秋のガーデンに咲く花々|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~
はじめに
秋の庭が彩りに満ちる季節になりました。この季節の主役といえば風に揺れる可憐なコスモスです。濃淡のあるピンクや白の花びらが混ざり合い、光に透けるといっそう美しく感じます。また、秋になると再び見頃を迎える、いわゆる秋バラも華麗な気品を漂わせます。今回は撮影テクニックを交えながら、秋のガーデンで見られる花々をご紹介します。自然の中に咲く花とは違って、人の手によって植えられ、手入れをされているので豊かな背景作りができます。多種類の花々を入れて彩り豊かな背景を選んだり、花のイメージに合わせて壁やブランコなどの被写体もガーデンの雰囲気を感じさせる脇役として添えるのもいいでしょう。落ち着きのある佇まいを見せる秋の庭を眺めながら様々な視点で花を撮影してみましょう。
コスモス

■撮影環境:絞り優先・90mm・F3.5・ISO800・1/1000秒・+1EV補正
濃淡の違うピンク系とオレンジ系のコスモスが植えられた花畑。同じ暖色系でも両方が混ざり合うとより色が増して華やかですね。ピントは手前に合わせるのが普通ですが、ここでは奥の花に合わせて手前の花々をぼかしました。望遠系のレンズを使い、絞りを開け、そして奥側にピントを合わせるとこのように大きな前ボケを作ることができます。ボケがあることで柔らかな雰囲気が出るのは背景ボケと同じですが、手前がボケることで奥行きを感じさせることができます。ボケ量が少ないとかえって主役を邪魔する煩雑なものになってしまうので、輪郭がはっきりしないくらいふんわりとぼかしたいですね。

■撮影環境:絞り優先・90mm・F3.5・ISO800・1/640秒・+1.7EV補正
前の作品と同じ場所ですが、こちらは一輪をクローズアップしました。ピントは花芯に合わせていますが拡大するとこのレンズのシャープ感がはっきりとわかりますね。被写界深度が浅いので手ブレに注意するのはもちろん、コスモスは茎が細くて揺れやすいので被写体ブレによるピントのズレにも注意しましょう。背景のボケ量は絞りや焦点距離などでコントロールすることができますが、ここでは背景にさまざまな色の花が咲いている雰囲気を感じる程度の中程度のボケにしています。より焦点距離が長いレンズを使えばさらに大きくぼかすことができますが、ボケ過ぎてしまっても平坦になって複雑に色が混ざった感じが出ないので、程よいボケ具合に調整しましょう。
オミナエシ

■撮影環境:絞り優先56mm・F2.8・ISO200・1/400秒・+0.3EV補正
アートフィルター「ファンタジックフォーカス」
秋の七草のひとつであるオミナエシ。茎の上部で枝分かれし、先端部に房状の小花を付けます。派手さはないものの昔から日本人に親しまれてきた花と思うと趣深いですね。そんなオミナエシを主役にしつつ背景には白いブランコを入れました。最近のガーデンでは花畑とともに自撮りができる撮影スポットとして、このようなオブジェを置いてあるところを見かけます。撮り方としてはオブジェにピントを合わせて前後の花をぼかすのもいいですが、今回は花が主役ということで花にピントを合わせてブランコとわかる程度にぼかしました。ちょうど地面にはブランコの影が落ちていたのでそれを含めてフレーミングしています。
ダリア

■撮影環境:絞り優先200mm・F4・ISO250・1/200秒・+1.7EV補正
アートフィルター「ファンタジックフォーカス」
ダリアは秋に咲く大輪の花です。奥の黄色から外側へのピンクとグラデーションが美しかったので画面いっぱいにクローズアップしました。背景を入れないくらい大きく写すことで、花全体ではなく花びらの色や形状に注目してもらうことができます。この日は曇っていたので光がやわらかく、花びらの影ができなかったのも雰囲気に合っていましたね。さらにOMシステムのカメラに搭載されているアートフィルターの「ファンタジックフォーカス」を選び、画像にソフト効果をかけています。露出もプラス側へ大きく補正をかけているので総合的にハイキーな雰囲気に仕上がっています。
ミゾソバ

