ヒコーキ撮影で使いやすい究極の1本!OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROを使い倒す
はじめに
M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROレンズをヒコーキ撮影の現場で使い倒してみました。35mm判フルサイズ換算で100mm-400mm。望遠レンズを多用する旅客機撮影において非常に使いやすい焦点距離を持つレンズです。焦点距離を引き気味にして風景に機体をワンポイントで入れる撮影や、テレ端で機体の一部を切り取り迫力を出したりと、オールマイティに使えるレンズ。1本で様々な空港の色々な撮影ポイントに対応してくれます。開放F値は2.8通し。夜間など低露出下においても非常に使いやすいレンズになっています。とくに35mm判フルサイズ換算でテレ端の400mmを開放F値2.8で使える…いわゆるヨンニッパズームとして使えるところが、表現の幅を大きく拡大。新しい表現や作品に挑戦したくなる1本とも言えます。
外観と操作性

このレンズは長さ225.8mm、最大径91.4mm、重さ1075g。今回はOM-1 Mark IIとの組み合わせで撮影をおこないましたが、ボディとレンズを合わせても約1.7kgに収まります。以前、筆者が他社のフルサイズ一眼と単焦点のヨンニッパの組み合わせで使用していた時は重量4kg近く。マイクロフォーサーズやズームといった違いはあれど、まずはその軽さについて驚きました。ヒコーキ撮影はフェンス沿いなどでおこなうことが多く、手持ち撮影が少なくありません。そのため、軽さや取り回しの良さが正義となるシーンが少なくなく、スローシャッターを用いる手持ちでの流し撮りの際は歩留まりの良さをおおいに感じることができました。軽量で携行性に優れるため、撮影ポイントを1日中、歩き回っても疲労が少なく済みます。コンパクトにまとまるシステムは、航空機に乗る際に機内持ち込み手荷物としやすく助かります。ズームリングはスムースで固すぎず緩すぎずちょうど良く、インナーズームのため重心の変化が少なく、ズーム操作をおこないつつ機体を追いかけるという動作もしやすくなっています。操作性も快適で、とっさのボタン操作も素早く的確におこなうことができます。
画質1

■撮影環境:ISO200 F6.3 1/1000sec 焦点距離200mm 成田空港
PROグレードのレンズらしく、スーパーEDレンズなど高品質レンズ13群21枚で構成されるこのレンズ。中央部分から周辺域まで非常にシャープな写りをしてくれます。ヒコーキ撮影、とくに型式写真や寄り系の作品においては機体のディテールがどれだけ詳細に描かれているか重視されます。そのため、この作品のように機体に描かれた小さな文字や、窓枠の線ひとつひとつを精密に表現してくれるレンズはヒコーキ撮影にもってこいのレンズと言えます。また、これにはマイクロフォーサーズセンサーの特性もひと役かっていて、フルサイズセンサーに比べて被写界深度が深めになることもメリット。機体の前から後ろまでカリカリに解像される画は、一度味わうとクセになります。
画質2

■撮影環境:ISO100 F16 1/2500sec 焦点距離160mm 羽田空港
逆光撮影時においても、意図しないフレアやゴーストに悩まされることがなく使いやすいのがこのレンズの特徴。地平線から離れ威力の増した太陽とともに撮影をしてみましたが、ゴーストも出ずクリアなシルエット作品を得ることができました。色彩の出方も素直。再現性の高い色彩をセンサーへと送り込んでくれます。
手ブレ補正

■撮影環境:ISO100 F13 0.3sec 焦点距離400mm 羽田空港
非常に感銘を受けたのがOM-1 Mark IIとのシンクロ手ブレ補正。もともとOM社の5軸手ブレ補正には定評があり期待もしていましたが、期待以上の効きと言っても過言ではありません。とくに、駐機している機体を手持ち撮影している時に効果を体感可能。ある程度の枚数シャッターを切れるのなら、3~5秒など地面などに固定しない手持ち撮影としては超のつくようなスローシャッターを切っても、しっかり機体の止まっているカットが何枚かありました。この作品は2倍のエクステンダーを装着し、35mm判換算で800mmの画角で機体を引き寄せて撮影。手持ち撮影で0.3秒というシャッタースピードを用い10枚程度連写しましたが、ほぼすべて手ブレの無いシャープな画を描き出してくれました。エクステンダー装着時も合焦速度の遅れや画質の低下は体感することがなく、快適に撮影可能。気軽に超々望遠の世界を楽しむことができました。
オートフォーカス(AF)

■撮影環境:ISO200 F6.3 1/2000sec 焦点距離170mm 羽田空港
オートフォーカス(以下AF)の反応も非常に素早く優秀。ヒコーキ撮影では高速で動く機体に対して瞬時にフォーカスを合わせて欲しい場面が少なくありません。この作品においてはカメラ本体をこの風景に固定し、高速で離陸する機体が画面右側から飛び込んでくるシチュエーション。AFの設定をフルフレーム+C-AFにしつつ被写体検出を飛行機にしていましたが、画面に機体が飛び込んできた瞬間、機体を瞬時に検出し、素早くフォーカスを合わせてくれました。
まとめ

■撮影環境:ISO1250 F8 1/160sec 焦点距離400mm 大阪国際空港
今回の組み合わせであるOM-1 Mark IIとOM 50-200mm F2.8はどちらもIP53という信頼性の高い防塵防滴性能を保持。IPの後の「5」が防塵等級、「3」が防水等級を指します。防塵等級が「有害な影響が発生するほどの粉じんが内部に入らない」。防水等級が「垂直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない」となっています。
35mm判フルサイズ換算で100~400mmという焦点距離で、なおかつ開放F値が2.8通しというレンズがこれほど気軽に持ち運べ、振り回せることに感動。強力な手ブレ補正があるため、三脚を持ち歩けない時でも手持ち撮影の代替案がすぐに思いつくレンズです。光学性能だけでも非常に高いレベルの作品を得ることができるレンズですが、技術革新の著しい近年のデジタル技術と組み合わせることにより、さらに進んだ表現について創造することが可能。今まで誰も撮ったことがないヒコーキ写真の世界を撮れるという、大きな可能性を感じるレンズです。
■写真家:A☆50/Akira Igarashi
またとない一瞬を追い求め全国の空港を放浪する瞬撮系航空写真家。幼少の頃より山下清画伯に憧れる。雑誌、WEBなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどの公式カレンダーやオフィシャル撮影を数多く担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。















