中一光学 SPEEDMASTER 65mm F1.4と旅した、夏の終わりのフィンランド

Yuri
中一光学 SPEEDMASTER 65mm F1.4と旅した、夏の終わりのフィンランド

はじめに

9月中旬、季節の境目に立つような時期に訪れたフィンランド。
街のすぐそばに森や湖が広がり、自然と調和するような優しい時間が流れていました。

旅のお供に選んだのは、富士フイルム GFX50S IIと中一光学のレンズ「SPEEDMASTER 65mm F1.4(Mitakon)」。
ラージフォーマットのF1.4という明るさを持ち、マニュアルフォーカス専用というユニークな1本です。
軽快とは言いがたいものの、描写の美しさに惹かれ、このレンズをカメラバッグに忍ばせて北欧へ。
旅の記憶とともに、使用感やレンズの魅力をお届けします。

※電子接点のないレンズのため、作例のExifデータはありません。

旅に持って行くには重すぎる…なのに、どうしても使いたくなるレンズ

「SPEEDMASTER 65mm F1.4」は、中一光学が手がける、富士フイルムGFXシリーズ向けに設計されたレンズ。「Mitakon」とも呼ばれていて、その名前のほうが馴染みのある方も多いかもしれません。
重厚感のある外観は、どこかオールドレンズを思わせる雰囲気。クラシックな佇まいに、凛としたかっこよさが漂います。

レンズの重さは約1050g。正直持ち歩くにはなかなか重く、手に取った時のずっしりとした重みに、「それ、本当に旅に持って行くの?」と改めて自分に問いかけてしまいたくなるほど。

GFXはボディの重量もなかなかあるので、総重量を考えると「旅におすすめのレンズ」と言い切れない面もありますが、それでも持って行きたくなるほどの魅力が詰まっているレンズなのです。

光を見つけて歩く、夏の終わりのフィンランド

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

今回のフィンランド旅は、首都「ヘルシンキ」を中心に、コンパクトに巡ることに。
「フィンランドの季節は日本の1.5ヶ月先」とネットで見かけた情報から、すっかり秋色に染まっている景色を想像していたのですが、実際に降り立ってみると、思っていたよりも木々はまだ青々としていて、色づくにはまだ少し早い様子でした。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

「森と湖の国」と呼ばれている通り、少し歩けば水辺や植物に出会い、その美しさには目を見張るばかり。「SPEEDMASTER 65mm F1.4」とともに、優しい光にあふれたヘルシンキの景色を残していきます。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4
FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

「SPEEDMASTER 65mm F1.4」の大きな魅力の1つが、印象的な光の描写。フィルターを付けたような光の滲みや、フレアやゴーストなど。好みが分かれる点だと思いますが、このレンズはおもしろいほどに光を魅力的に捉えてくれます。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4
FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

「次はどんな風に光を写してくれるんだろう」と、わくわくしながらファインダーを覗く。
純正レンズではなかなか出会えない世界を残せることが、このレンズと旅する醍醐味だと思います。

開放F1.4で表現する、特別な旅のワンシーン

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

このレンズの開放F値は1.4。ラージフォーマットとの組み合わせにより、ふんわりと溶けるようなボケを美しく描き出してくれます。
35mm判換算で約51mmという、人の視野に近い画角を持ちながらも、大きなボケをしっかり残せるのが特徴。主役をグッと引き立てる表現が得意です。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

マーケットで見つけたおいしそうなイチゴ。ヘルシンキには、野菜や果物、フードやお土産などが販売されているマーケットが各所で開催されていて、そんな市場巡りも旅の楽しみの一つ。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

少し早めの晩ごはんに…と入ったレストランにて。暗めの店内でも、明るいレンズだからこそ、光を捉えて美しく残してくれます。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

マニュアルフォーカスなので、開放で撮影すると若干ピントの甘さは否めませんが、それもご愛嬌。
優しく広がるボケ味が、中判フィルムを思わせるような立体感と奥行きを演出してくれます。

マニュアルフォーカスで、一枚一枚とじっくり向き合う時間を楽しんで

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

このレンズはマニュアルフォーカス専用のため、ピント合わせはすべて手動です。
そう聞くと「難しそう」と感じる方もいるかもしれませんが、ピントリングの操作感がとても滑らかで、実際に使ってみると、「思った以上に合わせやすい」と実感。普段はマニュアルフォーカスレンズをあまり使わない私でも、スムーズに撮影を進めることができました。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

森の奥で出会った、水遊びを楽しむハスキー。ふと目が合った瞬間に。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

あえてピントを外してみたり、普段とは違う場所に合わせてみたり。マニュアルフォーカスのレンズだからこそ、一枚一枚とじっくり向き合う時間が生まれます。
森の中をゆっくり歩くハイキングや、立ち止まりながら撮る街角のスナップなど、スピードよりも“景色を味わう”ことを大切にした旅にぴったりです。

旅のあらゆる場面で頼りになる、51mm相当の画角

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

「SPEEDMASTER 65mm F1.4」の焦点距離は、35mm判換算で約51mm相当の画角。広すぎず、狭すぎない絶妙なバランスです。だからこそ、街の風景やお花、料理や動物など、旅先で出会うさまざまな被写体に柔軟に対応できます。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4
FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4
FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

優しく咲く草花や街中で見かける光と影。ヘルシンキには「いいな」と思う景色があふれていて、そんな感情に合わせてシャッターを切れる画角が心地良いです。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

ランチ難民になった時に、たどり着いたハンバーガー。このレンズの最短撮影距離は0.7mとあまり寄れないことが難点ではありますが、だからこそ旅のワンシーンを余白を交えて残せます。

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

開放のボケ感も魅力的ですが、絞るとぐっとシャープさが増し、美しい描写が可能に。なかなかレンズ交換をしにくい海外にて、頼もしい1本として重宝します。

純正レンズとは一味違う、優しい描写を楽しむ1本

FUJIFILM GFX50S II + SPEEDMASTER 65mm F1.4

SPEEDMASTER 65mm F1.4で撮った写真には、旅の空気ごと閉じ込めたような、温かさが宿るような気がします。

街で見かけた木漏れ日の差す路地や、湖のそばでぼんやりと佇む鳥の姿など。
純正レンズで撮っていれば、もっとシャープに、もっとクリアに描写できたかもしれません。
けれどこのレンズは、どこか曖昧で、記憶の中にある風景のような淡いトーンで写してくれます。

その場の空気感や心地よい時間までも写真に残してくれる。旅の記憶をまるっと残すような表現力が、このレンズの大きな魅力なのかもしれません。

SPEEDMASTER 65mm F1.4は、決して万人向けの旅レンズではないと思います。
でも、「旅先の出会いと丁寧に向き合いたい」と感じる方にとっては、きっと心強い相棒になってくれるはず。
夏の終わりの優しい北欧の風景を、このレンズとともに歩けて本当によかった、と感じた旅でした。

 

 

■フォトグラファー:Yuri
大阪府在住。「ふんわりかわいい写真」をテーマに、旅先の魅力やカメラの楽しみ方を発信。観光プロモーションに関する撮影をはじめ、家族写真/ウエディング等の出張撮影や、書籍・広告の撮影、写真セミナー講師、記事執筆など、幅広く活動中。

 

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