■撮影環境:絞り優先150mm・F2.8・ISO200・1/1600秒・−2EV補正
ガーデンの花というと華やかな園芸品種をイメージしますが、野生味溢れる山野草ガーデンも人気があります。本来は野に山に水辺にと花が好む生育場所を巡らないと出会えない花が一カ所で見られるのは嬉しいですね。控えめな印象の花が多いですが、そんな花をいかにして作品に仕上げるかを考えるのはなかなかおもしろいものです。花が小さいのでそのぶん背景の面積が増える。しかし、豊かな彩りは期待できない。そんな時は、周囲にあるものを利用してどのような背景が作れるかを工夫しましょう。こちらはお庭を流れる水辺に咲いたミゾソバ。背景は小川で、水面の反射を背景に利用して画面にきらめきを感じさせました。
センニチコウ

■撮影環境:絞り優先・120mm・F2.8・ISO200・1/1000秒・−1EV補正・多重露出
よく見ると花や葉っぱに丸ボケが重なっていますが、背景ボケであれば主役の後ろにボケがくるので重なることはありませんよね。また全体的に赤い色がかかっているのもお分かりでしょう。これは多重露出の機能を使って、センニチコウの花と赤く色づいたコキアに付着した水滴をぼかしたものを重ねています。違う画像を重ねる多重露出はどう使うかが悩ましいですが、このようにシャープな画像とボケた画像を組み合わせれば、一見すると単発カットのように見えるので自然に仕上げられます。ぼかすほうの画像はMFを使ってピントを外せばOKです。多重露出の機能が搭載されたカメラをお持ちの方はぜひ挑戦してみてください。
バラ

■撮影環境:絞り優先・30mm・F11・ISO200・1/40秒・−0.3EV補正
壁が青く塗られていておしゃれですし、ちょっと剥げているところがまたいい風合いですね。バラのオレンジ色との対比もできるので花が目立ちます。そこにバラの葉の影が落ちていたのでバラと壁と影をすべて入れて写しました。普通の花写真であれば背景をぼかして撮ることが多いですが、ここでは影をはっきりと見せたかったので絞りをF11に絞り込んで、全体的にシャープに写しました。人工物を入れて撮ることはあまりないのですが、花が咲く場所のイメージに合うようでしたらむしろ積極的に取り入れてみましょう。この場合も木製だったので雰囲気が出ましたが、鉄製の柵やコンクリートの塀では合わなかったでしょうね。

■撮影環境:絞り優先・12mm・F8・ISO200・1/640秒・+0.3 EV補正
低いポジションから花を見上げるように撮りました。人が立っている時の視界とは違って、まるで昆虫の目線で見ているようで新鮮に感じますね。標準ズームの広角端12mmで撮影したので画角は広く、遠近感もつきやすくなります。すると花が空へと向かって伸びているような印象になりますね。太陽はほぼ真上にあるので花を見上げれば自然と逆光になります。茎や葉はシルエット気味になりますが、薄い花びらは光を透過させて綺麗に色が出てきています。U時型の花の並びも良かったですし、全体的に花が旬を迎えている時期なのでみずみずしさも感じます。
まとめ
しっとりとした秋の庭は春とも夏とも、また違った味わいを見せてくれます。コスモスやバラ、ダリアなどの定番の花はもちろん、秋を彩るさまざまな花々を主役に、ガーデンならではのオブジェなども取り入れて全体の空気感を表現してみましょう。もちろんオブジェを主役にしつつ、花を彩りの要素として脇役的に取り入れるのもいいですね。「秋の花」ではなく「秋のガーデン」とテーマを変えるだけで新たな視点が得られますし、どのような画面構成にするのかを考える中で、作品の幅も広がります。主役の花のイメージと脇役、背景との相性もあるのでいろいろとトライしてみてください。心地よい秋の空の下、素敵なガーデンへ足を運んでみてはいかがでしょうか。
■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。












