広角端が28mmから25mmに拡大!高倍率ズームレンズの代名詞が進化「タムロン 25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」
はじめに
今回紹介するレンズは、2025年11月20日に発売になったタムロンの「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2 (Model A075)」ソニーEマウント用です。人気の高い高倍率ズーム「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)」の後継機種として登場。ユーザーからの要望の多かったワイド側の焦点距離を28mmから25mmに拡大したモデルになります。
そんな新しいモデルを発売前にタムロンさんよりお借りすることができたので、この新しいレンズのスペックと魅力・写りをご紹介します。
タムロン「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」の基本スペック

「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」ソニーEマウント用は、高倍率ズームレンズの代名詞である人気のフルサイズ用レンズ「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」の後継モデルになります。広角側の開放F値F2.8を維持しながら焦点距離が28mmから25mmに拡大され、より使い勝手が向上しています。
レンズの重量は「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」と同じに抑えており、レンズ大きさは若干のアップしていますが全長で4.5mm・最大径で2.2mmアップに抑えているので、並べて比較してみてほとんど同じくらいに見えるレベルになっています。
レンズを望遠側にした状態では、「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」のレンズの伸びが従来の「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」よりも少し長くなっています。

右:「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)」

左:「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2 (Model A075)」
右:「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)」
「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」と「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」とのスペックの違いを一覧にしてみました。
| 25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2 (Model A075) | 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071) | |
| 焦点距離 | 25-200mm | 28-200mm |
| レンズ構成 | 14群18枚 | 14群18枚 |
| 開放絞り | 2.8-5.6 | 2.8-5.6 |
| 最小絞り | 16-32 | 16-32 |
| フィルター径 | 67mm | 67mm |
| 絞り羽根枚数 | 9枚 | 7枚 |
| 最短撮影距離 | 0.16m (WIDE) 0.8m (TELE) |
0.19m (WIDE) 0.8m (TELE) |
| 手ブレ補正 | 無 | 無 |
| 全長×最大径 | 121.5×76.2mm | 117×74mm |
| 重量 | 575g | 575g |
| 発売 | 2025年11月 | 2020年6月 |
「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」で、筆者が一番の気になるポイントである焦点距離による開放F値の変化を実際に撮影して確かめてみました。ズームリングの微妙な操作により焦点距離が1-2mm程度のズレが発生している場合もあるので、参考程度として頂けると助かります。
| 25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2 (Model A075) | 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071) | |
| F2.8 | 25mm- | 28mm- |
| F3.2 | 27mm- | 31mm- |
| F3.5 | 34mm- | 43mm- |
| F4 | 41mm- | 54mm- |
| F4.5 | 54mm- | 78mm- |
| F5 | 73mm- | 113mm- |
| F5.6 | 97mm-200mm | 146mm-200mm |
「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」は、レンズの筺体サイズを「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」とほぼ同程度に抑えている影響でしょうか、焦点距離が望遠側に移動する際のF値の変動が早く始まります。「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」から「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」に切り替えを考えているユーザーはこの点が気になるポイントになるかもしれません。
フィルター径はタムロンの多くのレンズと同じ67mm。タムロンの多くのレンズがフィルター径67mmに統一されているので、複数のレンズを同時に持ち歩いても携帯性が高いことに加え、PLフィルターをはじめとした各種フィルターも共用できるほか、レンズ交換時に径の異なるキャップを探す手間が省けるなど、ラインナップ全体で高い利便性を発揮します。
とは言えこのレンズ「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」の性格を考えると、これ1本でほとんどの撮影をこなせるので、レンズ交換の頻度は少ないと思います。



左:「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2 (Model A075)」
右:「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)」
「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」を「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」と比べてみると、機能をカスタマイズできる「フォーカスセットボタン」とレンズをカスタマイズする為のコネクターポート(端子形状:USB Type-C)が搭載されています。
「フォーカスセットボタン」にユーザーの使いやすい機能を割り当てる事ができるようになっています。普段から「フォーカスセットボタン」に機能を割り当てしているユーザーにとって、このボタン追加は大きなポイントではないでしょうか。


タムロンのレンズをより快適に使いこなすためのポイントとして、「TAMRON Lens Utility」というソフトがあります。
パソコンまたはスマートフォンを使用して、コネクターポート(端子形状: USB Type-C)を搭載したタムロンレンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行える専用ソフトウェアです。レンズを使いやすいように設定することで、撮影がもっと楽しく、もっとクリエイティブになります。
「TAMRON Lens Utility」で設定できる各種機能は、カメラボディ機能割り当て、AF/MF切り替え・フォーカスリミッター・フォーカスプリセット・A-B フォーカス・フォーカス/絞り リング機能切り替え・フォーカスストッパー・アストロFC-Lなど様々な機能設定が可能です。



タムロン「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」の実力

タムロン「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」の実力が気になるところですが、早速使用してみた所感をお伝えしたいと思います。
気になるポイントとしては広角側の焦点距離28mmから25mmの拡大部分です。「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」を使っていた時は、広角側が28mmスタートでも高倍率ズームの便利さが勝っていたのでそれほど苦にはしていませんでしたが、実際に「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」を使ってみると、焦点距離25mmスタートの便利さに改めて気づかされる事になります。焦点距離25mmと28mmでは数字以上に見え方に変化があり、比べてみると一目瞭然です。


