日常風景ウォッチング
物件が発している面白さを感じ取るための、
視点をもつことが大切なんです。

 路上観察の魅力をひとことで言えば、今まで見えなかったものにいきなり気がついた時の、「目からウロコが落ちる瞬間」っていうのが、たまらなく気持ちいいってことなんです。だから自分自身が刺激を受けて、気持ちがリフレッシュできるんです。

 放っておくと人間ってものは、だんだんひとつの考えに凝り固まっていきがちでしょう。それが新しい発見をすることによって、また弾けてゆくというか…。あらかじめ資料を調べたりとか勉強したりというものではないんで、どんなモノに遭遇するか全くわからない。だから「わっ、こんな所にこんなモノがあった!」っていう、初めて見るものへの新鮮な驚きがあるんですよ。それが路上観察の一番の醍醐味なんです。


『縞模様の植木』違う種類の木をサンドイッチにして、縞模様に植えられた珍しい植木。どちらかが紅葉する木だったりすると、さらに色の変化が楽しめる。埼玉県の川越にて。

『植物の擬態』弱い昆虫のように、植物も何かを真似して身を守る。これは人魚が2匹ジャレているにしては下半身が重い。先の方を尻尾と見れば答えは明白、エビフライ。香川県の多度津町にて。

 路上観察といっても、街の中すべてをくまなく歩くわけではないので、ただ歩き回ってさえいれば、誰でも同じように面白い物件を発見できるというものではないんです。やはり観察する側の視点の持ち方とか、勘とか運とかいうものも必要なんですよ。そういう意味では、のんびり歩いているようでも結構パワーが要るものなんです。

 大抵はひとついい物件が見つかると、不思議と次々に面白いモノが見つかるんですよ。その理由のひとつは、そういうモノが多いゾーンに入ったということもあるんでしょうが、そんな時は自分の方も、目に入るモノを良く感じるようになってきているんです。ある物件を見ても、自分が面白いと感じて心を留めることがなければ、写真に残すこともありませんから。やっぱり物件が発している面白さを感じ取るための目をもつことが大切なんです。


『愛の潜望鏡』物も人と同じで、二つ並ぶとその間に愛があるような雰囲気が生まれる。これは“愛の潜望鏡”が話し合っているところ。いらかの波が、海になっている。埼玉県の熊谷にて。

『海底2万マイル』この光の鮮やかさ、つややかさは地上のものではない。液体洗剤型潜水艦に乗り込んだシダたちが深海に達すると、背後からは巨大なタコが…。香川県の坂出にて。

『壁のテレビ、窓のテレビ』ただのブロック壁みたいだけど、よく見ると枠がみんなひと昔前のブラウン管の形をしている。この窓自体もどことなくテレビに見える。香川県の高松にて。