フォトライフ四季

協力:カメラのキタムラ

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秋 Vol.78 AUTUMN|思い出づくりどっさりの秋 写真の秋、これを撮る

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思い出を作る道具たち

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写真家の道具論 紅葉撮影は重ね着と高倍率ズームで Vol.2 川合麻紀

プロの写真家の愛用の機材や、撮影に便利なアイテムを見せてもらい、撮影のコツもうかがいました。
今回は、川合麻紀さんに紅葉撮影の着こなし術を学びます。

紅葉撮影での着こなしは、レイヤードが基本

撮影機材を入れたリュックよりも、さらに大きなカバンを抱えて颯爽と現れた川合麻紀さん。そのなかから、オレンジ色のダウンジャケットや黄緑色のフリース、紫色の防寒ジャンパーなどカラフルな衣類が次から次へと現れました。

「紅葉の撮影では、薄手のものをレイヤード(重ね着)するのが基本です。寒さ対策と暑さ対策の両方を考えなければなりませんからね。はじめは寒いと思っていても、歩いているうちに汗をかいて暑くなったりすることもあるので、着脱をマメにしてすばやく温度調節できる工夫が必要なんですよ」

上の写真を撮るために、額に汗を浮かべて、薄手のパーカーを何枚も重ね着した川合さん。襟元は着物の半襟をのぞかせたように幾重にも重なり、全体の色もカラフルにまとまっていきます。

「撮影会にいらっしゃる生徒さんたちを見ても、今は女性を中心にみんなオシャレですよ。ショートパンツの下にスパッツを履いたり、カラフルな色を組み合わせたり。山ガール、川ガールがはやっているので、撮影に着ていく服もおしゃれなものを選べるようになりました。私は見た目より機能重視ですが」

 そんなことを言いながらも機能的でカラフルな服に身を包んで、カメラの前に立った川合さん。その姿はまるで、鮮やかな色彩で構成された川合さんの写真を見るようでした。

状況によっては、ボディ1台とレンズ1本で挑む

撮影機材は、ボディ2台に、標準、望遠、超広角の各ズームレンズと、マクロレンズの組み合わせが基本。長時間歩くために機材を増やしたくないときは、高倍率ズームをつけたボディを1台で、そのほか最低限必要な道具をリュックに入れて移動するそうです。最近川合さんが愛用しているのは、広角18ミリから270ミリまでをカバーするタムロンのズームレンズ。これ1本あれば、どんな被写体も撮影できるといいます。

「天気が悪くてレンズ交換ができないときも、私はよく高倍率ズームを使います。思い切ってレンズ1本にしちゃえば、体も軽くなって撮影にも集中できますからね。機材を持ちすぎて写真を撮るのがイヤになってしまったら本末転倒なので、機材は、臨機応変に使い分けています」

 使い込まれたリュックを覗き込むと、レンズ以外にもいくつかの道具が収納されていました。「これはテレコンバーター(エクステンダー EF1.4×Ⅲ)と、接写用中間リング(エクステンションチューブ EF25)です。前者は焦点距離を1.4倍に、後者はレンズとボディの間に取り付けるだけで撮影倍率を上げてくれるんですよ。そのほか、PLフィルターとNDフィルターも持っていきます。私は意図的にシャッタースピードを遅くして被写体をブラして撮ることが多いので、光量を減らしてくれるNDフィルターは必須です」

また、三脚とファインダーにもこだわりがあるとか。

「地面に生えているキノコなんかを接写するときはアングルを低くしなければなりません。そのため、三脚はセンターポールを外したときに10センチくらいの高さになるものを選び、低いポジションでの撮影でファインダー像を見やすくするアングルファインダーを取り付けています」

プロだからなんでも用意するというのではなく、都度状況や目的に応じて必要なものを見きわめて、揃えていくという川合さんの機材選び。私たちもおおいに参考にしたいものです。
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プロが教えてくれたお役立ちグッズ

