ライカM10モノクロームとライカ ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.で歩く横浜元町

大門美奈
ライカM10モノクロームとライカ ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.で歩く横浜元町

ライカM10モノクロームとの蜜月レンズ

塩鮭には炊きたての白いご飯が欠かせないように、機材にも「この組み合わせでないと」というものがある。それがこのライカM10モノクロームとライカ ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.である。ライカM11モノクロームが発売してすでにしばらく経つが、ライカM10モノクロームには十分満足しているため、まだまだこのコンビで撮り続けたいと(現時点では)思っている。なにより、4000万画素という必要十分かつ扱いやすいデータ容量であることも、わたしがライカM10モノクロームを愛用する大きな理由である。

歩いたのは横浜。撮り歩きの定番コースというのは写真を撮る人間であればいくつかあると思うが、わたしの場合はJR 石川町駅の元町口を出て山手方面の坂道をのぼり、洋館をいくつか巡ったのちに港の見える丘公園から元町商店街へ下って、そこからさらに山下公園を通り日本大通りから関内駅、余力があればそのまま横浜駅方面へ向かって歩くのもありというもの。これはそのままわたしの学生時代のおさぼりコースでもあった。

いいスナップは歩数に比例するものと思っているので、ひとりならいくらでも歩き回るところだが同行者がいるとなるとさすがに上記はハードかも、ということで今回はライトに山下公園付近を中心に巡ることにした。

夕刻の元町周辺をぶらり

■撮影機材:ライカM10モノクローム + ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
■撮影環境:絞りF2 1/750秒 ISO160 WB:オート

元町・中華街駅を出発したのは16時。8月も下旬だというのに夕刻になってもまだまだ蒸し暑さの残る時間帯である。港の見える丘公園の中腹あたり、フランス山地区と呼ばれる場所にはフランス領事館遺構が遺されており、元町へ来ると必ず立ち寄る場所のひとつである。この日も光の美しいシーンを狙って一枚。ライカ ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH. を使用する際は絞り開放寄りであることが多い。F5.6くらいまではいわゆる「ノクティルックスらしい」描写は残るものだが、やはりこのレンズ独特の胃もたれしそうなほどのどろっとした描写を味わいたい。それにはできるだけ絞りは開放近くでないと、という気持ちが無意識のうちにあるのだろう。

■撮影機材:ライカM10モノクローム + ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
■撮影環境:絞りF2 1/3000秒 ISO160 WB:オート

17時も近くなるとようやく西陽が強くなり始める時間帯に。これもまた無意識だが、昔から写真を撮る人を撮るのが好きだ。もう少し掘り下げれば、どう自分を見せたいかという「写る人」の表情を楽しんでいるだけかもしれない。意地悪なのは重々承知しているが、人をよく観察することからスナップの楽しみは始まるものである。

ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.は絞り開放付近で味わう

■撮影機材:ライカM10モノクローム + ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
■撮影環境:絞りF1.2 1/250秒 ISO160 WB:オート

山下公園近くには昔から度々寄らせてもらう店がある。昼はお手頃な洋食メニューを、昼過ぎには軽食やお茶、夜はバーになる使い勝手の良い店。この日立ち寄ったのはもちろんビール休憩のため、と断言したいところだが、気に入っている理由がもうひとつある。とにかく店内に差し込む光が美しいのだ。こんな光こそ絞り開放でやわらかな陰影を楽しみたい。

■撮影機材:ライカM10モノクローム + ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
■撮影環境:絞りF1.7 1/90秒 ISO160 WB:オート
■撮影機材:ライカM10モノクローム + ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
■撮影環境:絞りF1.7 1/125秒 ISO160 WB:オート

ビールを一杯流し込んで店を出ると日が翳り始めたようなので、絞りを半段開ける。基本的にM型ライカでスナップする際は、狙いを定めたら手元で距離を測ってファインダーを覗く時間はほんのわずか。カメラを構える前に構図は決めているので、ファインダーを覗いているわずかな時間にはピントリングを微調整するのみ。それでピントが合っていなければ仕方がない。諦めるか、ピントを外しているのもまた味だ、と開き直るかの二択である。

■撮影機材:ライカM10モノクローム + ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
■撮影環境:絞りF1.2 1/180秒 ISO160 WB:オート

ちょうどこの日は飛鳥IIが停泊していたようだ。客船を背景にカップルの横顔を。この前にも一枚撮っていたが、その際は二人ともぼんやりと海側を眺めていたので視線を合わせるのを待っていた。待ったといっても、ものの5秒程度だが、被写体の視線というのは光や構図とともに写真を大きく左右する要素のひとつなので、意識したい部分だ。

ライカならではの楽しみを

当初、ライカM10モノクロームとライカ ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH. は作品撮り用の専用機として使用していたが、この相性の良さを普段のスナップで使用しないともったいない、と思い日常的に使い始めたのはごく最近のこと。ライカはボディとレンズの相性、いわゆる「個体差」という言葉をよく聞くが、別々に購入した個体同士がうまくマッチングしたのは幸運だったと思う。実のところ手持ちのライカM11-Pの相性は悪くはないものの、ライカM10モノクロームと比較すると今一歩及ばない印象。ボディとレンズの相性で一喜一憂するのもまたライカならではの楽しみなのではないか。

 

 

■写真家:大門美奈(Mina Daimon)
横浜出身、茅ヶ崎在住。作家活動のほかアパレルブランド等とのコラボレーション、またカメラメーカー・ショップ主催の講座・イベント等の講師、雑誌・WEBマガジンなどへの寄稿を行っている。個展・グループ展多数開催。代表作に「浜」・「新ばし」、同じく写真集に「浜」(赤々舎)など。

 

 

関連記事

人気記事