まじめなポートレート講座
第二回

 でっ、明るいレンズを手に入れたら、まず絞り開放で撮ってみよう。50ミリF1.8でも、MFでのピント合わせというのはけっこう難しいということに気づくはずだ。大切なのはピント合わせが難しいということに気づくことで、AFで簡単にピントを合わせていては、ピント合わせが難しいということにはなかなか気がつかないのだ。難しいことに気がつくということは、そこで嫌気がさしたり、やる気がなくなる人もいるだろう。まあ別にたかが写真だから、難しいことに必死になる必要は全くないのだが、難しいと思うと、何とか頑張って克服しようと思う気も出てくる。もし頑張る気持ちになれなかったら、写真は下手のままだし人間的向上もありえない。ともかく写真は難しいことを克服していくことにより、おもしろさも深まっていくのだ。
大口径レンズの大口径の理由は、必ずしも絞り開放で使うことではなく、最大の画質が得られるように少し絞った撮影を行うために、余裕を持たせているといってもいい。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:85mm F1.4 絞り:F2 シャッタースピード:1/125秒
カメラにしっかり体重をかける気持ちでカメラを構える。そのぶん三脚もしっかりしたモノを選びたい。
ポートレート撮影では浅い被写界深度のレンズを使うため、ピンボケを防ぐために三脚を使いたい。ただし、感覚的にはあくまでも手持ち感覚で撮影する。
雲台のパン棒は基本的にゆるめておく。そこが風景の三脚の使い方とは違うところだ。
 サンダーが初めてピント合わせが難しいということに気がついたのは85ミリF1.2レンズを初めて使ったときだ。借り物だったので軽い気持ちで絞り開放による撮影。ファインダーではしっかりピントを合わせたつもりだったが、フィルムを現像してみると見事なピンボケ。なぜか? その理由は自分で85ミリF1.4レンズを買って、真剣に使うようになるまではわからなかった。基本的には85ミリF1.4クラスのレンズになると絞り開放では被写界深度は極端に薄くなる。ピントを維持できる範囲は紙のように薄くなるのだ。そのためしっかりピントを合わせたつもりでも、人間の体は常に微妙に動くから、シャッターを切る瞬間はピンボケになってしまうというワケなのだ。
 この真実にはプロカメラマンでも意外とちゃんと理解していないことが多い。
「85ミリF1.4なんて、絞り開放ではピントは合わないモノなのさ。」
などと平気でいってしまうプロカメラマンがけっこういるのだ。そのため絞り開放では撮ってはイケナイ。やっぱりF4ぐらいまでは絞らないとちゃんとは撮れないのだなどという人もいるぐらいである。
撮影距離が遠くなればなるほど被写界深度は深くなるが、85ミリF1.4クラスになるとそれほど増えない。このぐらいの撮影距離(人物のほぼ全身ぐらい)になるとピント合わせもやりにくくなるし、撮影には一番神経をつかう。実はアップのほうがピント合わせはやりやすいのだ。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:85mm F1.4 絞り: F2.8 シャッタースピード:1/250秒
 
 
 
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