「日本の祭り」写真コンテスト2010に、たくさんのご応募ありがとうございました。
全国から寄せられた応募作品総数10,880点の中から、
見事に入賞された方々の作品を、ここに発表させていただきます。

 

腕自慢部門 総評:
 2010年も全国各地から2部門合わせて10,880枚(応募者数2,393人)の作品で写真審査室は埋め尽くされ、審査員3人により全作品に目を通し厳正な審査を行いました。今年は、写真プリントの上手な人との差がはっきりと目立ちました。予選を通過した作品はどれもプリントが美しい。グランプリは流鏑馬の一瞬を捉えた藤田氏。フレームの中には一部の隙もなく緊張感に満ちていました。この撮影場所からの構図を十分に知った上でしょう。特選の写真もみなそれぞれが郷土の色に満ちていて素晴らしい。
腕だめし部門 総評:
 「腕自慢部門」はオーソドックスな祭りの作品(構成力、シャッターチャンス、作品の仕上がりなど)が評価基準となりますが、「腕だめし部門」は、独自の目線での作品が評価され、それぞれの評価内容は違います。グランプリは、現代風の若い女性と祭りの風景のコントラストを作品とした近藤氏。76歳でありながらその若い感性と構成力に審査員一同敬服しました。特選の榎本氏も個性的な作品で一瞬をうまくユーモラスに捉えていました。入賞したどの作品もそれぞれ心が温まりました。

はが ひなた/日本・世界の祭りの写真家。1978年成蹊大学法律学科卒業、1983年米国西イリノイ州立大学文科人類学科卒業。朝日新聞社「週刊日本の祭り」全30巻に「祭りを撮る」を連載。日本経済新聞社水曜夕刊「地球ハレの日」連載。2007年-2008年全国5都市のキヤノンギャラリーにて「世界のカーニバル」写真展開催。鹿児島市おはら祭審査委員長。(社)日本写真家協会、日本旅行作家協会会員。

腕自慢部門 総評:
 この部門には、やはり上・中級者らしく日本の祭りの実相にザクリと切り込み、人と信仰(あるいは神)が火花を散らして交差する瞬間の素晴らしさを記録・表現する作品を毎年期待しています。そういう意味では、今年はインパクトのある作品がやや少なかったような感想を持ちました。しかしながら上位に残った作品はいずれも祭事の本質に迫るもので、特にグランプリ作品はよくある流鏑馬とは違い、観客の感動が背景に写し込まれている点が抜群でした。
腕だめし部門 総評:
 この部門は初心者を対象とするものです。たとえ小さな祭りであっても、地域の人々の交流や祭事の合間の人間味あふれる表情や仕草などを巧みにとらえた作品をたくさん見たいと思いながら審査しました。最終的に、現代的な化粧と髪型の女性たちを絶妙のバランスで画面に撮り入れて「現代の祭り」を記録した作品がグランプリに選ばれ、わが意を得たり、という気がしました。古い伝統を現代人が守る…この写真でなければ記録できない表現に大拍手。

いたみ こうじ/福岡県生まれ。法政大学法学部卒業。写真愛好家向けの月刊誌「日本フォトコンテスト」(現-フォトコン)の編集長を約20年務めたのち2004年に独立。フォト・エディターとして、多くのコンテストや写真賞の審査にも参加。NHK衛星第2「カシャっと一句!フォト575」審査委員。社団法人日本写真協会(PSJ)理事。フォトカルチャー倶楽部理事。写真関連の企画・制作会社「Jophy Communications」代表。

腕自慢部門 総評:
 祭りに興じる人たちが輝いて見えるのは、祭りが人間の精神文化の結晶だからです。一期一会の出会いを瞬間的に切り取るところに、写真ならではの表現があります。しかし、何が決定的な瞬間なのかを的確に判断するのは、祭りについての幅広い知識や奥深い理解が不可欠な前提になります。上位入賞した作品に共通してうかがえるのは、卓抜した撮影技術と表裏一体の関係にある入念な事前調査です。その重要性を改めて感じました。
腕だめし部門 総評:
 写真に熟練した方々の応募が目立って増えた印象を持ちました。上位入賞をはたした作品の技法的な水準は腕自慢部門に見劣りしない気がします。少し残念なのは、家族やご近所に取材したもので、目を見張るような作品が少なかったことです。家族写真は写真の原点です。何のためかも誰のためかも明快なうえ、被写体は気を許し油断しています。感動を呼ぶ作品を生みだす豊饒の海です。そこにもっと熱い視線を注いで欲しいと思いました。

ひらしま あきひこ/写真家、編集者。1946年千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。1969年毎日新聞社写真部入社。出版写真部長、出版制作部長、ビジュアル編集室長を歴任し、2009年に退社。共著に『昭和二十年東京地図』、『町の履歴書、神田を歩く』など。編集者として『宮本常一 写真・日記集成』、『宮本常一が撮った昭和の情景』、『グレートジャーニー全記録』などを担当。
 

 
特選
特選
村上吉秋
(岩手県奥州市)
撮影地:岩手県
後藤 博
(宮城県塩竈市)
撮影地:山形県
特選 特選
小林一夫
(茨城県水戸市)
撮影地:茨城県
大村光弘
(愛知県岡崎市)
撮影地:愛知県
特選  
片山豊相
(福岡県北九州市)
撮影地:長野県
 
 
 
 
 
特選
特選
堀 恒夫
(福島県喜多方市)
撮影地:福島県
熊田政男
(茨城県北茨城市)
撮影地:福島県
特選 特選
榎本明夫
(愛知県知多郡)
撮影地:愛知県
大西幸司
(大阪府寝屋川市)
撮影地:島根県
 
特選  
中野英治
(山口県下関市)
撮影地:佐賀県
 
※敬称は略させていただきました。