「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」は絞り羽根の枚数も増え9枚になっています。背景のボケも非常に好感の持てるボケをしています。また、BBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)コーティングの採用により、逆光などにも強い耐性があることを感じます。

■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF5.6 ISO800
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF16 ISO640
焦点距離26mm
最短撮影距離は望遠側では、「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」と変わりませんが、ワイド側では0.19mから0.16mと向上しており、最大撮影倍率1:1.9のハーフマクロまで楽しめるレンズになっています。急にアップで撮影したいシーンに出くわしても対応できるのは便利です。

■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF6.3 ISO400
焦点距離25mm
シーン別のオートフォーカスの動作性を確認してみました。被写体認識のオートフォーカスを試してみましたが、瞳AFや被写体認識もスムーズに反応しオートフォーカス性能は非常に良好な結果でした。

■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF5.6 ISO800
焦点距離153mm ※リアルタイム認識AF(動物)

■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF5.6 ISO800
ソニーαでサードパーティーのレンズを使用する際に気を付けたい点が1点あります。αのカメラのレンズ補正の項目で「歪曲収差補正」デフォルト値が「切」になっている点です。
昨今の小型軽量のレンズは「電子補正」前提で設計されているものが多くなっています。レンズによっては強制的に「歪曲収差補正」がオートで変更できなくなっているものもあったりしますが、タムロンのレンズは強制的な変更仕様にはなっていません。ですので、αの設定画面で「歪曲収差補正」をオートに変更しておいた方が歪みの少ない画像を記録する事ができます。

下の写真は、「タムロン 25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」の焦点距離25mm側で撮影したデータで、左側が「歪曲収差補正オート」・右側が「歪曲収差補正切」の状態を並べたものになります。樽型の歪みが発生しているのがよく分かります。
「タムロン 25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」はワイド側の焦点距離で「樽型」、望遠側では「糸巻型」の歪曲収差補正が発生しますが、カメラ側のレンズ補正で「歪曲収差」をうまく補正しています。

「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」は、広角側の焦点距離が25mmに広がったこと、最短撮影距離(広角側)が短くなったこと、ホールドボタンが搭載されたことにより使い勝手が向上し、より便利な高倍率ズームレンズに進化を感じます。
タムロン「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」でお散歩スナップ撮影

■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF5.6 ISO800
焦点距離178mm
「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」を持って、秋の公園でお散歩スナップ撮影を楽しんでみました。この便利な高倍率ズームレンズ一本で手軽に様々な撮影ができるので、大きなカメラバッグを持たず、レンズ交換をすることなく手軽にバリエーション豊かな撮影を楽しむ事ができます。

■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF3.2 ISO800
焦点距離25mm

■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF5.6 ISO800
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF5.6 ISO800
焦点距離178mm

■撮影環境:シャッター速度1/8000 絞りF2.8 ISO400
焦点距離25mm

■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF5.6 ISO400
焦点距離200mm
焦点距離25mmのワイド側で寄った撮影や、望遠側200mmを使って前後の大きなボケを活かした撮影など、このレンズ一本だけで様々な表現が可能なレンズです。一日このレンズを肩からぶら下げて歩き撮影していましたが自重でレンズが伸びることはなく、ロックスイッチを使用することなく撮影をすることができました。
タムロン「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」で動物園撮影

■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF5.6 ISO800
焦点距離144mm
次に動物園で動物たちの撮影をしてみました。動物園では望遠側の出番が圧倒的に多くなります。ここで気になるのはオートフォーカスの速度や精度です。タムロン「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」は、高速・高精度なリニアモーターフォーカス機構VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)により、AF速度や追従性も「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」より向上しています。

■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF5.6 ISO800
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF5.6 ISO800
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/6400 絞りF5.6 ISO800
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/50 絞りF5.6 ISO3200
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りF5.6 ISO6400
焦点距離200mm

■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF5.6 ISO6400
焦点距離200mm
ガラス越しや暗い室内での撮影など難しいシーンでも、被写体認識のおかげで満足がいくレベルで撮影できましたが、フェンス越しでの撮影時、フェンスにピントを持っていかれることが多くあり少し苦戦しました。
撮影後に気づいたのですが、フェンス越しで撮影する際がある場合は、フォーカスボタンに「フォーカスリミッター」の設定をしておけば、もう少しフェンス越しでの撮影も楽にできたかもしれません。

まとめ
ワイド側焦点距離が25mmとなり、より使い勝手が向上した「25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2」は、焦点距離のワイド化だけでなく最短撮影距離が短くなったり、オートフォーカスのモーターの進化、カスタムが可能なホールドボタンの搭載など様々な進化ポイントがありますが、レンズの大きさが従来の「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」とほぼ同等のサイズに収まっているのもうれしいポイントです。気軽にこのレンズ一本で様々なシーンに対応できるメリットは大きく、持っておきたいレンズの一本です。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師













