復刻版!シャボン玉ボケのトリプレットレンズ Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」

坂井田富三
復刻版!シャボン玉ボケのトリプレットレンズ Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」

はじめに

今回紹介するレンズは、Meyer Optik Görlitz(メイヤーオプティックゴルリッツ)の「Trioplan (トリオプラン)100mm F2.8 II」です。

あまり聞きなれないレンズ名の「Meyer Optik Görlitz」ですが、歴史は古く1896年に創業したドイツのレンズブランドで、「Meyer Optik Görlitz」のオールドレンズは今なお人気のあるレンズです。特に「Trioplan 100mmF2.8」は、シンプルなレンズ構成のトリプレットレンズで、独特の「シャボン玉ボケ」をするのでオールドレンズ市場でも非常に値段が高騰してしまったレンズです。

今回はオリジナルの「Trioplan 100mmF2.8」ではなく、2021年から株式会社ケンコープロフェショナルイメージングで国内販売が始まった復刻版とも言える「Trioplan 100mmF2.8 II」の写りとその魅力をご紹介します。

Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」の魅力とスペック

Meyer Optik Görlitzの「Trioplan 100mmF2.8 II」は、「トリプレット」レンズと言われる3群3枚のレンズ構成で、レンズ名に「II」とついているようにオリジナルより最適化された機械設計と光学設計に改良されています。

マウントも現在の各メーカーに対応しており、トリプレットレンズを様々なメーカーのカメラで楽しむことが可能になっています。

「Trioplan 100mmF2.8 II」の基本的なスペックは以下の通り。

焦点距離 100mm
レンズ構成 3群3枚
開放絞り 2.8
最小絞り 22
フィルター径 52mm
絞り羽根枚数 15枚
最近接距離 0.9m
手ブレ補正 なし
全長×最大径 83-115×58mm(EFマウント64.5mm)
重量 320-390g ※対応マウントによる違い
対応マウント キヤノンEF、ニコンF、フジX、ソニーE、マイクロフォーサーズ、M42、ライカM、ペンタックスK、ライカL
絞りリングはレンズ先端部に位置し、クリック感の無いタイプでF2.8~F22
15枚の絞り羽根が特徴
ピントリングの回転トルクはやや重め、最短撮影距離は90cm。レンズ上では1.1mから表記になっているが1.1mの表記よりも少し回る状態。
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm

トリオプランの代名詞である「シャボン玉ボケ」を分かりやすくするために、イルミネーションをアウトフォーカスして撮影してみたものが上の写真です。この「シャボン玉ボケ」「バブルボケ」と言われるボケは、玉ボケの輪郭線がクッキリと現れて表現されるボケになります。トリオプラン以外にも「シャボン玉ボケ」の出やすいオールドレンズはいろいろとあります。「Trioplan 100mmF2.8 II」は、シャボン玉ボケがかなりはっきりと出るレンズです。

以前に紹介した「シャボン玉ボケ」「バブルボケ」のレンズの記事はこちらから↓

筆者が所有しているMeyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」はMマウントなので、今回はオートフォーカスで使えるマウントアダプター「TECHART LM-EA9」をセレクトし、ソニーαを使用して撮影をしてみました。

マニュアルレンズをオートフォーカスとして使えるマウントアダプター「TECHART LM-EA9」は、基本的にオートフォーカスで使用できますが、ピント合わせをするためにマウントアダプター自体がモーターで前後してピントを合わせる構造なので、ある程度マニュアルフォーカスでピントを合わせ、そこからオートフォーカスで最終ピントを合わせるようなスタイルで撮影する形になります。それでもマニュアルレンズのピント合わせが格段に楽にできる魅力的なアイテムです。

マウントアダプター「TECHART LM-EA9」のモーターでレンズを動かしてオートフォーカスする仕組み

Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」でイルミネーション撮影

■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/60 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm

バブルボケを撮影する為に、トリプレットレンズの「Trioplan 100mmF2.8 II」を持って夜の街に繰り出し、イルミネーションを撮影してみました。やはりイルミネーションははっきりとしたバブルボケを表現するのにピッタリの被写体です。100mmという中望遠の効果もあってボケを大きく魅力的に写すことができます。

■撮影機材:SONY α7R IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/400 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7R IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/100 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7R IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm

「Trioplan 100mmF2.8 II」を通して覗くファインダーに映し出されるイルミネーションは、いつもと違った世界に見えて撮影するのが非常に楽しくなり、時間を忘れてバブルボケを探して夜の街を歩き回っていました。

Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」でスナップ撮影

■撮影機材:SONY α7R IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF4 ISO200 焦点距離100mm

「Trioplan 100mmF2.8 II」はシャボン玉ボケが大きな特徴のレンズではありますが、トリプレットレンズ独特の味わいのある描写をします。トリプレットレンズの中心部はシャープに写るのですが、周辺部の歪みが補正できず少し流れたようなボケの症状がでます。シンプルな背景の時はそれほど気になりませんが、細かい背景描写に場合には少し気になるポイントです。

■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF2.8 ISO100 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/400 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO640 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7R V + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF2.8 ISO400 焦点距離100mm
■撮影機材:SONY α7 IV + Meyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」
■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF2.8 ISO800 焦点距離100mm

従来モデルから光学設計などを改善した復刻版モデルですが、その描写はコントラストやシャープネスが向上されているようです。この辺りの調整は、カメラ側のクリエイティブルックの設定などで調整もできるので、自分にあった設定をするのも良いかもしれません。

古い従来型の「Trioplan 100mmF2.8」も大変魅力的な存在ですが、中古市場での価格高騰と合わせて、程度の良いものを入手するのはなかなか至難の業です。そんなレンズの復刻版ではありますが、新製品なのに安心して使えるオールドレンズである「Trioplan 100mmF2.8 II」は、独特なボケやその雰囲気を楽しみたい方におすすめできるレンズです。

まとめ

現在の最新レンズに比べると解像度の低いレンズですが、写りに味わいがあるMeyer Optik Görlitz「Trioplan 100mmF2.8 II」は、筆者が所有する数あるレンズの中でも特にお気に入りの1本です。
歴史ある古いレンズが最新の技術で丁寧な作りで復刻され、現代に蘇って手軽にその写りを楽しめるのはとても魅力的で、被写体を探してファインダーを覗く時間を楽しくさせてくれます。

 

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

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