桜の撮り方|北村佑介

北村佑介

02_安行桜の作例.JPG

はじめに

 こんにちは!北村です。3月になり暖かい日が徐々に増え、至る所で春を感じられるようになりました。花を撮る方は特に待ち焦がれていた季節だと思います。この時期になるとソメイヨシノの開花まであっという間です。早咲きの桜はもう見頃や満開を迎えたところも多いのではないでしょうか。というわけで、今回は桜の撮り方を記事にさせていただきます。普通にシャッターを切っても絵になる桜ですが、少し工夫するだけで色々な撮り方ができる花です。なるべく色々な桜を色々な撮り方で紹介するので、何か一つでも参考にしてもらえたなら嬉しいです。

河津桜

01_河津桜の作例.JPG
■撮影機材:ソニー α7II + キヤノン EF 135mm F2L USM
■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO100・1/400秒

 綺麗に開いた河津桜。春の訪れをいち早く伝えてくれる、代表的な早咲きの桜です。こちらを向いている数輪の花があったので、その数輪が主役になるように撮りました。普段は一本や一輪の花を主役にして撮ることが多いですが、どれか一輪が主役というよりはそのエリア内の花全てが主役と感じた時は、それらが主役と伝わるようにピント位置や構図を調整します。一輪を主役とするのか。エリアを主役とするのか。少し意識するだけで写真の仕上がりがぐっと良くなります。今まで特に意識していなかった方は、是非意識してみてください。

 また、この写真の大きなポイントはやはり前ボケです。主役の花たちよりも手前に咲いている花にレンズを可能な限り近づけ、前ボケを作りました。この前ボケが柔らかさを生み出し、枝や主役以外の花を隠してくれる重要な役割を担ってくれます。

安行桜

02_安行桜の作例.JPG
■撮影機材:ソニー α7II + タムロン SP 180mm F/3.5 Di MACRO 1:1 B01E
■撮影環境:絞り優先・180mm・F4.0・ISO100・1/250秒

 安行桜という早咲きの桜です。形や色が非常に可愛らしく、お気に入りの桜です。雨が上がった直後、薄らと水たまりが張っていたのでリフレクションさせて撮ってみました。地面はグレーのコンクリートです。地面の色や種類でリフレクション具合が結構違うので、リフレクションさせて撮る時は色々な地面で試してみてください。個人的には、グレーのコンクリートやアスファルトはリフレクションさせやすく、ホワイトバランスの変更でイメージを作りやすいのでおすすめです。

 深さがある水たまりでないとリフレクション写真が撮れないと思っている方も結構いますが、わずかな水たまりでも充分これくらいのリフレクション写真が撮れるので、水たまりと落ちている花を見つけた時は是非撮ってみてください。

03_安行桜のリフレクションを使った作例.JPG
■撮影機材:ソニー α7II + タムロン SP 180mm F/3.5 Di MACRO 1:1 B01E
■撮影環境:絞り優先・180mm・F4.0・ISO100・1/320秒

 こちらも安行桜をリフレクションさせて撮った一枚です。先程とほぼ同時刻、同じロケーションで撮りました。ホワイトバランスやレタッチ、そして別のイメージで撮ることにより、全く異なる一枚となりました。グレーのコンクリートはホワイトバランスの変更やレタッチで色を変化させやすいので、比較的簡単に自分の持つイメージを反映できます。

 この写真は撮っただけで、鏡で反射させたように綺麗にリフレクションしてくれました。綺麗にリフレクションさせるために大事な要素はいくつかありますが、大切なのはアングルと高さで、特に高さが大事だと考えています。シチュエーションは合っているのに上手くいかない方は、是非高さの変更をメインに色々と試してみてください。

陽光桜

04_陽光桜の作例.JPG
■撮影機材:キヤノン EOS 6D + EF 135mm F2L USM
■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO100・1/750秒

 近所の公園に陽光桜という桜が咲いていました。一本しか咲いていなかったのですが、満開のその桜はとても綺麗で印象的だったのをよく覚えています。その中でも特にボリュームがあるエリアを切り取りました。正直なところ、桜自体の色や形が可愛すぎて普通に寄って撮っただけでイメージ通りになったのであまり解説することがありません(笑)。ただ少し無理矢理ポイントを言うとすれば、ボリュームがあるエリアの中でどの花が主役かをわかるようにするには寄る必要があったため、このレンズの撮影最短距離で撮りました。このような時、マクロレンズやもっと寄れるレンズの場合はもう一歩あゆみ寄っても良いかもしれません。写真左側はなるべく遠い背景を選び、後ろボケが綺麗になるようにしました。

