日本の滝は水がきれいで、スケールもちょうどいい大きさです。周りの景色ともよく合います。
――先生は日本滝写真家協会と共著で「日本の滝1000」を出版されました。退院後の最初の撮影に行かれたのも茨城県の袋田の滝でした。滝に対する想いというのはどのようなことでしょうか?


 
退院後に袋田の滝を訪れたのは、特別な理由があったわけではないのですが、比較的手近で土地勘もあったので行きました。ただ今にして思うと、その時の自分の気持ちが滝の持つ神聖さを求めていたのかも知れません。
 日本の滝は海外のものと違い独特です。水が清らかでスケールもちょうどいい大きさです。周りの景色との調和も素晴らしいものがあります。
 そして富士山もそうなのですが、滝を単独のテーマとした写真集をまだ出版していなかったのです。ですからこれらをテーマにした写真集を作ってみたかったという気持ちがありました。


日本では「桜」「富士山」「滝」に対して、昔からその存在を崇めてきました。
私の撮影テーマである“日本の原風景”の中でも特別な存在です。
――「桜」「富士山」「滝」は被写体としても人気があります。これらに先生が今あらたに取り組まれている理由はどこにあるのでしょうか?

袋田の滝は、滝川が四段に落ちることから、別名「四度の滝」ともいわれている。四度落ちる滝の迫力は、見る人を圧倒させる。
■カメラ:ペンタックス645NU レンズ:33-55mmF4.5 シャッタースピード:1/3 絞り:F8 三脚使用 PLフィルター使用 RVP50 


 この三つの被写体は叙情的です。人間の気持ちを代弁できる力が「桜」「富士山」「滝」にはあると思います。これらはアマチュアカメラマンの方たちにも被写体として人気があります。ですから私は私なりの方法で撮影して表現し、まとめることが自分の義務のように思えます。


写真が持っている力は奥が深いと思います。
そのことに皆さんが気づいてくれることを願っています。
――写真を活用した芸術療法「フォトセラピー」が注目されていますが、先生ご自身も写真を撮ることがリハビリに役立ったとお聞きしています。こうした写真の効能についてどのように思われますか?


 
写真というものを使って人間の可能性を引き出すことができると思っています。私自身も再び写真を撮りたいという気持ちにより、リハビリにも励むことができました。自分が好きなことに集中することでいい影響があったと思います。写真にはいろいろな可能性があると思います。皆さんがそのことに気づいてくれるといいですね。それだけ写真が持っている力は奥が深いと思っています。


“地球の原風景”アイスランドの魅力を追求していきたいです。
――今後の予定についてお聞かせください。

神奈川県の三浦半島にいくと、海に浮かぶ富士山を見ることができる。しかし、天気がよく空がすっきりと抜けていないと、美しく見ることができない。
■カメラ:ペンタックス645NU レンズ:150-300mmF5.6 絞り:F22 -0.3EV 三脚使用 PLフィルター使用 RVP50


 国内では今までに訪れた所すべてをもう一度訪れてみたいです。現在の眼で見たら見え方も違ってくるはず。風景が変わって見えるはずです。
 それと身体が治ったら再び挑みたい場所がアイスランドです。以前にも撮影していますが、まだ足りないところがあります。アイスランドでのテーマは“地球の原風景”。ぜひ完結させたいと思っています。大判サイズのカメラで撮るか、デジタルカメラで撮るか、デジタルとフィルムを併用するかなど、今から想いを巡らせています。私の発見したアイスランドの魅力をぜひ追求したいと願っています。

――本日はお忙しいところをありがとうございました。

 

竹内敏信 写真展
大欧羅巴
会場:富士フイルムフォトサロン大阪
会期:2010年4月2日(金)〜4月8日(木)

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