特集

■「今」という時代を生きている、
その証としての作品が「時代を認識した作品」です。
●竹内先生は、フォトコンテストの批評で時折「時代を意識した写真」「時代を認識した作品」という表現を使っておられますが、これは具体的には、どのような意味なのですか?

 現代という時代を認識して撮られた写真という意味です。人間、社会、子供、自然と写真の対象は様々ですが、何を写真の対象としていても、その風景は今しか撮れないものですね。同時に写真を撮っている本人も「今」という時代、現代を生きています。

 私が「時代を認識した写真」を評価しているのは、その「今」しか記録できない風景を撮っているのだということを、写真を撮る人にもっと認識してほしいし、撮影している本人が現代を生きているのだということを写真表現にも反映させてほしいからなのです。

 具体的には「現代的な表現方法」を意識してもらいたいのです。せっかく「今」の風景を撮っているのに、何十年も前の構図やアングルで何の工夫もなく撮っていたのでは、なんにもなりません。今という時代を意識し、認識することで、皆さんにもっと写真の素晴らしさをわかっていただけると思いますし、それが皆さんの写真の撮り方も変えていくと思います。
様々な広葉樹が、様々な色合いとなる。その複雑な風景を一番的確に捉えるのが、写真である。いい紅葉写真は、いい色合いを見つけることが第一歩。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:ミノルタAF 28-70mm F2.8 シャッタースピード:1/60 絞り:AE+2/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:北海道上士幌町
ちょっと観光写真的だったが、草屋根の民家を入れて、日本の秋の風景らしくまとめたもの。生活の中での紅葉風景も、勿論日本の秋として美しい。
■カメラ:キャノンEOS-1 レンズ:EF300mm F2.8L シャッタースピード:1/60 絞り:AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:岐阜県高山市
●アマチュアの場合は、目の前の景色が美しいから、あるいは子供の表情がかわいいからといった、一般的な意識で写真を撮っているように思うのですが、たとえばキタムラのフォトコンテストに応募される作品には、そうした時代を認識した傾向、「今」を記録しているという意識は表れているのでしょうか?

 確かにアマチュアの応募作品では表れづらいですね。しかし審査する私の方が意識していますから、上位入賞した作品には時代認識が反映された作品が多くなってきます。

 もちろん審査する際には撮影技術の素晴らしさも評価していますよ。しかし、それ以上に「今を記録している」「今という時代を生きている」という時代認識の有無を重要な審査基準にしています。つまり作品の表現方法を重視して評価しているということです。構図やアングル、トリミングなどに現代風の見せ方、工夫がされているか、ということですね。

 特に上位作品の場合はどれも上手な作品ばかりが残りますから、撮影技術としては甲乙つけがたくなります。それだけに時代認識が感じられる作品の方が評価としては高くなるのです。
カエデやその他の、落葉広葉樹の葉や枝の部分のみをクローズアップする。全体を捉えることと、部分を捉えることで紅葉風景を引き出してゆく。
■カメラ:キャノンEOS-1 レンズ:EF300mm F2.8L シャッタースピード:1/60 絞り:AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:長野県信濃町
 また、現代という時代を認識した作品、表現方法が新しい作品を選出することは、結局、写真の新たな可能性を評価していることになりますから、写真の価値を高めていくことにもなると思うのです。ですからこの評価基準をもとに審査をするということは、私の重要な仕事であり、責任でもあると思っています。

 プロの写真家の作品を真似るのではなく、アマチュアだからこそできる表現を目指してほしい。
もどる すすむ

当サイトに掲載されている写真・テキスト等を無断で複製・転載することを禁じます。