写真は撮ったときの思い出がたくさん詰まっているもの。
私が審査をするときは“感じながら撮った”写真を選びます。
――数多くフォトコンテストの審査員を務めていらっしゃいますが、選ぶ際のポイントはどのようなことでしょうか?


 私がコンテストで審査をする時は、作者が『感じながら撮った写真』を選んでいるということ。勿論写真技術も必要ですが、技術よりもその人がどのように感じながら撮っているのか?そのことを想像するのも写真を視て心理を読む面白さだと思います。そして、写真とは読み物と思っています。それらは写真が誰にでも写せるようになったからです。
 四季のフォトコンテストで冬の審査を担当させていただいていますが、ライトアップされた白川郷を撮影した作品を数多く見ます。みんな同じ場所で撮った写真ですので、同じような仕上がりになってしまい個性が感じられません。
 しかし、そのような中でも目を引く写真として、例えば白川郷を撮影している人の影だけを写した作品などが挙げられます。それは他の人たちと視点が違い、作者の心が写っていることです。
 ですから花火の写真でも、必ずしも画面内に花火が写っている必要はありません。花火を見ている人の表情を撮っても、花火の色が顔に映っていることでそれを想像させることができます。


【暖かい光】早朝5時から7時半頃まで、朝焼けの状態から暖かい光になるまで撮影を楽しんだ。湖からは水蒸気が立ち上り、蛇行した水路には光の反射が美しく輝いた。その一瞬を逃さないように位置を少しずつ変えて撮影した。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:120mmマクロF4 シャッタースピード:1/4秒 絞り:f22 +2/3EV補正 C-PL フジクロームベルビア50 ISO感度50 撮影地:福島県北塩原村

題名の付け方も大切。写真で一番大事な“感じて撮る”ことができれば、
後で写真を見てもいろいろな題名が浮かんでくるはずです。
――画面を見れば分かる被写体をそのまま題名にしている作品を多く見かけますが、題名の付け方についてアドバイスはありますか?

【シンシンと】日の出の早朝撮影に出かけたが、雪が降っていた。車の窓からストロボをつけて手持ちで撮影した。色温度に敏感なフィルムだから、明けゆく色と白い雪を合わせて情感のある光景が撮影できた。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:33-55mmF4.5 シャッタースピード:1/45秒 絞り:f5.6 +0.7EV補正 AF -360FGZ ストロボ同調 フジクロームフォルティアSP ISO感度64 撮影地:福島県北塩原村

 


撮るときにどう感じるかが、題名の付け方にも影響してきます。必ずしもその場で題名を付けながら撮影する必要はありません。感じながら撮ったのであれば、後で写真を見るとその時の想いが写っており、いろいろな題名が浮かぶはず。写真には撮ったそのときの思い出がたくさん詰まっているものです。
 それから、構図ばかりを気にして写真を撮っている方がいますが、構図というのは結果的になることであって、初めから構図ありきでは一番大事な“感じて撮る”ことが欠落します。自分が感じる写真を撮ることが大事。私がいつも思っていることは、写真は“心で写す”ものでなければいけないということです。

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