回を重ねるごとに鶴の新しい魅力を発見できるのが楽しくて、通いつづけました。そこでは数多くの動物たちと、大自然の素晴らしさに出会いました。



【巣立ち雛】雛が巣立った日は暖かな日差しだった。眠っているのか、笑っているのか。ファインダーを覗きながら僕は笑ってしまった。
■カメラ:キヤノンEOS1Dマーク2 レンズ:500mm 2倍コンバーター RAW 太陽光モード ISO320 マニュアル 絞り:f10 シャッタースピード:1/100秒 三脚使用 撮影地:北海道滝川市 エゾフクロウ

───先生の被写体の動物たちは、背景の大自然と調和している印象を受けます。

 回数を重ねて同じ場所に行ってみると、自分のお気に入りだった鶴が今までとはまったく違った表情をして、自分の想像をはるかに越えた素晴らしさを見せてくれます。それが面白くて「次の季節も行ってみよう」の繰り返しでした。
 その時に出会った鶴以外の数多くの動物たちも、私の写真家活動には、いまでは貴重な存在となっています。
 私は自然界に生きている動物を撮る時には、その動物を包み込んでいる周りの景色も観るようにしています。ですから動物だけでなく、周りの自然も一緒に写真の中に撮り込んでいます。それともうひとつは、楽しみながら、動物や自然と
“掛け合い”をしながら撮っています。




【アイガモのヒナ】知人の農家で「アイガモが生まれた」との知らせをもらって急行。大きな庭を生後数日のヒナが駆け回っていた。午後のやわらかな光を選んで撮影。
■カメラ:キヤノンEOS10D レンズ:100mmマクロ F4 RAW 太陽光モード ISO100 マニュアル 絞り:f4 シャッタースピード:1/350秒 撮影地:新潟県石打

───具体的にはどのようなことでしょうか?

 例えば、エゾリスが木の途中につくった巣穴から顔を出す瞬間を撮りたいと思っていても、いきなり巣穴の近くでカメラを構えていてはエゾリスは出てきてくれません。
 そのような時は、目の前の森を観察します。エゾリスたちが活発に動き回っているのを眺めています。すると木登りが上手そうなエゾリスでも、中には木から落ちたりするのもいたりと、眺めているだけでも面白いものです。
 そのうち、何となくエゾリスの行動の習性がわかってきたりもするので、いいシャッターチャンスにも巡りあえるのだと思います。そして自分も楽しみながら撮っているで、その楽しい気分が写真にも表れているのではないでしょうか。

───そのような動物の習性や行動などについては、先生が大学で学ばれてきたことも撮影の役に立っているのでしょうか?

 野生動物の写真を撮るようになり、皆さんからもよく「大学で学ばれたことが役に立っているのでは」と聞かれますが、あまり関係ないと思います。
 やはり自然界の場合は、場所によって条件が異なります。先ほどもお話しましたように、現場でずっと動物たちを観察することも楽しいので、ひたすら動物の行動を観ていることにより、「ここではこんな動きをするのか」「こんな性格なんだ」というようなことがわかります。
 ですから私の場合は、それぞれの撮影現場ごとに動物の行動を学び、撮影アングルの決定などに役立てています。

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