カメラのキタムラ
Vol.49 2004 SUMMER
フォトワールド 十人十色 第6回  

【夏日】風もない夏の暑い日、釣り人待ちの白いボートがブルーと緑の中に、とても強く自分を主張していた。
■カメラ:PENTAX645NII レンズ:FA80-160mm F4.5 絞り:f16 シャッタースピード:1/250秒 -1/3補正 フィルム:RVP100 PLフィルター・三脚使用 撮影地:千葉県君津市

【若輝】8月の午後の陽に輝く二人を防波堤の上でとらえた。二人が気づき、右手で撮るよと合図を送って、輝く表情を逃さないようにシャッターを押した。海色が二人を優しく包んで、堂々とした彼と、ややはにかむ彼女を祝福していた。
■カメラ:EOS1V レンズ:EF600mmF4 1.4× 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/250秒 フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:千葉県九十九里町片貝

【初夏】初夏の美瑛の畑。絞り込んで畑を広く取り込んで畑模様にするのが一般的だが、私の目には、麦秋の何本かの穂が若々しく飛び跳ねて見えた。
■カメラ:PENTAX645NII レンズ:FA300mm F5.6 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/125秒 フィルム:RVP100 PLフィルター・三脚使用 撮影地:北海道美瑛町
病院での写真展は、患者だけでなく、看護師や医者にも癒しを与えた。
 昨年はある病院のギャラリーで、作品展が開催されました。そこは全国でも珍しい、ギャラリー専用のスペースがある病院でした。
 「私の写真を見て、患者さんが元気になってくれたらいいと思っていたんです」。
 ところが予想に反して、看護師さんや若い医師の見学も多かったそうです。
 医療の現場での看護師や先生は、時には患者さんの理解が得られなかったり、人の死に直面したりと、様々なプレッシャーやストレスを感じながら働いているもの。そんな人たちにも、飯田先生の開放的で健康的な写真が癒しになり、励みにもなったのでしょう。

ソフトボール顧問としての活動が、今日の写真活動の糧となっている。
 今では、10を超える写真団体やサークルを掛け持ちし、そのほとんどで何らかの役員をしていらっしゃるという、多忙な飯田先生ですが、今回の受賞の関係もあり、さらにあわただしい毎日を送っていらっしゃいます。
今年の2月から4月の3ヶ月間だけでも、個展やグループ展など規模は違いますが、8つの写真展が開催されたほど。
 そんなさなかでもひと月の撮影数は、フィルム80本を下らないと言われます。
 一時は教師、写真活動、そして学校でのソフトボール部の顧問と、めまぐるしい日々を送っていたこともあったとか。しかし先生は、全てに手を抜かず、全力で取り組んできたのです。そのソフトボールでの、まさに血のにじむような真冬のノックや集中力を要する審判、スコアラーなどの経験が、今の活発な写真活動の基礎になっているとおっしゃいます。
 「私は今でも忙しいですが、例えば定年になって、時間が有り余っているより、趣味や仕事を掛け持ちしている方が、緊張感のある時間の使い方ができるのではないでしょうか」。
 教師を退職した直後の作品を、竹内先生に「写真がだらしない!」と一喝されたこともあったとか。時には写真表現が壁にぶつかることもあります。しかしその時は、本業をがんばってストレスを晴らせばいい。またその逆の場合もあるわけです。充実した時間を過ごすには両方が必要なこともあるということなのです。

多くの仲間とともにレベルアップすること。それが嬉しく、またやりがいも感じる。
 「私は色んな仲間に囲まれて活動したいタイプなんです」。
 飯田先生が会長をしている団体だけをみても、それぞれの会員数を合わせると千人を越えるといいます。だから今回の受賞を、多くの写真仲間のみなさんもあちらこちらで祝福してくれています。おかげでひときわ喜びが大きいのだとおっしゃいます。そういう人々と、ともにステップアップしていこうというのが、飯田先生のスタンス。
 「私にとってはそういう活動が、嬉しくもあり、こんなにやりがいのあることはないと思っているんです」。
 最後にもう一度おっしゃった、「人が好きなんです」という言葉が、説得力を持って響いてきました。
PROFILE
1941年千葉県生まれ。1964年から2002年まで高等学校教諭(数学)。1984年より写真家竹内敏信氏に師事。2002年より各地で個展「海を見ていた―房総の浜辺から―」を開催。2003年10月写真集「海を見ていた―房総の海岸物語―」出版。各種写真サークル・団体において役員、写真セミナー・教室などで講師を務める。日本写真作家協会会員。

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