  • アンブレラクランプ
  • 雨の中の撮影では、三脚に専用の折りたたみ傘を取りつけるアンブレラクランプが便利。傘の裏面が銀色の布になっているので、撮影用の反射傘としても使うことができます。
  • レインウェア
  • 雨対策としてレインウェア、レインブーツは必携。風を通さないレインスーツは、防寒具としても利用できるので、多少値段が張っても、機能性に優れた丈夫なものを選んだほうがいいでしょう。
  • 虫刺され対策
  • 秋も虫対策はまだ必要です。撮影中は手や顔などがねらわれやすく、虫よけスプレーと虫さされの薬があると安心。蚊を寄せつけない防虫素材の服もいいですね。女性は日焼けどめもあると役立ちます。
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プロの金言「最初の撮影はロケハンの気持ちで、光を見る」

「初めて訪れる場所で様子がまったくわからないときは、無理に重たい機材を持たず、ロケハンのような気持ちで出かけるのがいいと思います。結局、風景写真は何度も同じ場所に通わないとイメージはつかめませんからね。一回でいい写真を撮ろうなんていうのは絶対に無理。最初はじっくりと被写体を見て歩き、光が当たる時間帯などをしっかり計算に入れて本番にのぞむのがいいのではないでしょうか。そんなとき、荷物を少なくして撮影のフットワークを軽くしてくれる高倍率ズームが、力強い味方になってくれています」
ありがちなNG

ありがちなNG

紅葉撮影をしている川合さん。ダウンジャケットを着てしっかり装備しています。

撮影機材&持ち物リスト

カメラバッグの中身。
ボディ2台にレンズ4本が収まっています。

【カメラボディ】
Canon EOS 5D Mark Ⅱ
Canon EOS 7D

【交換レンズ】
EF16-35mm Ⅱ F2.8L USM
EF24-105mm F4L IS USM
EF70-200mm F4L IS USM
EF100mm F2.8Lマクロ IS USM

【その他】
三脚(ベルボン El Carmagne 640)、アングルファインダーC、リモートスイッチ、水準器(薄暗い場所ではデジタル式を使用)、PLフィルター、NDフィルター、CFカード(32GB×3枚、16GB×1枚)、予備電池、めがね拭き(レンズクロスとして使用)、ブロアー、45リットルのビニール袋(機材を突然の雨から守ったり、濡れた衣類を入れたりします)、など。

川合さん注目のレンズ

タムロン18-270mm F/3.5-6.3 DiII PZD

世界最小・最軽量の15倍高倍率ズーム。紅葉撮影に限らず、風景写真を撮りに出かけるときはこれ1本でじゅうぶんな撮影が楽しめます。

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Web 限定!取材こぼれ話

6月下旬に行われたこの取材。今年初めての真夏日を記録したにもかかわらず、「秋の撮影に行く服装をしてもらえますか」と無情なお願いをした我が編集部。川合さんは「暑い」を連発しながらも、笑顔でレイヤードスタイルを着こなしてくれました。

「着るものだけでなく、もっと寒くなってくると手袋も重ねてつけます」と川合さん。お気に入りのアウトドアショップに定期的に顔を出して、新作やお買い得の商品をチェックしているそう。「でも、この間行ったときは、ちょうど買おうと思っていた服を目の前で他の人に買われてしまって……」。そんな話も聞けました。

撮影道具について熱く語る川合さんのお話を、立って聞く取材班

最初はテーブルに座り、お話をうかがっていたのですが、服装の話になると、川合さんは床の上に置いてあったバッグからアイテムを取り出しながら説明を始めました。次から次へ出てくる防寒アイテムと撮影グッズに圧倒され、立ったまま聴き続けてしまった取材班。椅子もすすめずに失礼いたしました……。

取材が終わったあと、炎天下のなか、大きなバッグと機材が入ったリュックを抱えて帰って行かれる川合さんの後ろ姿を見送りながら、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。

「この三脚は気に入っているので、ずっと使ってるんですよ」。当時の限定カラーの花柄がステキです

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2000年よりフリーランスの自然・動物写真家として活動を始める。「The colors of nature」をテーマに、アフリカ、カナダ、セイシェルなどの自然や動物、国内の風景や花などを中心に撮影取材を行っている。自然風景のほか、テーブルフォト、ペット、夜景など、さまざまな被写体に取り組み、独特の色表現と、さわやかでやわらかい描写が特徴。わかりやすい写真指導には定評があり、NHKなどのTV出演や写真教室講師をつとめる。日本写真家協会会員。

芳賀 日向(はが・ひなた)
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