東京・青山で歴史を奏でるシャッター音が鳴り響く|「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」展をレポート
はじめに
1925年に誕生した「ライカ I」から始まり、ライカは世界中の写真家に愛されてきた。その100周年を記念する展覧会「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」が、青山スパイラルガーデンで開幕した。小型カメラがもたらした自由と革新の歴史を辿る本展では、「ライカ I」誕生の礎となった試作機「ウル・ライカ」やプロトタイプ「ライカ0型」をはじめとする貴重な資料を紹介している。さらに、植田正治×福山雅治の二人展「Visual Conversation」や、清川進也によるライカのシャッター音を用いたサウンドインスタレーションも登場。会場には、世界限定100台の特別モデル「ライカM11 “100 Years of Leica – Tokyo Japan”」も展示され、ライカの伝統と未来を象徴する空間が広がっている。本記事では、オープニングセレモニーに登壇したライカのリーダー達のスピーチとイベントの模様を紹介する。
「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」
・会期:2025 年 10 月 18 日(土)- 10 月 26 日(日)。 11:00 – 19:00
・会場:スパイラルガーデン (スパイラル1F)[地図]
・住所:東京都港区南青山5-6-23
・その他:入場料は無料。事前予約制[予約サイトはこちら]
*状況により会期・時間が変更になる場合がございます
オープニングセレモニー「100年の歩みとその先に続く未来」
福家一哲氏

ライカカメラジャパン代表取締役社長の福家一哲氏は、「ライカがカメラビジネスを始めたのが1925年。それから100年の間、クラフトマンシップを軸に革新と創造を重ねてきました」と語り、節目の年を迎えられたことについて「ライカを支えてくださる皆様、そして写真文化を共に育んでくださったフォトグラファーやパートナー企業のおかげです」と感謝を述べた。
また、「青山スパイラルガーデン1階の100周年記念展では、歴史的なカメラや資料、ライカにゆかりのある写真家たちの作品をご覧いただけます。ライカが歩んだ100年と、これからの未来を感じていただければ幸いです」と話した。
アンドレアス・カウフマン氏

ライカカメラAG 監査役会 会長のアンドレアス・カウフマン氏は、「ライカは100周年を迎えます。これは単にブランドが100年続いたというだけでなく、カメラと光学機器を一貫して生産し続けてきた100年でもあります」と語った。
壇上では1枚の写真を示しながら、「これが最初に製造されたカメラ、シリアルナンバー126番です。このカメラは1924年11月に完成し、12〜15年前にブラジルからスイスを経てライカへ戻ってきました」と紹介。「この126番が最初の量産モデルであり、以降のすべてのライカカメラは、この番号の系統を引き継いでいます」と説明した。
また、世界6か国での記念イベントを振り返る中で、カウフマン氏は「なぜ日本で締めくくるのか」という問いに言及し、日本との協力関係について語った。

「1925年、東京のシュミット商会が日本で初めて『ライカI』を輸入し、ここから日本との長い協力関係が始まりました。その後、ミノルタ、富士フイルム、パナソニック、シャープなどとの提携を通じて絆はさらに深まりました」と振り返った。
「ライカの日本展開に尽力したパウル・シュミット氏を記念し、箱根には顕彰碑が建てられています。今回はその地を訪れる予定です」とも語り、「こうした歴史的なつながりと友情こそが、この節目を日本で締めくくる理由なのです」と締めくくった。
カリン・レーン=カウフマン氏

ライカギャラリーズ・インターナショナル代表兼アートディレクターのカリン・レーン=カウフマン氏は、ライカが長年にわたり写真芸術と深く関わってきたことに触れ、「それはカメラの製造だけでなく、世界28カ所に展開するライカギャラリーを通じて写真家を支援し、新しい才能を育む活動にも表れています」と語った。また、「先週は第45回ライカ・オスカー・バルナック賞の授賞式も開催されました。これらはライカの文化的取り組みの一部です」と述べ、文化活動への継続的な取り組みを紹介した。
さらに、ライカの信念について「写真を単なる技術ではなく、芸術や対話、文化をつなぐ手段として捉えています」と話し、「写真は世界を理解し、見過ごされがちな人々や場所に声を与え、国や世代を超えて人々を結びつける存在です。真実と共感が求められる今、写真は私たちに共通の人間性を思い出させてくれます」と語った。

