フォトワールド

「ペット」を撮る

犬や猫たちの可愛さを伝え、人と動物との絆を育みたい。

増田勝正氏〈写真家〉

セント・バーナード 「セント・バーナード」大型犬の仔犬ならではの、のんびり感を順光でとらえた。
空の青さや草のグリーンの広大な感じを、ベルビアを使って表現。

■カメラ:ニコンF4 レンズ:200mm 絞り:f5.6
シャッタースピード:1/250 フィルム:RVP 三脚使用

 犬や猫は、今や単なる愛玩動物ではなく、家族の一員=コンパニオン・アニマルとして、我々人間にとってより大きな存在となりつつある。こうしたペットをお飼いの皆さんなら、最も身近な写真モチーフとして、カメラを向ける機会も多いことだろう。

 今回お話を伺った増田勝正氏は、かつて雑誌『愛犬の友』の専属カメラマンをしていたことがきっかけでフリーの動物写真家となり、犬や猫の写真をもう30年近く撮り続けている。「自分にとって犬や猫は、被写体というよりも、もう生活の一部ですね」と笑う彼の自宅には現在数十匹ものペットが飼われているそうだ。増田氏の場合、普段から愛犬家・愛猫家とのネットワークを持ち、必要に応じてモデルとなるペットを借りる方法もとっているが、やはり借りた動物よりは、自分が飼って慣れ親しんだ動物の方が、警戒心がなく自由に撮れるので、常に数種類の犬・猫を自前でキープしているのだ。

 最近は我が国でもペットブームだと言われるが、「流行やファッションのような感覚で動物を飼う人が多く、本当に動物を愛するペット文化というものが、まだまだ欧米のようには定着していない」と苦言を呈する増田氏。「飼い主とペットがよりよい関係を築いてもらえるように、作品によって”人と動物との絆“や”犬や猫たちの本当の可愛さ“を伝えたいと思っているんですよ」と動物写真家としての思いを彼は訴える。
シバ犬 「シバ犬」この犬種が持つ毛色の軽快感を順光でとらえて。明るい季節感のイメージを大切にした。

■カメラ:ニコンF4 レンズ:300mm 絞り:f14
シャッタースピード:1/250 フィルム:RDP II 三脚使用

 「ペットを撮る上では、犬や猫の習性や行動パターンをよく知っておくことが大切です」と増田氏は強調する。というのも、犬や猫は一日の中での睡眠、食事、運動、排泄、といった生活パターンが人間以上にきっちりと決まっているからだ。たとえ走っている姿が撮りたいと思っても、もし動物が眠ってしまったら、カメラマンとしては寝ている姿を撮ることしかできない。したがって撮影者がモデルとなる動物の生活サイクルを事前にチェックした上で、それに合わせて手際よく撮影する必要があるのだ。

 「時には犬や猫が思わぬ行動をとるハプニングもありますよ。ある時、ラブラドールという犬を茨城の霞ケ浦で撮影していまして、冬だったんですが、水に入りたがってしょうがないんです。それでとうとう撮影中に飛び込んでしまって、しばらく中断せざるを得ませんでした。また、暑い夏の撮影だと、動物の方もバテてしまうので、撮影の合間に保冷剤を体に当ててやったりもするんですよ」。見るからに微笑ましいペット写真にも、その撮影の現場では、我々の伺い知れない様々なご苦労がおありのようだ。
スコティッシュ・フォールド 「スコティッシュ・フォールド」我が家で生まれた仔猫たち。可愛らしさが表現されるように、毛色に合わせて背景の色や素材を選択した。ストロボ3 灯ライティングで撮影。

■カメラ:マミヤRZ67 レンズ:180mm 絞り:f16 シャッタースピード:1/125 フィルム:RVP 3灯ストロボ使用