【ビロード】ブナの根が幼木の影と行く秋を乗せて喜んでいた。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:EF24-70mm F2.8L 絞り:f16 −0.7 シャッタースピード:オート フィルム:ベルビア 撮影地:新潟県胎内市


【雪壁】白い道を曲がったら、民家がそこに現れた。寝転んで、久しぶりの青空を味わった。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:EF16-35mm F2.8L 絞り:f11 +0.3 シャッタースピード:オート フィルム:ベルビア 撮影地:新潟県津南町


【ブナ温床】落ち葉が水と空気を貯え、自立しながら育つ の二次林。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:EF100-400mm F4.5 −5.6LIS
絞り:f11 −0.3 シャッタースピード:オート フィルム:ベルビア 撮影地:新潟県魚沼市

文化を前面に出した新しい自然保護運動を提唱。
写真の持っている力に注目。


 その後、東京の雑誌社から『現代の俳人30人』の文庫本を出すにあたり、そこに掲載する福島潟の写真の提供依頼がありました。清水さんはその中の2人を担当することになったのですが、その1人が上田五千石氏で、新潟日報では俳句の選者も担当している方でした。
 「実はこの方には私の方から逆指名のような形でお願いしました。当時はすでに、現職である水の駅「ビュー福島潟」の館長をしていましたので、これをきっかけに福島潟に招いて俳句を詠んでもらいたかったのです。その後お願いして2回来ていただくことになりました」。
 その後、アメリカのコンピューター会社から、イメージパンフレットに写真を使わせて欲しいと依頼が来ました。
 「当時、風景写真はそんなに数多く撮っていた訳ではなく、唯一撮っていたのは、福島潟の記録用のものでした。そうしたらその写真でいいと言われ、こちらとしても、仕事柄、ビュー福島潟のオープン前に全国へPRできればと相談し、本格的に福島潟を撮るようになったのです」。
 現在、清水さんが館長を務めている水の駅「ビュー福島潟」では、自然保護活動を昔ながらの日本独自の方法で行っているのが特徴です。
 「日本には、自然を愛でながら俳句や短歌を詠む文化が継承されてきました。そこで”自然文化“を基本コンセプトにしたのです。そのひとつが先ほど申し上げた、上田五千石先生を招いての俳句会だったのです。そして、もっと文化を前面に出して、新しい自然保護運動を提唱していきたいと思いました。感性に訴える自然保護活動はとても大切です。そこで写真もその手段のひとつと考えました。写真の持っている新しい力に注目しています」。

新潟の一年間は四季ではなく”八季“。
そして季節の始まりは”雪“から。


 写真を撮り始めた当初から一貫して”新潟“を撮影フィールドとして活動してきた清水さん。
 「自然が好きで、何よりも新潟を愛しています。自分は”写真で新潟をPRする営業マン“と思っています。昔から親交のある竹内敏信さんからは、せめて隣の福島県や山形県も撮影したらどうだとも言われましたが、新潟にこだわり続けました。新潟は季節の表情が豊かなんです。やはり長く続く冬の雪があるから、その後に一気にやってくる春には格別な思いがあります。このように感じるようになったのも、風景を撮るようになってからですね」。
 日本では一年を”四季“でとらえるけれども、季節が鮮やかな移り変わりを見せる新潟には”八季“あると清水さんは語ります。
 「新潟の季節は雪から始まると考えています。白く輝く一面の銀世界はキャンバスだと思います。そのキャンバスに絵を描くように、だんだんと色が付けられていきます。そして、最後は燃えるような赤の世界が一気に白くなる。それが新潟の潔さです」。
 心から地元の新潟を愛する清水さん。次の素晴らしい作品も、必ず新潟から生まれて来ることでしょう。

PROFILE 
しみず じゅうぞう
1949年新潟県生まれ。「新潟県」をライフワークに、写真や文筆活動を通して「人や自然」の素晴らしさを全国に情報発信している。1981年、写真展「山古志の人びと」銀座ニコンサロン。1983年、写真展「越後おかぶりの女たち」銀座ニコンサロン。1985年、写真展「阿賀野川流域の人びと」銀座ニコンサロン。1993年、写真展「佐渡の女だっちゃ」キヤノンサロン銀座・札幌・大阪他。1993年、写真集「越佐の女」(新潟日報事業社)。1995年、写真集「風そよぐ潟」(文一総合出版)。1997年、写真展「 森然」新宿パークタワーギャラリー・1。1997年、写真集「BUNA」(青菁社)。2002年、写真展「越後雪賦」新宿パークタワーギャラリー・1。2005年、写真展「竹くらべ」銀座フジフォトサロンなどがある。


清水重蔵写真集


「越後雪賦」
265×258mm 119ページ
定価2,625円(税込み)

 

〈お問い合わせ先〉
新潟日報事業社 TEL.025-233-2100

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