コスモスをもっと印象的に -魅力を引き出す撮り方のコツ-
はじめに
いよいよカラフルなコスモスが咲く季節になりました。この記事をご覧いただいているということは、きっとコスモスがお好きなのではないでしょうか。もしそうでなくても、読み終えた後に「今年はコスモス撮影にチャレンジしてみたい」と思っていただけたら嬉しいです。
私にとって、1年の中で最もシャッターを切る回数が多いのが秋です。その大半がコスモスを撮っているのですが、惹かれる理由がいくつかあります。たとえば、同じ花を毎年撮っていても新しい発見があること。種類によって、花弁の形状や色あいが異なり、表情が豊かです。そして、撮影するロケーションが変われば、新鮮な気持ちで花と向き合うことができます。(お気に入りの場所には、シーズン中つい何度も足を運んでしまうこともありますが)
さらに、秋は屋外撮影にぴったりの季節です。過ごしやすい気候に加え、晴れた日は空気が澄み、青空がいっそう鮮やかに感じられ、花の色が際立ちます。カメラを持って出かけるのに最適な季節、ぜひ外に目を向けてみてください。
天候/時間帯で変わるコスモスの表情
天候
コスモスに限らず、写真の雰囲気は天候によって大きく変わります。近い色合いのコスモスを、異なる天候で比較してみます。まずは晴れた日の写真から。

■撮影環境:1/6400秒 f/2 ISO100
晴れの日は、色のコントラストを最大限に活かしてみましょう。澄んだ青空を背景に、奥の山が写り込みすぎて背景の邪魔にならないよう、ローアングルで撮影しています。黄色いコスモスと青空の組み合わせは、写真が爽やかな雰囲気になります。晴天時は光が強く硬い印象になってしまうので、少し逆光気味にすることで花びらを透かすと、柔らかな写真になります。

■撮影環境:1/800秒 f/2.8 ISO100
次は曇りの日の写真です。晴天時のようなキラキラとした雰囲気はなくなりますが、曇りの日には「しっとりと落ち着いた空気感」と「花本来の色を忠実に再現できる」という大きな魅力があります。
曇っているから撮影はやめようかな…と思ってしまうかもしれませんが、曇りの日だからこそ撮れる写真もあるのです。背景に木々を入れれば、玉ボケを作ることもできるので、そこにキラキラ感を表現することも可能です。
捉え方次第で、晴れの日以外でも撮影は楽しむことができます。ただし露出がアンダーになりすぎると、どんよりとした印象が強調されてしまうので気をつけてください。
時間帯

■撮影環境:1/1250秒 f/2.8 ISO100 焦点距離180mm
コスモス撮影でおすすめの時間帯は「朝」です。この写真は午前7時頃に撮影しました。寒暖差が大きくなる秋の朝は少し湿度もあり、コスモスに朝露が付いていることも。条件が揃えば、光を受けて花びらが艶やかに輝く様子を撮ることができます。日の出直後は光がオレンジ寄りですが、太陽が昇った後の朝の光の色は白っぽくなり、透明感のある柔らかな印象を与えてくれます。

■撮影環境:1/3200秒 f/1.8 ISO100
朝の光に包まれたコスモス畑。柔らかな逆光により、花びらが透き通るように輝いていました。前ボケを多く入れることで包み込まれる印象を強くし、幻想的な雰囲気を意識しています。
昼間は真上から光があたり、花の色をしっかりと描写したいときに適しています。夕方は光が斜めから差し込むため、陰影を活かしたドラマチックなシーンが得意です。時間帯によって刻一刻と表現できる雰囲気が変わるので、夢中で撮影していると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
撮影テクニック
続いては、知っておくと切り取りやすくなる撮影のコツについてです。
光を味方に付ける
▼「順光」でコスモスの色を鮮やかに。

■撮影環境:1/6400秒 f/2.5 ISO160
順光は、被写体の正面に光が当たることで、色をはっきりと写すことができます。影が少なく、花の形などもわかりやすいので、立体感よりも色を表現したいときにおすすめです。空を入れるような、風景としてのコスモス写真となり、情景が伝わりやすくなります。
▼「逆光」でドラマチックに。

■撮影環境:1/1600秒 f/2.8 ISO125 焦点距離135mm
被写体の輪郭が光り、立体感が生まれます。コスモスのように花びらが薄い花は光を透かすことで、透明感や繊細な質感が際立つようになります。ドラマチックな表現を求めるなら逆光で、かつ柔らかな雰囲気を加えるなら、露出を少し明るめに調整してみてください。
構図
▼「三分割構図」でバランス良く。

■撮影環境:1/800秒 f/2.8 ISO100
蜂が蜜を吸っている様子に、自然と目線を誘導するために三分割構図を意識しました。花と蜂を主役にしたかったのですが、花畑が広がっていることも伝えたいと思い、背景を大きくぼかしつつ余白を多めにしました。奥行きと広がりが感じられるのも、三分割構図の効果になります。
▼「C字構図」で印象的な切り取りを。

