので、その距離を把握しておくと撮影しやすい。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + EF50mm F1.4 USM + エクステンションチューブEF25
■撮影環境:F4.5 1/60秒 +1.7EV補正 ISO320 WB太陽光
キツネアザミにやってきて蜜を吸うキアゲハ。わりと近くで見られたのだが、この超望遠ズームでは最短撮影距離が2.2mと長く撮影しにくいので、接写リングを入れて近づけるようにした。これで比較的近くだけにピントが合うようになって、撮影もスムーズに行えた。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 + ケンコー デジタル接写リング36mm
■撮影環境:F7.1 1/160秒 +0.3EV補正 ISO800 WB太陽光
ちいさなゲンノショウコの花。APS-Cセンサーのボディにマクロレンズの等倍でもこの大きさにしか写らない(左)。そこで25mmの接写リングを組み合わせて、さらに大きく撮れるようにすると、画面いっぱいにフレーミングできた(右)。
マクロレンズを使っても被写体を思い通りに大きく撮れないこともある。このちいさなゲンノショウコもその一つで、画面いっぱいにフレーミングするために、接写リングを組み合わせて撮影した。ピント合わせなどはシビアになるので、丁寧に撮影しよう。
■撮影機材:CANON EOS 7D Mark II + TAMRON SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO + エクステンションチューブEF25
■撮影環境:F5.6 1/250秒 +1.3EV補正 ISO1250 WB太陽光
ちいさなウリハムシモドキがアカツメクサの上で食事をしていた。小さな虫でも愛嬌のある顔をしているので、表情がわかる程度にクローズアップ。マクロレンズでも等倍以上に撮りたいときはあるので、接写リングを一つ持っているといい。
■撮影機材:CANON EOS 7D Mark II + TAMRON SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO + エクステンションチューブEF25
■撮影環境:F4.5 1/320秒 +1.3EV補正 ISO1250 WB太陽光

テレコンバーターも使える

「テレコンバーター(リアコンバーター)」は接写目的のアクセサリーではありませんが、接写にも利用できます。本来レンズの焦点距離を1.4倍や2倍にするもので、最短撮影距離は変わりませんが、画角が狭くなるので結果的に被写体を大きく撮ることができます。

撮影距離が変化せず無限遠から最短撮影距離まで撮影できて便利ですが、注意することもあります。それは露出倍数です。
1.4倍のテレコンバーターで1絞り分、2倍のもので2絞り分の露出倍数がかかります。わかりやすくいうと、露出倍数の分、実絞り値が暗くなってしまうのです。
2倍のテレコンバーターでは2絞り分ですから、F5.6に設定していても、実際はF11相当の光量しかないことになります。そのため、AFが遅くなったりシャッター速度が遅くなってぶれやすくなったりするので、撮影は丁寧に行わないといけません。組み合わせによってはAFが働かないこともあります。

レンズによってはテレコンバーターがつけられないものあるので、そのあたりは確認してみてください。純正ではなく用品メーカーから出ている汎用品なら利用できることもあります。

テレコンバーターは光学的にマスターレンズの焦点距離を1.4倍や2倍にするアクセサリー。汎用品はわりとお手軽な価格で手に入る。純正の場合はけっこう高価になる反面、画質もしっかりしている。このあたりは目的によって選ぼう。
テレコンバーターはレンズとボディの間に取り付けるので、各マウントに合ったものが必要だ(左)。純正の高画質タイプのテレコンバーターでは、光学系が出っ張っているものもあり、使えるレンズにも制限があるので注意が必要だ(右)。
ヒメジオンを50mmの最短撮影距離で撮影(左)。これだとかなり花が小さくて物足りない感じがする。2倍のテレコンバーターをつけると、最短撮影距離はそのままに焦点距離が100mmとなるので、一回り大きく撮影できるようになった(右)。
ホザキシモツケの花に蜜を吸いにきたフタスジチョウ。200mmではちょっと小さく写るので、2倍のテレコンバーターを組み合わせて撮影。純正のテレコンバーターは画質も良く実用性も高い。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF70-200mm F2.8L IS USM II + EXTENDER EF2×II
■撮影環境:F8 1/200秒 +0.7EV補正 ISO800 WB太陽光
ナナホシテントウの姿を見つけたので、画面いっぱいに撮ってみようとマクロレンズにテレコンバーターを組み合わせた。露出倍数のせいかAFではピント合わせができなかったので、MFに切り替えて撮影した。使いこなすためには、MFでのピント合わせが必要なことも出てくる。
■撮影機材:CANON EOS 7D Mark II + TAMRON SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO + ケンコー テレプラスMC7
■撮影環境:F2.8 1/320秒 +1.3EV補正 ISO2000 WB太陽光
キツネアザミに集まるミドリヒョウモン。もともと最短撮影距離が短い魚眼レンズにテレコンバーターを組み合わせると、ちょっと被写体をデフォルメすると同時に周りの様子を取り込んだクローズアップが可能となる。周りにもたくさんのチョウがやってきている様子がわかるだろう。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE + ケンコー テレプラスMC7
■撮影環境:F5.6 1/80秒 +0.7EV補正 ISO1000 WB太陽光

まとめ

今回紹介したアクセサリーはかさ張るものではないので、どれか一つカメラバッグに入れておくと重宝します。
あくまで簡易的なアクセサリーですからマクロレンズほどの画質では撮影できませんが、たまにちょっと大きく撮ってみたいことがあるという時には役立ちます。

マクロレンズが欲しいけどまだ予算がないという方も、いい被写体との出会いを逃してしまうのはもったいないので、簡易的にでも撮影してみるといいと思います。これらのアクセサリーを使ってきちんと撮影できるように練習しておけば、マクロレンズを使ったときにもしっかり撮影できるでしょう。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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