ソメイヨシノ

05_ソメンヨシノの作例1.JPG
■撮影機材:キヤノン EOS 6D + EF 135mm F2L USM
■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO100・1/500秒

 ここからは桜代表のソメイヨシノで解説していきます。やっぱり桜はソメイヨシノですね。満開のソメイヨシノ。ぴょこんとボール状に飛び出しているエリアがあったので、それを主役にして撮りました。ホワイトバランスを少し暖色系に寄せ、温かみのある色合いで仕上げました。桜はピンクのイメージがありますが、ソメイヨシノはかなり白寄りのピンクの時が多いです。なので、ホワイトバランスのちょっとした変更で寒色系のイメージにも暖色系のイメージにもできます。適正なホワイトバランスで撮るのが基本かもしれませんが、イメージをどちらかに寄せて撮るのも良いと思います。ただ、白に近い花なので、ホワイトバランス変更の影響をとても受けやすいので変える時は少しずつ慎重に行いましょう。

06_ソメンヨシノの作例2.JPG
■撮影機材:ソニー α7III + キヤノン EF 135mm F2L USM
■撮影環境:絞り優先・135mm・F2.0・ISO100・1/1000秒

 満開のソメイヨシノの中で、夕陽に照らされた一輪を見つけました。4月上旬、17:30過ぎのとても光が綺麗なゴールデンタイムに逆光で撮った一枚です。開き切っていない花なので、このように後ろから撮っても形の良さが伝わります。花びらが透けている部分や重なっている部分、シベのシルエットの美しさなどが逆光で撮ったことにより際立っています。

 ただ、このようなシチュエーションの時は白飛びに注意です。色の薄い花を逆光で撮ると、とても白飛びしやすいので露出にはいつも以上に気を付けましょう。筆者は基本的には、主役の花の最も明るい部分の色や脈が残っているかどうかで露出を決めます。また、この写真も前ボケで主役以外を隠していますが、桜は前ボケを作るのが簡単な花ではありません。主役の花と前ボケのバランスを両立させるのが難しい時は、前ボケを先に作ってみると上手くいくこともあります。是非お試しを!

07_ソメンヨシノの作例3.JPG
■撮影機材:キヤノン EOS 6D + シグマ 50mm F1.4 EX DG HSM キヤノン用
■撮影環境:絞り優先・50mm・F2.8・ISO400・1/125秒

 地元の公園にて。いつもなら桜の時期は賑やかな公園ですが、この時は大雨が降っていたので無人でした。筆者はあまり根性がある方ではないので、雨の日の撮影は好きではありません。ですが、桜を無人で撮りたいときは大雨大歓迎です。桜を広めに、且つ桜だけを撮りたい時は雨の日にチャレンジすることをおすすめします。勿論雨対策はお忘れずに。いつもは白っぽいピンクのソメイヨシノも、雨に濡れるとはっきりとしたピンクで写ることも多いです。それも雨の日がおすすめである大きな理由です。

08_ソメンヨシノの作例4.JPG
■撮影機材:キヤノン EOS 6D + EF35mm F2 IS USM
■撮影環境:絞り優先・35mm・F11・ISO100・4秒

 山奥に佇むソメイヨシノ。湖面に映る桜も綺麗に写したかった為、三脚を使いシャッタースピード4秒で撮りました。長めのシャッタースピードで撮ることにより、湖面に反射した桜もしっかりと写ってくれました。露出は少し暗めにし、桜のピンクが際立つよう心がけています。

さいごに

 今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!また次回を楽しみにしていただけると嬉しいです!

■写真家:北村佑介
出版社勤務・埼玉県観光PRフォトグラファーを経て、ドリーミーフォトと呼ばれる花を撮るフォトグラファーとして独立。年間150回の写真教室や、書籍・雑誌・企業・メーカーへの写真提供、イベントでのトークショーをメインに全国で活動中。著書に「花をながめて大切なことに気づく100の言葉」(かんき出版)などがある。

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