まじめなポートレート講座
第一回 新連載

 ポートレートの場合、基本的に直射日光が顔に当たるような条件では撮りたくない。なぜなら直射日光が顔に当たると醜い影が出てしまうからだ。影を避けるためには、基本的に日陰にモデルを立たせることがポイントだ。あえて夏の雰囲気を出すために直射日光が顔に当たるように撮るときもあるが、そういうときは出来るだけ影が最小になるように、モデルの顔を太陽の方向に向かせるしかない。つまり、直射日光が当たるような条件では、ポーズが限定されてしまうのだ。これでは撮影していても楽しくない。

 では日陰ではどのくらい明るさがあるのか、周囲の環境によるが、日陰ではISO100のとき、1/250秒でF2.8ぐらいしか無いときが多い。これは当然よく晴れている日だ。周囲が反射光(つまり天然のレフ効果を持つ場所)を出すような環境なら、もう少し明るくなるが、ポートレートに適した光というのはそれほど明るくはないのだ。
〈左〉割と明るい日陰、ポートレートを撮るためには理想的な条件だ。絞ることでピントはより引き締まりシャープな描写になった。F1,4のレンズだからといって必ず絞り開放で撮る必要はないのだ。レンズ性能を発揮させるためには少し絞ることがベストなのだ。そのためにF1.4の余裕があると考えるのが正しい。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:85mm F1.4 絞り:f2.8 シャッタースピード:1/320秒
〈右〉いわゆるピーカンの日だったので、ポートレートに理想的な光の中で撮影しても十分撮ることが出来た。ただボケはやや汚い。
■カメラ:ミノルタα-7 レンズ:24〜105mm F3.5〜4.5 絞り開放 絞り優先AE
 シャッター速度は人間の表情をきちんと捕らえるためには出来るだけ早いほうが良い。もちろん明るさが足りない日は、ブレを防止するためにモデルが出来るだけ動かないですむようなポーズを考えるが、基本的にはシャッター速度は、出来るだけ早いほうが良い。

 そうなると露出のコントロールは絞りだけで決めることになる。開放F値の暗いレンズでは当然ながら開放F値以上に絞りを開けることは出来ないから、必然的に大口径レンズが有利になる。ズームではF2.8以上に明るいレンズはないから、85ミリF1.4とか135ミリF2といったレンズがポートレート向きのレンズということになる。その辺のレンズになると、ピント合わせも難しくなるし、ズーミングも出来ないから、使い方は当然難しくなる。それゆえに初心者に単焦点レンズを勧めると、うまく使えないからといって、不満の声が大きくなるが、簡単に撮れる方法に頼っていると、それ以上撮影技術の向上はないから、難しいレンズを使いこなすことに集中して欲しいのだ。
 開放F値がF3.5〜4.5のズームレンズでも条件の良い日なら確かにポートレートも撮ることは出来る。ISO400クラスのネガカラーもだいぶ良くなってきたから、高感度フィルムを使えば、レンズが暗いことはそれほどマイナスにはならない。ただし現在実用的なのはISO400までで、ISO800になると作品と呼ぶには寂しいものになってしまう。
ポートレートを撮るには最悪の条件で撮影したもの。雨が強く降っていたので、濡れないように、大きなひさしの下で撮影。ズームでは撮影不可能だが、大口径の威力で撮影できた。大口径レンズを使いこなすにはピント合わせの技術など総合的なレベルの高さが必要だが、使いこなしていくヨロコビは大きい。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:85ミmm F1.4 絞り:f2 シャッタースピード:1/30秒
 
 
 
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