フォトワールド

「ペット」を撮る

アメリカン・ショートヘア 「アメリカン・ショートヘアー」庭でのんびり遊びながら、ジャレながらも、猫の持つハンターとしての習性が顔を出す。その機敏さ、体のしなやかさを思い描きながら撮った。

■カメラ:ニコンF4 レンズ:105mm 絞り:f8 シャッタースピード:1/125 フィルム:RDPII 三脚使用

 増田氏の場合、作家としての作品制作のほか、図鑑に掲載する図説資料的な写真や、さらにペットフード関係の商業写真など幅広く手がけている。「図鑑に使用する写真の場合は、やはり犬や猫の種類がはっきり分かるような撮り方をします。例えばシベリアンハスキーとアラスカンマラミュートという2種類の犬は、全く同じような毛色をしているんです。違いといえば、ハスキーは尻尾が垂れているのに対してマラミュートはカールしていること。だからこうした特徴的な部分をしっかりとらえていないと、図鑑に掲載された時に見分けがつかなくなってしまうんです」と増田氏。また、作品表現の場合の撮り方をお聞きすると、「まず目にピントを合わせるのがポイントです。目の輝きや表情で、犬や猫の可愛らしさを最大限引き出すような撮り方を心がけています」。同じペット写真でも、その使用目的によって、撮影のポイントは違ってくるようだ。
バーニーズ・マウンテンドッグ 「バーニーズ・マウンテンドッグ」顔の白い部分(ブレイズ)がシンメトリーに見える面白さと、人に何かを訴えるような瞳を表現できるよう、正面からとらえた。

■カメラ:ニコンF4 レンズ:105mm 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/125 フィルム:RDPII 三脚使用

 さらに機材的な面で増田氏のペット撮影に欠かせないものは何かとお尋ねすると、それは「三脚」だと彼は答えてくれた。「細いヒゲの一本一本までくっきりと描写したいので、手ブレは禁物なんです。それに三脚を使えば、地面に近い位置にカメラを据えて、犬や猫の目の高さに合わせて撮ることができるんですよ」。また、レンズでいうと、増田氏の場合は180mmと200mmが基本だが、「被写体に多少動かれてもピントが合いやすい」「撮影者が遠くから狙った方が動物に警戒されない」といった理由から、300mmを使用することも多いという。そしてこの重たい望遠レンズを支える上でも、三脚が有効なのだ。
シェットランド・シープドッグ 「シェットランド・シープドッグ」撮影者である自分の存在が薄くなるように、あえて犬たちの行動を冷たい態度で無視し、自然に親子で遊び始めるのを待って撮影を開始した。

■カメラ:ニコンF4 レンズ:200mm 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/250 フィルム:RDPII 三脚使用

 すでにお気付きの皆さんもいらっしゃると思うが、カメラのキタムラ主催の「ペット・動物ふれあい写真コンテスト」で、増田氏は昨年より審査員を務めておられる。そこで今年も審査を担当していただく立場から、応募者へのアドバイスをお願いすると、「技術的に優れた写真よりも、“優しさや愛情あふれる一瞬をうまくとらえた作品”“人とペットとの一体感が表現された作品”を期待したいですね。ペットが一番いい表情や姿を見せる相手は、やはり飼い主自身なのですから」と増田氏。読者の皆さんもペットを題材にした傑作写真が撮れたなら、ぜひ今回のコンテストにチャレンジしていただきたい。
ますだ かつまさ

1945年東京都生まれ。愛犬雑誌のカメラマンを経て、現在フリーの動物カメラマン。主な作品に『NHK趣味百科“イヌとつきあうために”』(日本放送出版協会)、『パノラマ図鑑“ネコ”』(講談社)がある。富士写真フイルム、山と渓谷社等のカレンダーでも知られる。アイメイト(盲導犬)のボランティア活動にも参加し、自ら犬、猫の繁殖・育成に関わっている。