友だちからポートレート撮影を頼まれたのが写真を始めるきっかけに。
――中学3年生の時に写真に興味を持ち始められたとお聞きしています。そのきっかけはどのようなことだったのでしょうか?


 中学3年生の夏休みの時に友だちから顔写真の撮影を頼まれたのです。理由を聞いたところ、好きになった女の子に自分の写真を渡すことが目的でした。そこで家にあったコンパクトカメラで撮影をしました。そのことがきっかけになり、写真を撮ることが楽しくなり興味を持つようになったのです。  その後、高校へ入学しましたが、新設校でしたので写真部を自分たちで創設。暗室では新しい引き伸ばし機でプリントに熱中。お陰でモノクロ写真の勉強になりました。2年生の頃からは雑誌の月例フォトコンテストにも応募を開始。やがて入賞するようになり、上位にも何度か入ることができました。とにかく卒業するまでの3年間は、ひたすら写真に熱中していました。

――その当時はどのような被写体を撮影されていたのですか?

 私の地元、松本は大自然と人々の暮らしが上手い具合に違和感なく共存している所です。週末になる度に出かけては、あらゆるものにレンズを向けて撮っていました。
 しかし、今思うとその頃から「自然と人とのつながり」を撮っていたのです。このことは今の私の撮影テーマにも通じています。やはり好きな被写体は、昔も今も“生活風景”なんです。

 


ポルトは、ポートワインの出荷港して知られ、約30万人が暮らしている。ドロウ川の畔から世界遺産に登録された歴史地区を望む。夕陽が沈み空が青く染まると、あたたかな街灯りが灯り出した。
■カメラ:Nikon D3 レンズ:AF-S Nikkor 24-70mm 絞り:F2.8G ED シャッタースピード:絞り優先オート(f10 11秒) ISO200 ホワイトバランス:オート 三脚使用 撮影地:ポルトガル

プロカメラマンを目指してカナダへ。他のカメラマンとは違う写真で勝負がしたかった。
――印刷会社で2年間勤められた後に、カナダへ渡られましたが、その理由についてお聞かせください。

耕地、入江、漁村、民家……。すべてが揃ったフレンチ・リバー村の丘は、プリンス・エドワード島を代表する景観の一つと言える。この日、大気は夕暮れまで澄み渡り、村の隅々まで見渡すことができた。
■カメラ:PENTAX 645NU レンズ:SMC PENTAX 75mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:絞り優先オート(f16 1/8 ) フィルム:ベルビア100 三脚使用 撮影地:カナダ

大昔、何度かの海底火山の爆発によってできたサントリーニ島。断崖の上に白壁の建物が連なるイア村は、島の北端に位置している。夕暮れ時になると多くの観光客が見晴台に集まってくる。
■カメラ:PENTAX K20D レンズ:SMC PENTAX-DA 16-50mm 絞り:F2.8 ED [IF]SDM シャッタースピード:絞り優先オート(f7.1 1/400) ISO100 ホワイトバランス:オート 三脚使用 撮影地:ギリシャ


 高校を卒業して東京の印刷会社に就職しました。そこでは2年間働きました。働くことがすごく楽しくて、その間は写真のことは忘れていました。しかし、辞める半年前くらいから「このままでいいのかなぁ」という気持ちを持つようになっていました。「やはり自分がやりたいことをやりながら生活をしたい」という思いが強く、自分に何ができるのかを考えた時にたどり着いたのが『写真』でした。そこで初めてプロカメラマンになることを決心しました。
 プロカメラマンになるには、まず写真を撮らないといけない。しかし、国内の風景を撮影しているプロカメラマンはたくさんいましたので、国内ではなくて海外での撮影を意識しました。海外を冒険してみたいという願望もあり、最終的に『カナダ』に決めて、100万円を持ってカナダへ向かいました。それが全ての始まりでした。

――カナダ各地を撮影されて、特に気に入られたところはありましたか?

 カナダ西側のバンクーバーから、東の大西洋側を目指して撮影を始めたのですが、撮影するには何か“テーマ”が必要だと思っていた時に出会ったのが『プリンス・エドワード島』という小さな島でした。今では「赤毛のアン」の舞台として有名ですが、当時はまだ日本には紹介されておらず、私はその美しい風景がとても気に入り、帰国するまでそこで暮らしました。
 日本に帰ってきてからは、アルバイトをして、お金が貯まるとカナダへ撮影に行くということを繰り返していました。最終的には再度プリンス・エドワード島に一年間滞在しました。その後、それまでに撮り貯めた作品で、1998年に新宿ニコンサロンで初めての写真展『ある日、凪ぐ時』を開催することができたのです。2000年には初の写真集『プリンス・エドワード島〜世界一美しい島の物語〜』も出版しました。

――カナダ以外ではヨーロッパ各地を訪れていらっしゃいますが、カナダでの撮影の違いなどはございましたか?

 自分の中では、一つのテーマでの写真展開催と写真集出版を節目として考えていました。カナダに関しては自分なりに納得するまで撮りましたので、次はもっと幅を広げたいという思いがあったので、「ヨーロッパ」を選びました。ヨーロッパはどこを撮っても“絵”になります。だからこそテーマが必要になります。それは我々プロカメラマンはもちろん、アマチュアカメラマンでも同じことです。テーマを決めることで、風景の見え方が変わってくるはずです。今まで見過ごしていたものが見えてきます。気にならなかったものが気になりだします。そうすることで撮りたいものが、よりはっきりとします。やはり、ヨーロッパでもカナダと同様、田舎の素朴な風景に魅力を感じて撮影していました。

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