カメラのキタムラ
Vol.49 2004 SUMMER
特集 写真家 丹地敏明氏  
サバンナを行くチーターの親子。母親と同じぐらいにまで成長した子供のチーターは、ハンティングの時には有力な戦力となるが、子供が一人前になるまで成長することは、自然界ではとても大変なことなのである。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EL600mm 絞り:開放f4 シャッタースピード:オート フイルム:RVP 撮影地:ケニア マサイマラ動物保護区
アフリカ大陸には、何種類かのシマウマが生息しているが、種類によって少しづつ縞模様が違っている。夕刻のひとときバーチャルシマウマが水場を訪れて、喉の渇きを癒している。
■カメラ:ライカR6.2 レンズ:テリート400mm 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/500 フイルム:PKL 撮影地:ナミビア エトーシャ国立公園



写真はもちろん好きだったけど、とにかく大型獣がいるところを歩いてみたかった。

―――吉野先生といえば、初期の頃からアフリカの大自然に関する写真を多く発表していらっしゃいますが、写真をはじめられるきっかけというのは何だったんでしょうか?

 もともと高校生の頃から野生動物に関するノンフィクションの本を読むのが好きだったんです。
 テレビで「野生の王国」などサファリのドキュメンタリーをよく放映していたでしょう?
 国内にいる動物ではなく、サバンナの、「大型獣がいるところを歩いてみたい」という気持ちが強かったのです。ただ、興味はあってもすぐ簡単にいけるような時代ではなかったですからね。
 同時に写真そのものも好きでした。今思うと、写真そのものよりもカメラが好きだったんじゃないかと思うのですが。
 そして東京の桑沢デザイン研究所に通いましたが、その頃から動物の写真を撮りたいと考えていました。
 はじめの頃は動物のイラストを描こうと思った時もありましたが、やはり必ず現場に行って、生で被写体と向き合わなければ作品をものにできない写真に、より魅力を感じたのです。それで写真家になろうと思ったわけです。
 卒業して印刷会社のデザイン室で2年ほど勤めましたが、あるとき、様々な作家の作品貸し出しの管理をしている、学生時代の同級生から声をかけられたんです。
そのライブラリーには当時、秋山庄太郎先生などが作品を預けていたんですが、その友人がこう言ったんですよ。
 「田中光常先生というカメラマンが、デザインができて動物が好きなアシスタントを探している。お前しかいない」って。
 私も、その頃田中先生がアサヒカメラで連載をしているのを知っていましたし、動物の写真に関連して働けたらいいだろうなと思っていましたから、喜んで先生のところへお世話になったんです。
それが、この世界へ入るきっかけでした。

―――
動物写真では大御所の田中光常先生の事務所に入られて、いよいよ海外への撮影に同行されたわけですか?
 実際、田中先生の事務所へ行ってみたら、ペットの撮影程度なら手伝いをさせてくれましたが、アシスタントとは言うものの、作品貸し出しの事務でした。
 先生は海外の撮影で留守にしていることが多かったですが、そういう場合は奥さんしか連れていかなかったんです。
 僕も連れていってほしいとは思っていましたが、当時1ドル360円の時代ですし、海外へ行く人はまだ少なく、ようやく一部の写真家と画家が行きはじめた頃でした。
 それでも私は先生が撮影した全カットに目を通しましたから、直接指導していただくことはなかったものの、それらを見て自分なりに勉強できたことは、とても良かったと思います。

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