「ライカという文字を使って表現するのが好きなんです。日本の文化に合わせて少しアレンジしてみました」と前置きしながら、レーン=カウフマン氏は“LEICA”の5文字に込めた想いを紹介した。
「L」はLegacy(レガシー)とLifestyle(ライフスタイル)。
100年にわたる物語と革新の歴史を踏まえ、写真を“生き方”そのものとして捉える姿勢を語った。
「E」はExcellence(卓越性)とEmotion(感情)。
品質へのこだわりは日本の職人精神にも通じ、ライカの写真が心に残る理由であると述べた。
「I」はInnovation(革新)とIchigo-Ichie(一期一会)。
初代ライカIから最新モデルまで、伝統と未来を融合させてきた歩みを振り返り、「二度とない瞬間を大切にする日本の精神はライカの哲学と重なります」と語った。
「C」はCraftsmanship(クラフトマンシップ)とCommunity(コミュニティ)。
精密さと熟練の技、そして写真家をつなぐコミュニティの力を強調した。
「A」はAuthenticity(本物であること)とAesthetics(美学)。
「誠実さと真実を大切にし、時を超えて人々を魅了する美しさの追求──これこそがライカの魂です」と締めくくった。

最後にレーン=カウフマン氏は、檀上へ写真家のジョン・サイパル氏を招いて、ライカ100周年記念プロジェクト「Leica – Witness to a Century」の一環として開催中の写真展「In Conversation: A Photographic Dialogue with Elliott Erwitt & John Sypal」についても紹介した。
■In Conversation: A Photographic Dialogue with Elliott Erwitt & John Sypal
会期:2025年10月1日(水)- 2025年11月30日(日)
会場:ライカ表参道店2F「ライカギャラリー表参道」
HP:ホームページはこちら
マティアス・ハルシュ氏

ライカカメラAG CEOのマティアス・ハルシュ氏は、冒頭で「カリンとアンドレアスも話していましたが、ここ日本はライカ100周年ツアーの最終地です。東京に来られて本当にうれしく思います」と挨拶した。
続けて「まず伝えたいのは、私たちのチームの素晴らしさです。誠実で献身的なメンバーのおかげで、2000年から2019年にかけて業績は倍増しました」と述べ、チームへの感謝を表した。さらに、「コロナ禍では一時的な落ち込みもありましたが、それでもライカにとって大きな成功でした」と振り返った。
また、「ソニー、ニコン、キヤノンなど強力な競合が多い日本で成果を上げられていることを誇りに思います。日本には私にとっても特別な魅力があります」と語り、日本市場への思い入れを強調。日本の文化や価値観についても触れ、「日本の細部へのこだわり、美しいデザイン、丁寧な姿勢はライカの哲学と深く通じています。私たちも同じように細部を大切にしながらお客様と向き合ってきました。それが日本での成功につながったのだと思います」と語った。
さらに「現在、日本には直営店や提携店を含めて11店舗があり、売上は約90億円。ドイツと並ぶ重要な市場です。日本の皆さん、そしてチームに心から感謝しています」と述べ、100周年の節目に改めて日本市場への感謝の意を示した。
ステファン・ダニエル氏

