モナコは以前訪れたことがありました。
今回はそこから地中海沿いにイタリアの世界遺産の街を訪ねました。
――今回はイタリアで撮影された作品を中心に掲載させていただきますが、イタリアの「楽園」の魅力を教えてください。


 ヨーロッパの国では、南フランス地方は学生のときに行ったことがあります。また以前訪れたモナコなどの高級リゾート地も、私のテーマである「楽園」につながっていると思います。イタリアの地中海沿いに広がる地方はきれいな景色なので、以前から訪ねてみようと思っていました。
 私には『楽園』以外に、『世界遺産』というテーマもあります。日本の世界遺産や中国世界遺産を撮影した写真集もあります。今回イタリアの世界遺産にもなっている海辺の街“チンクエ・テッレ”を訪ねました。海に面した街というのは、どこか楽園というイメージにつながっています。そこではまるでお伽話に出てくるようなカラフルな建物がとても面白かったです。
 チンクエ・テッレでは風景だけでなく、村の人々も撮りました。デジタル一眼レフカメラを片手に、仕事ではなく、自由に何を撮ってもいいような感じで気軽に写真を撮ることができました。
 空が青く、海も青が深い。イタリアの地中海沿いの地域はリゾート地としての古くからの歴史があります。しかし今回訪れた街は世界遺産ですので、リゾート地というよりは、むしろ秘境に近い感じでした。ここは断崖の急斜面にある街のため、船でしか行けないところもあります。


【楽園の館】パリのエッフェル塔を設計した建築家が造ったアールヌーボーの美しい空間。自然光がさんさんとふりそそぎ、南地中海らしい開放的な雰囲気。楽園と呼ぶにふさわしい。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:DT 11-18mm F4.5-5.6 シャッタースピード:1秒 絞り:f11 ISO200 撮影地:モナコ エルミタージュホテル

海外撮影に行く前に、現地が舞台になっている映画などを観て、
撮りたい写真をイメージしておくことが大事。
――アマチュアを対象にした海外撮影ツアーも数多くあります。海外撮影での注意点があれば教えてください。

【バラ色の都】太陽が傾くのを待って塔に登りました。ワイドレンズを使うことによって、足元の赤い屋根から地平線までを1枚におさめました。
■カメラ:ソニーα700 レンズ:DT 11-18mm F4.5-5.6 シャッタースピード:1/60秒 絞り:f11 ISO200 撮影地:イタリア フィレンツェ

 


 行く前に、あらかじめ撮りたい写真のイメージをつくっておくことが大事だと思います。撮影ツアーの行き先が舞台になっている映画を観ておくのもひとつの方法です。昔の映画でもかまいません。自分が撮りたい写真をイメージしておくことで、いい写真が撮れるはずです。
 映画の舞台になっているところは写真も撮りやすいところです。実際にそこに自分が立ってみると、まるで自分が主人公になったような気分になります。そこで写真を撮って人に見せるということも、写真の楽しみのひとつです。今回私もイタリアへ行く前に、ヴィスコンティ監督による1963年のイタリア・フランス合作の「山猫」という映画を観ました。そして実際に映画の舞台になったレストランにも行き食事をしました。
 また、ヨーロッパに世界一周航海の旅をした時は、寄港する2日前くらいから、寄港地が舞台になったビデオや映画を船の中で観ることができました。そうすることで、港に着いた時には撮りたい写真のイメージができあがっていました。
 さらに、現地に行ったときに美術館などを観て回るのもいいことだと思います。その地域で育まれてきた、文化や本物に触れることは、自分の感性が刺激され、写真を撮る上でも役に立つと思います。それによって本や画集では味わうことができない、色や力強さや雰囲気を感じることができます。
 今回も行く前に資料を見たりはしていましたが、現地について驚いたのは、日本と光の感じや気候が全然違っていたことです。太陽の光は強いのですが、地中海性気候で清々しいところでした。

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