女性は男性に比べて感性が豊か。そして撮りたいものがはっきりしています。
――女性アマチュア写真家が増えてきています。特に若い年齢層の方が目立っていますが、アマチュア写真家を見てこられて、今までと違った点はありますか?


 殆どの女性は男性に比べると感性が豊かであると思えます。その中でも特に若い女性層は、写真を通して様々なことを感じる心を持っているようです。
 先日もフォトコンテストに入賞した女性の方からメールいただきました。内容は「いただいた賞金の一部をユニセフに寄付しました。受賞して賞金をいただくのはうれしいことですが、寄付をすることで社会還元になればと思いました。これからもこの気持ちを大切にしながら写真を撮っていきたい」という内容でした。

――プリントを見た瞬間に、撮影者が男性か女性かわかるものですか?

 概ねわかります。女性の方が素直です。男性の方が撮る前にいじくり回す傾向にあります。先日審査したフォトコンテストでも入賞したのは女性の方が多かったのですが、女性は男性と違いメカニズムを追求しないからだと思います。
 ところが男性の多くはメカニズムにこだわり、4×5や8×10サイズのカメラなどで撮ることを自慢したがります。写真を楽しむのではなく、撮る過程を自慢しがちです。フィルムのサイズはどうでもいいこと。それよりも写っているものの方が大事です。そのような人に限って誰かが撮った場所に行って、同じアングルで撮影しています。それは自分の写真ではないのです。何のために大きなカメラを持って、たくさんの人が撮影しているところに行く必要があるのでしょうか?
 私たちのように永年写真を撮ってきた人間からすると、写真はいかにスピーディに撮るかが大事。視た瞬間に撮る。“視た”ということは“感じている”証拠です。いいなと思った瞬間に撮れていたら一番いい。しかしいいなと思って撮影準備をしている間に光が変わってしまうこともあります。女性は自分の感性に従って撮ります。いいと思った瞬間に撮ります。男性は構図を考えたりしてから撮影しがちです。手前の木が邪魔だとか、電線やガードレールが気になるなど、シャッターを押すまでに時間がかかってしまいがちです。

 


【氷筍】日本でも数カ所しかないという珍しい氷筍の群生を洞窟の中で見た。最初に見た感動をそのまま撮影した。この年は冷え込みが異常で、氷筍の高さが2メートルを超えるものもあった。
■カメラ:ペンタックス645NU レンズ:33-55mm F4.5 シャッタースピード:3秒 絞り:f16 -0.3EV補正 C-PL フジクロームプロビア400X ISO感度400 撮影地:長野県栄村



【初雪来る】下界で盛りの紅葉を撮影していたら山では雪が降っているようだった。早速現場へ急行すると案の定である。細雪が色づいた葉の上にふんわり乗った光景に感動して撮影した。切り取り方が難しいが、さまざまに切り取って帰ることが大切。後で選択する喜びが待っている。
■カメラ:ペンタックス*istDS レンズ: DA-50-200mm F4-5.6ED シャッタースピード: 1/5秒 絞り:f10 C-PL ISO感度200 RAW 撮影地:福島県下郷町

 

これから写真を始める方は、とにかく写真を楽しむこと。
そして自分が撮りたいものをどんどん撮ることです。
――男女を問わずこれから写真を始めようとしている方へのアドバイスはございますか?

【やまぬ雪】新雪が降りしきる。杉林の前の梢に見る間に雪が積もり、明確にその存在感をアピールした。そのコントラストが面白く、雪を止めて梢の存在を明瞭化した。背後の杉の直線と梢の斜線とのコンビネーションがこの写真作品を生かした感じがする。
■カメラ:ペンタックスK10D レンズ: DA-50-200mm F4-5.6ED シャッタースピード: 1/200秒  絞り: f8 -1EV補正 C-PL ISO感度200 RAW 撮影地:長野県山ノ内町


 とにかく写真を楽しんで撮ることです。自分が撮りたいと思うものをどんどん撮るべきです。
 それと大事なのはプリントすること。パソコンのモニター上で見て終わりにしている方が多いと思いますが、2Lサイズでいいからプリントすることをお勧めします。2Lサイズのプリントを並べて見るだけでも勉強になります。自分の足りないところがわかってきます。これはモニターで見ていたのでは絶対にわからないことです。
 そして、その中から大きくプリントした方がいいと思える写真を選ぶことも勉強です。大きくして良くなる写真とダメになる写真があるからです。


デジタルは撮影データを保存したことで満足してしまいがちですが、
デジタルこそプリントして残すことが重要です。
――デジタルが主流となってから、撮った写真をプリントする方が減っています。このことについてご意見はございますか?


 デジタルは保存したことで満足してしまう方が多いようですが、デジタル写真こそプリントで残すことが重要です。それも、できれば銀塩タイプの6切サイズ以上の大きさでプリントして欲しいと思います。そうしておけば万が一データが無くなってもプリントを原稿として使うことができます。デジタルを使っている方は、データが消えてなくなってしまうことを前提に考えた方がいいです。バックアップすることで安心してしまいがちですが、バックアップしたそのものがダメになることもあるのです。私も時間があるときに、撮り貯めた写真を一枚ずつ大きなサイズでプリントしています。


【啓蟄の頃】冬ごもりの虫が動き出したかのような氷が張っていた。朝の光を浴びて色づき今にもうごめく気がした。偏光フィルターを適度に回転させるとスペクトルの色が部分的に出現するところが面白い。
■カメラ:ペンタックスK10D レンズ: DA-50-200mmF4-5.6EDシャッタースピード: 1/30秒 絞り: f22 -0.7EV C-PL補正 ISO感度200 RAW 撮影地:栃木県鹿沼市

 

【東京の雪】東京の雪は重い雪。北海道のようなサラサラ雪ではないから融けるのも早い。融けた跡の雪花が美しく、特殊なモミジの枝との組み合わせにその感じがでていたのでローアングルで青空を背景にし、雪花の白を強くした。
■カメラ:ペンタックス645NU レンズ:35mmF3.5 シャッタースピード:1/4秒 絞り:f22 -0.3EV補正 フジクロームベルビア50 ISO感度50 撮影地:東京都新宿区

 
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