ホテルなどの“お宿”では最近、『空間』に凝ったつくりのものが増えてきています。
――ホテルや旅館など“お宿”の写真集も出版されていますが、セレクトはどのように行っているのですか?


 まず初めにリサーチをして、撮影をして絵になりそうだと思ったら出かけます。私の場合は撮影だけで終わることはありません。必ず実際に泊まってさまざまなサービスを体験します。ですから何日かかけての撮影となります。たまに思っていたのと違うこともありますが、写真集に掲載しているところは、すべてお勧めの場所です。
 また、最近のお宿はホスピタリティだけでなく、空間に凝った施設が増えてきました。以前にはあまり無かったことです。空間で大切なのは“光”だと思います。これまで日本の照明は、蛍光灯がほとんどでしたが、最近は間接照明をうまく取り入れているので、写真に撮ってもきれいに写ります。食事も贅を凝らしたものが増えています。このような場所で人々は現代社会生活のストレスを癒しているのではないでしょうか。


【ヴィーナス達】フィレンツェで見たヴィーナス誕生の絵を思い出した。サイドからのやわらかい自然光が少女達の美しさをより引き立てている。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM シャッタースピード:1/15秒 絞り:f4 ISO400 撮影地:モナコ

 

【恋人達】まっ青なブルーの海をバックに、男女をかたどった彫刻をフレーミング。海の色が大切なので、露出はマニュアルで合わせた。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA シャッタースピード:1/500秒 絞り:f11 ISO200 撮影地:イタリア チンクエ・テッレ

 


女性の撮った写真は素直でキラキラ輝いています。
“かわいい”と思った瞬間にシャッターを切っています。
――先生はテレビ番組でも女優の方と一緒に撮影をされるなど、女性が撮影するシーンを間近でご覧なっています。男性との違いなど何かお感じになることはございますか?

【遠くを見つめて】柱の上にネコが飛び乗った。近づいて下から見上げると、ちょっと高貴な感じに見えた。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:70-200mm F2.8G シャッタースピード:1/350秒 絞り:f8 ISO400 撮影地:イタリア チンクエ・テッレ


【漁村の広場】クレーンで引き揚げられた船が並んでいる。色とりどりに塗られた船はどう撮っても絵になる。小さく人を配して生活感を足した。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA シャッタースピード:1/200秒 絞り:f9 ISO400 撮影地:イタリア チンクエ・テッレ


 コンテストの審査をしていても女性の入賞者はかなり増えてきています。特にここ数年は上位に入る方が多くいらっしゃいます。女性の撮った写真は素直でキラキラ輝いていますが、以前のフィルムカメラだと、それなりのテクニックが無いとなかなか上手く表現できませんでした。
 しかし、今はデジタルになり作者の気持ちをダイレクトに作品として表現できる時代です。カメラを持った時点でいい作品を撮ることが可能になるのです。
 先日も私のふるさと徳島で小学生にカメラを持たせて撮影を体験させるイベントがありました。「自分たちの住んでいる街で残したいものを撮る」ということがテーマでした。1枚目からとは言いませんが、10枚も撮ればちゃんとした写真が撮れていました。彼らは普段から携帯などで写真を撮ることに慣れています。10年前に比べると人々の写真に対する距離感は縮まりました。すでに生活の一部として、ゲームをする感覚で楽しんでいます。
 子どもでさえそのような状況ですので、女性でもデジタルコンパクトカメラやデジタル一眼レフカメラを使って、自分で撮りたい写真を形にすることができます。

――男性との一番大きな違いは何でしょうか?

 私は普段から自分が撮りたい写真をイメージしておくことが大事だと言ってきましたが、女性の場合は自分が撮りたい被写体に出会ったときに、素直な気持ちで写真を撮ります。ストレートに純粋な気持ちで撮ります。『かわいい』ということが年齢を問わずキーワードになっているようです。カメラを肘に掛けて持つなど、ハンドバッグのようにファッションの一部として扱っている人もいます。
 また、一眼レフカメラであっても、撮り方は携帯電話のカメラやコンパクトタイプのようにモニターを見ながら撮っています。小さなファインダーを覗いて撮るよりも、両目でモニターを見ながら撮る方がイメージしやすいんだと思います。それに比べると男性の場合は、アングルや構図などいろいろと撮影する前に考える傾向にあるようです。
 実は私も両目でモニターを見ながら撮る感覚は、ハッセルや4×5で撮る感覚に近いものがあると思っています。両目で仕上がりを想定しながら被写体に向き合い、一枚の写真を創り込んでいく。一眼レフの片目で撮った写真と、ハッセルを両目で見ながら撮ったのでは表現に違いが出ます。




【マジックアワー】日没後40分ほどすると、美しいブルーの時間がやってくる。真っ暗になる前のほんのひととき。きれいに写真が撮れる魔法のような時間。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM シャッタースピード:1/1.3秒 
絞り:f5 ISO200 撮影地:モナコ

 
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