■撮影環境:1/2000秒 f/4 ISO100
「C」のような曲線を取り入れる撮り方を、C字構図と呼びます。被写体を画面内に全て収めるのではなく、あえて一部分を切り取ることで花を大きく、印象的に見せることができます。
この写真もその構図を意識し、マイクロレンズで接写することで、動きと迫力のある切り取りを表現しました。接写撮影は肉眼では気づきにくい細部まで緻密に描写できるので、「シベの部分はこんな形だったんだ…!」といった新しい発見にもつながります。
▼主役を包むような「額縁構図」

■撮影環境:1/1600秒 f/1.8 ISO100
分かりやすい額縁構図は、窓枠や木の枝で、文字通り額縁のように主役をフレーミングする方法が一般的です。しかし、コスモスのように密度高く咲いている花畑では、しゃがんでローアングルから花の隙間を探し、主役になる花にピントを合わせることで、手前の花をぼかし「自然の額縁」を作ることができます。
こうした自然の額縁を使うと、写真に奥行きと柔らかさが生まれ、主役の印象を引き立てることができます。中望遠の単焦点レンズを使い、絞りを開放気味に設定することで、ふんわりとしたボケ感と立体感を意識した表現が可能です。
フィルターを使う

■撮影環境:1/1600秒 f/2.8 ISO100 焦点距離180mm
光のあるシーンで活躍するのがディフュージョンフィルターです。ソフトフィルターとも呼ばれていて、光を拡散させ、写真の雰囲気を柔らかく、幻想的にする効果があります。
私はよくNiSiの「Allure Soft (アルーアソフト)」を使っているのですが、このフィルターを愛用する理由は、カメラやレンズ本来の色再現やピント面のシャープさは残しつつも、程よく柔らかな印象に変えてくれる点です。色が抑えられ白っぽくなりすぎることもなく、自然に主役を引き立たせてくれます。逆に言うと、順光などではあまり効果を感じられないこともあるので、逆光時に使用するとより違いが分かります。
一輪だけ背伸びしているコスモスを見つけたので、前ボケで周囲を大きくぼかし、フィルターを使って朝の幻想的な雰囲気を強めました。
表現のバリエーションを増やす
寄り引き
被写体との距離感を変えることで、同じシチュエーションやロケーションでも様々な切り取り方ができます。

■撮影環境:1/3200秒 f/1.8 ISO100
思い切って花に寄って撮影することで、花びらの質感や透け感を表現しました。ぐっと近づくことで、臨場感もプラスできるように思います。絞り値だけでなく、被写体や背景との距離感などでもボケ具合は変わってきます。カメラを被写体に近づけ、遠い背景を大きくぼかすことで一輪の花が際立ち、奥行きのある構図となります。
ただ寄るだけではなく、光の向きや前ボケを意識して、透明感と優しさを表現してみました。イメージ通りに撮れたとき、コスモス撮影がとても楽しく感じられますよ。

■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 ISO160
今度は被写体から引いて撮影してみました。どうでしょうか、同じピンクのコスモス写真でも、印象が変わりませんか?何を撮るにしても、私は「距離感」を大切にしています。
空に向かって咲くコスモスを、ローアングルと広角で切り取った1枚です。澄んだ秋空の空気感を伝えたかったので、空と花のバランスを半々に。リズム感や動きを出すために、対角線構図を意識しました。つい、一輪の花を主役にして寄って撮りたくなりますが、広角でスケール感を出すことで、コスモス畑の広がりや空気感を表現できるのでおすすめです。
モノクロで撮るコスモス

■撮影環境:1/1250秒 f/2 ISO100
最後に、カラフルなコスモスをあえてモノクロで撮る表現をご紹介します。モノクロは色彩という情報量が減ります。色に頼らず、光と影のコントラストに目を向けることで、普段とは違ったコスモス写真となります。
この写真の状況を説明すると、背景の林は影で、手前のコスモスに光が当たっている状態でした。その明暗差を活かして、花が浮き上がるように見せました。モノクロにすることで静寂さを感じられるのも魅力です。
ちなみにこの写真はNikon Zfのピクチャーコントロール「モノクローム」を使用しています。黒が締まり、明暗差がある時は被写体を引き締められるので愛用しています。
まとめ
今回の記事では、撮影におけるコスモスとの向き合い方を、私なりの視点で解説してみました。どんな花でも、特徴や個性を見つけてその花らしさを表現することを大切にしています。
コスモスは比較的私たちの身近に咲いていることも多いので、この記事が少しでも参考になれば、ぜひご自身でも撮影にチャレンジしてみてください。そして、季節を写真で切り取る楽しさを体感してください。秋の撮影は寒暖差が大きいので、どうぞ体調にも気をつけてお出かけくださいね。

■撮影環境:1/1000秒 f/2.8 ISO100 焦点距離180mm

■撮影環境:1/6400秒 f/2.2 ISO160

■撮影環境:1/250秒 f/2.8 ISO100 焦点距離130mm
■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022年/2023年/2024年/2025年)















