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カメラのキタムラ
Vol.47 2004 WINTER
特集 写真家 丹地敏明氏  
被写体は身近なところにもたくさんある。
観察して発見することが大事。
【曲線美】何回も降り積もった雪が渓谷の岩を包み込み、女性的な曲線を描いて存在し、それらが冬の光で立体的に美しい姿となって、「ここから撮ってよ」と言っているような気がした。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:FA645 45〜85mmズーム F4.5 絞り:f22(-0.3EV補正) フィルム:RVP C-PLフィルター 三脚使用 撮影地:福島県裏磐梯中ノ沢川
【姉妹】毘沙門沼を周回していて踏みつけそうになった可愛い冬枯れの花である。写真家は四方八方にアンテナを張り巡らしていなければ、撮影できたものも撮り逃してしまう。雪の下から顔を出した枯れた花に姉妹を連想して撮影した。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:A645 120mmマクロ F4 絞り:f11 フィルム:RDPII C-PLフィルター 三脚使用 撮影地:福島県裏磐梯毘沙門沼
最近のアマチュアは、あまりにも多くの情報に接しているため、自分の意志を見失いがちです。

―――写真教室の講師を務める機会が多い先生から、アマチュア写真家に対する感想・アドバイスはございますか?
 ひとことで言えば、今のアマチュアは悩んでいます。
 それは、あまりにも撮影技法などの情報が氾濫しているために、写真を撮る時は「ああしちゃいけない」「こうしちゃいけない」と、規制することが頭にインプットされて、いざ、写真を撮る段階になっても素直にシャッターを押せない人が多くいるように思えます。
 もっと自分に正直に、自分の写真を撮ってもらいたいですね。

―――自分の写真を撮るということは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?
 誰でも写真を撮りはじめた頃は、楽しんで撮っていたはずです。それは自分が好きなものを、好きなように撮る。他人から何と言われようと構わない、自分が満足すればいい。その気持ちをみんな忘れているようです。
 だから、「自分が家元なんだ」、と楽な気持ちで好きなように撮ることだと思います。
【光彩】薄い氷に光が通過するとスペクトルが現れる。肉眼で見える時もあるが、それをより強調するテクニックとして偏光板とC-PLフィルターを使う。同じ屈折はないので独自の視点で狙うと楽しい。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:A645 120mmマクロ F4 絞り:f11(-0.7EV補正) フィルム:RVP C-PLフィルター+偏光板 三脚使用
写真というのは、不思議なことに撮っているときの感情が表れる。

―――そのような中で、先生から見ていい写真とはどのようなものなのでしょうか?

 それは平常心で撮ったものだと思います。自然風景などでは、最初にいいと思ったものだけを撮る。構図だとかを考えはじめ、周りに余計なものを入れてしまうと、肝心の主題がぼやけてしまうことがよくあります。
 アマチュアの方が勘違いされるのは、苦労して撮った思い入れの強い写真が、本人的にはいい写真だと思っていること。でも、そのような写真には苦労して撮ったことが表れてしまいます。楽しさが感じられないのです。最初に肉眼で見たものを、素直に切り撮ることで自分の写真となり、それが私の言うところのいい写真だと思います。

【嵐の痕】2、3日前湖面がかなり荒れたと見えて7〜8メートルの氷柱が雑木から下がっていた。上空は曇天だったが西の稜線に少し青空が見えていた。必ず夕日が照ると予測しカメラを構えた。
■カメラ:ペンタックス645NII レンズ:FA645 45〜85mmズーム F4.5 絞り:f32(+0.3EV補正) フィルム:RVP C-PLフィルター 三脚使用 撮影地:青森県十和田湖小畳石
―――自然風景写真を撮る人が増えている中、マナー違反などのトラブルを耳にすることがありますが、このことについて先生のご意見は?
 アマチュア写真愛好家が増えていることは、とてもいいことだと思います。しかし、マナーというものが欠落している人が多すぎます。特に自然風景写真を撮るのであれば、自分が自然の中にいることを忘れないで欲しいものです。
 先日も、ある自然公園の監視員の方が、「最近、写真家の方が多く来ていますが、自然を保護するための木道から降りて、平気な顔で三脚を立ててる人がいるんです」と嘆かれていました。
 私も近くの公園で撮影することがありますが、そこでも立ち入り禁止区域内で写真を撮っている人がいるので、よく注意をしたりしました。
 でも、注意するとこちらも気分が悪くなります。そうすると、不思議なものでその時の気持ちが写真に表れてしまうんです。だから、最近はその公園には行かなくなってしまいました。

【孤独】一本の木が雪に埋もれそうになっていた。豪雪地帯・松之山の風景である。昼間のトップライトは風景に向かないと言う人もいるが、トップライトだからこそ雪の質感や立体感がでた。
■カメラ:ペンタックス67II レンズ:M★67 300mm F4 絞り:f32(+0.3EV補正)フィルム:RAP C-PLフィルター 三脚使用 撮影地:新潟県松之山町
【初雪の朝】早朝ではないが逆光線に浮かんだ稲の切り株の上の綿帽子のリズムが美しく立体的に眼に飛び込んだ。そのままをフレーミングした。難しい露出なので確実に残すために段階露出を多めに撮影した。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:FA645 45〜85mmズーム F4.5 絞り:f32(-0.3EV補正) フィルム:RVP C-PLフィルター 三脚使用 撮影地:新潟県松之山町
自分の足で探し歩いて、発見するよろこびを味わって欲しい。

―――先生は写真教室などで、「自分の足下をよく見て歩きなさい」、とアドバイスされていますが、それはどのようなことでしょうか?

 撮影会の講師として参加することもあるのですが、例えば滝を撮りに行く撮影会だと、急いで滝壷の近くまで行って、滝の写真だけを撮って終わりにしてしまう方が多くいます。それはそれでもいいのですが、その周りや、歩いて行く道の途中などを注意深く観察してみると、思わぬ発見があったりします。
 そして、自分で気に入ったものを見つけたら、角度を変えて撮ったり、時間帯を変えて撮ったりすることでも、新しい発見があります。
 だから、私は撮影に行くと、途中で次々にいい被写体を見つけてしまい、目的地に着けないこともあるんですよ(笑)。

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