日常風景ウォッチング
南 伸坊氏 みなみ しんぼう 1947年東京都生まれ。雑誌『ガロ』の編集長を経て、80年よりフリーに。NHKテレビ「スタジオL」の司会などで、坊主刈りオニギリ頭がお茶の間にも知られ、人気を得る。現在は軽妙なイラストと文章の“イラストライター”として活躍中。主著は『モンガイカンの美術館』(朝日文庫)、『ハリガミ考現学』『笑う写真』(ともにちくま文庫)など。

「路上観察」の達人 南 伸坊氏(2)

 自分の写真でシールやスタンプを作ったり、あえてモノクロやセピア色の写真にしてみたり…。ひと口に写真といっても、最近ではじっくりと腰を据えて風景などを撮るだけでなく、多様な楽しみ方が見られるようになりました。  このように気軽な写真の楽しみ方のひとつとして、見慣れた日常風景の中に、新たな視点で興味深い被写体を見い出し、カメラを向けている方々も増えているようです。こうしたフォトライフの楽しみを、あなたの自由な発想と感覚でいっそう広げていただく「日常風景ウォッチング」をおすすめするこのコーナー。今回も前回に引き続き、「路上観察の達人」としておなじみの南伸坊氏にご登場いただき、南さん流の「路上観察法」についてお話をうかがいました。

『廃車の休憩所』廃車を利用した山の休憩所。このバスは山の頂上まで自力で上がってきて、以来ここで第二の人生を送っているかのようだ。香川県の土庄町にて。
 南伸坊氏は、知る人ぞ知る『路上観察学会』の中心メンバー。その『路上観察学会』とは、南さんのほか、赤瀬川原平氏(作家・画家)、藤森照信氏(東大教授・建築史家)、林丈二氏(イラストレーター・作家)、杉浦日向子氏(江戸風俗研究家)、松田哲夫氏(編集者)らにより、1986年に結成されたユニークな団体。「路上観察学」なる新しい学問(?)を追求する、何やら面白そうなグループとして注目されました。

 この学会によれば、「路上観察」の定義は「通常は景観とはみなされない看板や貼り紙、廃屋などを”見立て“によって楽しむ知的な遊び」。それぞれが独自のテーマをもって活動しているメンバーの皆さんが、日本全国を西へ東へと飛び回り、各地の路上物件を観察しては、その成果をカメラに収めて発表されています。

 前号のこのコーナーでは、「路上観察」に対する南さんご自身のお考えを語っていただきましたが、今回はその続編として、南さん流の「路上観察法」についてお話をうかがいました。さらに「様々な路上物件の中でも、特に看板や貼り紙が得意分野」だとおっしゃる南さんが、今までに撮られた物件写真の中から選りすぐりの傑作をご紹介させていただきましたので、南さんのお話と合わせてお楽しみください。