日常風景ウォッチング
「路上観察」の達人赤瀬川 原平氏 [2]

赤瀬川 原平氏 あかせがわ げんぺい 1937年横浜生まれ。画家・作家。60年代は前衛芸術家として活動し、その後イラストレーターとして活躍。81年には『父が消えた』(文春文庫)で芥川賞を受賞。著書は『超芸術トマソン』(白夜書房・ちくま文庫)、『東京路上探険記』(新潮文庫)、『千利休・無言の前衛』(岩波新書)、『名画読本』(光文社)、『正体不明』(東京書籍)など。



 うっとおしい梅雨の季節が終わり、太陽がギラギラと輝きはじめたら、いよいよ本格的な夏が到来。皆さんも海へ、山へとレジャーに出かけたり、懐かしい故郷へ帰省されるのを心待ちにしておられるのではないでしょうか。
 そんな旅の記念撮影用にカメラを持っていったなら、目的地でのスナップだけでなく、道すがらの何げない光景にもレンズを向けてみてはいかがでしょう?その土地ならではの特徴的な建物や、「おや?」と思うような面白い被写体を発見できるはずです。
 こうした日常風景に目を向ける楽しみを、“「路上観察」の達人”にご紹介していただくこのコーナーも、いよいよ今回が最終回。前号に引き続き赤瀬川原平氏にご登場いただき、ご自身の実践している「路上観察活動」に関するお話をうかがいました。

『蓮』香川は瓦屋根が目立つ土地だが、この蓮を型どった瓦は遠くから見ると鶴に見える。蓮は仏教に関係が深いので、お寺の装飾によく用いられている。香川県の土庄町にて。
 赤瀬川原平氏は、知る人ぞ知る『路上観察学会』の中心メンバー。その『路上観察学会』とは、赤瀬川氏のほか、この連載の前半にご登場いただいた南伸坊氏、「東京建築探偵団」として近代建築の実地調査をしていた東大教授の藤森照信氏、古い建物のカケラを収集していた一木努氏、マンホールのふたのデザイン収集をしていた林丈二氏らにより1986年に発足。その後新たなメンバーも加わり、「通常は景観とはみなされない看板や貼り紙、廃屋などを”見立て“によって楽しむ知的な遊び」を全国各地で実施しています。

 前号のこのコーナーでは『路上観察学会』発足の経緯や赤瀬川さんにとっての路上観察の魅力などについてお話を伺いましたが、今回はその続編として、ご自身の「路上観察作法」や活動の中での面白いエピソードなどをお聞きしました。また、赤瀬川さんが今までの活動の中で撮られた路上物件写真の中から、選りすぐりの傑作の数々を誌上でご紹介させていただきましたので、ご本人の軽妙なコメントと合わせてお楽しみください。