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写真は自由に撮ればいい。そこには何の制約も流儀もない。
●「撮影者の気持や感動を写真に表現する」ということが先生の作品づくりにおけるポイントなのでしょうか?
その通りですね。写真とは自分が被写体に対して感じた気持ちを記録することだと私は考えているんですが、その「記録された感情」がどれだけ見る人に伝わるかということが大切だと思います。だからその人の感じ方や考え方が、個性として作品に反映されていなければならないんです。誰が撮っても同じ写真だったらつまらないじゃないですか。
料理を作る時でも、レシピ通りに作ればおいしいというものではないと思います。それは単なる目安であって、作る人それぞれの好みでサジ加減を加えることによって、その人ならではの味になる。だからカメラ雑誌などに載っている撮り方のアドバイスなども、ひとつの目安に過ぎないんです。その通りに撮らなきゃいけない理由は全くないんですよ。
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ひとつのモチーフを見つけたら、その周りを良く観察することから始める。面白いと思う位置からひとつずつ撮っていくのが私の撮影術だ。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:SMC ペンタックスA 645 ズーム45〜85mm F4.5 絞り:f32 AE マイナス0.3EV 補正 フィルム: RVP CPLフィルター・三脚使用 撮影地:青森県十和田町・奥入瀬渓谷
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上の写真と同じ場所だが、アングルとフレーミングが変わっただけで、イメージもこのように全く変わってしまう。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:SMC ペンタックスA 645 ズーム45〜85mm F4.5 絞り:f32 AE マイナス0.7EV補正 フィルム: RVP CPLフィルター・三脚使用 撮影地:青森県十和田町・奥入瀬渓谷
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●露出の設定なども、マニュアル通りにする必要はないということでしょうか?
被写体を前にした時の自分の気持ちによって、露出の設定も変わって当然なんですよ。冬の寒々とした空気感を写真にしたいと思ったら、ノーマルな撮り方では表現しきれないでしょう。思いきってアンダーにして撮ってみると、そういう感情が移入された写真になるんです。逆に晴れやかな気分を写真に反映させたいと思ったら、オーバー目にしてみる。だから目に映ったそのままを撮るのが写真ではないんです。その風景に感じた自分の気持ちのプラス・マイナスが、そのまま露出に反映されなければならないんです。
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早朝、旅館を出ると残月が南の空に輝いていた。雲が足早に流れて、月が隠れる瞬間があった。タイミングを見計らって何枚かシャッターを押した。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:SMC ペンタックスA645 35mm F3.5 絞り:f22 AE フィルム: RVP CPLフィルター・三脚使用 撮影地:青森県十和田町・蔦温泉
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●こうしたことを踏まえて、ひとことアマチュアの皆さんへのアドバイスをいたただければと思います。
写真というのは人によって様々な見方ができるし、それぞれが自由に撮ればいいものなんです。撮り方には何の制限もないし、何々流なんて流儀はない。唯一”自分流“があるだけです。その”自分流“を大切にしてもらいたいですね。私の場合は、撮り方もすべて自分で身につけてきました。そしてアマチュアの頃、写真屋さんからほめてもらった時に始まって、ずっとこの”自分流“を貫いてきたんです。誰かに教えてもらった通りに撮っていただけでは、その人は伸びない。自分ひとりでは何もできなくなってしまうんですよ。
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忍野では二、三百人ものカメラマンが赤富士を狙っていた。そこで私は川沿いの霧氷に狙いを絞って撮影した。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:SMC ペンタックスA ★645 300mm F4 ED[IF] 絞り:f8 AE マイナス0.3EV補正 フィルム: RDPII CPLフィルター・三脚使用 撮影地:山梨県忍野村
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●最後に、丹地先生の今後のご活動について伺いたいのですが。
私は今度、CD-ROMの付いた写真集を出したんです。今やデジタル時代ですから、写真を発表する手段は今までのようにプリントや印刷媒体だけではないですよね。写真というものは元は一枚でも、それがメディアを通じて何千人、何万人の人に見てもらえるのが最大のメリットですから、こうした新しいものはどんどん取り入れて、写真表現の可能性を一層広げていきたいですね。
●どうもありがとうございました。
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車を走らせていると、一本の椎の木が孤立していた。雪がしんしんと降り続いて寂しさを助長していた。その気持ちをそのままフレーミングした。
■カメラ:ペンタックスZ1-P レンズ:SMC ペンタックスFA★300mm 4.5ED[IF] 絞り:f6.7 AE マイナス0.3EV 補正 フィルム: RDPII CPLフィルター・三脚使用 撮影地:青森県横浜町
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