ダニエル氏はライカの歩みを振り返り、「1925年に最初のライカが発売されたことで、写真は新しい時代を迎えました。コンパクトで携帯しやすい設計は、写真家に自由をもたらし、文化的な変革を生んだのです」と語った。
続けて、「ライカは創業以来、伝統を守りながら変化を受け入れてきました。私たちにとってイノベーションとは、新機能の追加ではなく、写真体験をより直感的で誠実なものにすることです」と述べ、「技術が進化しても、職人技へのこだわりだけは決して変わりません」と強調した。
さらに、「ここ数十年で写真の世界は劇的な変化を遂げました。ライカはそのルーツを失うことなく、その精神をデジタル時代に受け継いできました」と語り、Qシリーズをはじめとするデジタルカメラが「アナログの精神」を継承していると紹介。「日本を含む多くのパートナーとの協業により、ライカのビジュアル言語を新しい世代へと広げることができました」と述べた。
最後に、「AIやコンピュテーショナルイメージングなど新しい技術への期待はありますが、私たちは常に“人間らしい物語”を語ることを最優先にしています」と語り、テクノロジーと人間性の調和を重視する姿勢を示した。

スピーチの最後でダニエル氏は、「ライカの100周年を祝うだけでなく、国際社会の舞台で東京が果たしてきた役割に敬意を表して、この特別なモデルを発表できることを嬉しく思います。」と述べた。
この日発表されたのは、ライカM11 “100 Years of Leica – TOKYO JAPAN”エディション(世界限定100台)。ライカのフラッグシップであるレンジファインダーシステムをベースに、日本の写真文化と創造精神に敬意を込めて製作された特別モデルで、100周年の節目を象徴する1台として披露された。
展示構成で辿る─ライカが見つめた「写真の100年」
貴重なアーカイブアイテムを公開

最初のライカ試作機「ウル・ライカ」のレプリカモデル。ライカ初の市販機「ライカⅠ」から発売50周年を記念して製作された
オスカー・バルナックのワークブック(複製)



「ライカⅠ」発売前に作られた試作機「ライカ0型」を市販モデルとして2000年に製作したもの。ファインダーは折り畳み式を採用


「ライカ I 」から最新機種までを辿る空間
スパイラルガーデンのアトリウムには、ライカ100年の歩みを“渦”で象徴した展示空間が登場。昼と夜で表情を変える会場では、カリン・レーン=カウフマン氏がキュレーションした100点の写真が投影され、清川進也氏によるライカのシャッター音のサウンドインスタレーションが響きます。さらに、歴代の特別モデルや現行製品が並び、「ライカM11 100 Years of Leica “TOKYO JAPAN”」も展示。ライカの過去と現在を体感できる構成となっています。



「ライカⅠ」誕生から100周年を記念して製作された特別限定モデル。光沢感のあるブラックペイント仕上げが施されたシルバークロームの外装はそのコントラストが美しく、クラシックな佇まいの逸品。ライカストア・ニューヨーク・ソーホー、上島、東京の世界6都市で販売が開始され、各100台が限定。


植田正治×福山雅治写真展:Visual Conversation
写真を通じて深い絆で結ばれた二人:植田正治と福山雅治による写真展が開催されています。

静謐なまなざしで風景と人物をとらえた写真界の巨匠・植田正治。その独創的な世界に深い敬意を抱き、自らの写真表現を追い求めてきた福山雅治。時代を超えて交差する二人のまなざしが出会う写真展「Visual Conversation」は、福山雅治が“師”と仰ぐ植田正治との初の二人展です。異なる時間軸で撮影された作品たちが響き合うように展示され、写真という言語を通じた静かで豊かな対話が広がります
新宿 北村写真機店 6Fライカフロア

新宿 北村写真機店はカメラのキタムラのフラッグシップストアとして位置付けられており、6Fライカフロアにはライカブティック / 中古ライカコーナー / ライカヴィンテージサロンがあります。ライカカメラ社公認のブティックでは新品のカメラボディやレンズを中心に、双眼鏡やお持ちのカメラをドレスアップするカメラアクセサリーを取り揃えています。中古を取り扱うスペースも隣接しているため、ライカの新品×中古もシームレスにご覧いただけます。またヴィンテージサロンでは海外のオークションに出品されるような珍しいカメラの取り扱いもございますので、定期的にご来店いただければ、都度発見があるはずです。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。
新宿 北村写真機店
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目26-14[地図]

























