旅の楽しさのひとつが思わぬこととの出会いだろう。意表。不意。奇想天外…。何でもいい。唐突な出会いはそれだけ印象深く、旅での出来事を思い起こす時のいいキッカケになってくれる。
 そしてそんな唐突さのなかに、その国の国民性や生活センスといったものが潜んでいるように思えるとき、唐突はもっと楽しいものになる。
 さて、写真はハンガリーの首都ブダペスト市内を観光しているときに出会った風景である。ミーチャルノク現代美術館がまさに改装工事中だったのだが、その工事現場を隠すために張られたテント地に、その完成後のイメージがなんと、天地を逆にして描かれていたのだ。
 その大きさは駐車中のバスから想像していただきたい。バスの車中からこの光景に出くわし、一瞬、何が起こったのか?と目を疑った。おい、おい、倒れるぞ!気をつけろ!と思わず声が出かかったものだ。美術館の外観をこのような奇抜な風景に変えてしまう神経というか発想に思わず拍手を贈りたくなった。そして、足は美術館のチケット売り場に向かっていた。テントをくぐって入った館内ではさまざまな現代アートが展開されていた。このテントもその一環ではなかったかと思ったが、それは後の祭りだ。やられた!
 全貌をとらえるためにパノラマモードで撮影したが、写真の楽しさをも改めて教えてくれた工事現場だった。
               (お)
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