まじめなポートレート講座
第三回

 しかし、いかなる条件でもきっちり露出を測ることが出来るということは、カメラマンの基本技術として欠かせないことなのだ。ただきっちり露出を測るというのもけっこう難しい。いまは自動段階露出という便利な機構が付いていて、自動的に露出を変えながら撮ることが出来るから、風景のように変化しない景色だったら、いっぱい撮っておけばどれかは露出が当たる。しかし、ポートレートというのは被写体が動くモノだから、露出を変えながら撮っても、露出が合っていても、表情が良くないとか、表情が良くても露出が暗いというようなことがよく起きるのだ。結局ポートレートの場合はきちんと露出を測って、同じ露出で撮影し、表情やピントのいいものを選ぶという方法になる。もちろん究極のポートレートはたった一回のシャッターで仕上げるという方法もないではないが、それは超写真名人だけに可能な方法であって、ダレでもができる方法ではない。まあ一発で完璧な写真が撮れるというのは写真を撮っている人にとっては夢ともいえることだが、じょじょにでもそれに近づきたいというのが現実なのだ。
背景が明るい条件ではカメラの露出計は背景に引きずられて人物が暗くなりやすい。多分割測光ではそういった条件でもかなり補正されるようになっているが、きちんと合わせるためには、入射式露出計で測るのが一番いいのだ。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:Ai135mm F2 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/250秒
 でっ、理想的なポートレートの露出を得るためには、まず入射式の露出計を使うことが肝心なのだ。露出計はカメラに内蔵されているじゃないか!っと思う人が多いはずだ。確かにカメラには露出計が内蔵されている。また、多分割測光なる優秀な露出計も付いている。確かにネガカラーで撮影している分には、多分割測光でもけっこう露出が合うような気がする。ただしネガカラーという前提が付いている。ネガカラーフィルムというのはプリントするときに調整するから、それほどきちんとした露出で撮らなくても、まあまあ見られるようにプリントできるのだ。

 しかし、リバーサルフィルムを使うと、撮影した結果がダイレクトに現れるから、カメラの露出計のままではダメだということに気づくはずである。その理由は、カメラに内蔵されている露出計は基本的に反射式露出計であるから、逆光の影響や、モデルが着ている洋服の色に露出が左右されやすいのだ。特にモデル撮影の場合は、光が直接顔にかかるような条件より、逆光気味の光で撮ることが多いから、入射式露出計で測ることが大切なのだ。
背景には暗い部分と明るい部分がある。カメラの露出計では悩む部分だが、入射式露出計では、人物に当たっている光だけを測るので迷わず測光する事が出来る。
■カメラ:コンタックスAX レンズ:プラナー85mm F1.2 絞り:F1.7 シャッタースピード:1/125秒
背景はかなり明るい条件で、カメラの内蔵露出計では完全に人物が露出不足になってしまうところだが、入射式露出計で測ることによりきちんとした露出で撮影する事が出来た。
■カメラ:コンタックスAX レンズ:プラナー85mm F1.2 絞り:F2 シャッタースピード:1/125秒
ここでは明るい感じに仕上げたかったので、モデルの左頬あたり(やや影の部分)で露出を測った。入射式露出計は光球の向きで露出が変わるので、露出計の位置がどこで計ればどういう露出になるのか把握するためには多くの経験が必要だ。
■カメラ:ペンタックスMZ-S レンズ:77mm F1.8 絞り:F2.4 シャッタースピード:1/125秒
 
 
 
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