日常風景ウォッチング

 こうして撮ってきた物件写真を出版物などで発表する時に、我々がその物件に対して感じた面白さを見る人にも伝えるには、やはり文章によるちょっとした解説や物件のネーミングが必要なんです。

 でも、これが意外に難しいんですよ。あまり言い過ぎては解釈の押しつけになってしまうし、言い足りないとポイントが伝わらなくなってしまう。路上物件の場合、そのちょっと付け加えるコメントのサジ加減に結構苦労してるんですよ。路上観察活動をした後に、学会の仲間たちと成果の発表会を開くんですけど、その時にダジャレなんかを交えながら、それぞれの物件についてああだこうだと言い合うんです。気の利いたコメントや傑作ネーミングっていうのは、そんな中から生まれてくるコトが多いですね。


『竜の歩道橋』埼玉は歩道橋大国。この歩道橋はジェットコースター化して、まるで”竜の舞“みたいだ。埼玉県の浦和にて。

『五本脚の招き猫』アレッ?脚が前と後ろに二本ずつあるのに、招いている手がもう一本!“招き専用の手”だね。埼玉県の熊谷にて。

 それともうひとつは、何となく面白いなと思って写真を撮っても、この時点ではまだ自分の中で、その物件に対する明確な視点が定まっていない時も往々にしてあるんです。その面白さの本質が、自分でもはっきりとはつかみ切れていないんですね。それにコメントを付けて言葉で表現することによって、その面白さがだんだんつかめてくるんですよ。

 「とにかく面白いと思った」では、見てくれる人に対して説得力がないんで、その面白さを言葉にしてみると、「あ、そこが面白かったんだ」ってことが、自分でも確認できるんです。また、見る人によって面白いと感じるポイントは多少違うと思いますから、みんなで批評し合うことによって、同じ物件に対して全然違った見方が出てきたりもするんです。そういう意味でも、物件写真のコメントっていうのは重要なんです。


『←←←』あの矢印がなんとも念入りすぎる。「そんなに言われなくてもわかってらい!」と怒り出す人もいそう。埼玉県の加須にて。

『ぶっ切れた階段の歩道橋』道を横切っていたらいきなりこれがあって、つい写真に撮っちゃった。歩道橋というよりも、とっさには「ぶっ切れた階段」があると思った。埼玉県の浦和にて。

『駐車禁止だけど』”駐車禁止“といいながら、”一時駐車は…“というのは矛盾している。禁止だけどせめてものお願いなんだね。埼玉県の大宮にて。