フォトワールド十人十色
スチルは一発勝負の短距離走、
ビデオは集中力を維持する長距離走。
 写真集を出版された翌年に、先生は北海道の千歳に移住されました。そこはカワセミやアカショウビンなどが生息し、タカやワシもやってくる、先生の仕事には絶好の場所でした。そこで撮影し、出版した写真集が『火の鳥アカショウビン』です。

 「生き物の写真では、その生き物の生態を捕らえたものが評価される傾向があります。僕はそうではなく、自分の内面を生き物の姿を借りて表現したかったのです」
 先生は自分のテンションを上げるために、自分を精神的に追い詰めてアカショウビンを狙い続けました。この写真集は日本写真協会の年度賞を受賞しています。

 その後、『炎のカムイ火の鳥・アカショウビンU』『シマフクロウ闇のカムイ』と次々に写真集を出版してゆきます。並行してテレビの動物番組のコーディネートもはじめました。そして結局、先生ご自身がビデオカメラを使うようになります。
 「ビデオカメラになっても、構図やバランスといった基本はスチルと変わりません。でもビデオはスチル以上に先を読まないといけません。スチルが一発勝負の短距離走だとすれば、ビデオは集中力を維持して撮り続ける長距離走です」

 先生が監修・撮影したオリンパスのコマーシャル・フィルム『エゾモモンガ』は電通賞とアメリカのIBA国際放送広告賞を受賞しました。また1994年から放送されたテレビ朝日のニュースステーションの特集「嶋田忠の野生の瞬間」シリーズでは、企画・監督・プロデュース・編集・ナレーションのすべてをこなされています。
アカショウビン ■カメラ:キヤノンF1 レンズ:FD80-200mmF4L 絞り:f8 シャッタースピード:1/60秒 フィルム:フジクロームRDP ストロボ使用 撮影地:北海道
クマゲラ ■カメラ:キヤノンEOS1 レンズ:EF500mmF4.5L 絞り:f4.5 シャッタースピード:1/125秒 フィルム:フジクロームRDP 撮影地:北海道
とことん観察し、自信を持って撮影に臨めば、
必ずシャッターチャンスは訪れます。
 今回、嶋田先生からフォトライフ四季の読者へ、貴重なアドバイスをいただきました。

 「写真を撮るうえで最も大事なことは、自分が撮りたいものに対してデータを積み上げることです。人でも風景でも生きものでも、十分な知識を持つことによって、最高の瞬間がイメージできるようになります。特に生きものは行動の先をどう読むかが勝負の分かれ目ですから、とことん観察して、100%の自信を持って撮影に臨んでください。そうすれば、必ず素晴らしいシャッターチャンスが訪れます」

 昨年の秋にはハイビジョンの撮影でオーストラリアにも出かけられ、先生の活動は日本から世界へと広がりはじめています。スチル、ビデオのジャンルを越えた、日本を代表する動物写真家・嶋田先生の今後の活動に、ぜひ注目してください。
カワセミ ■カメラ:ハッセルブラッド500ELM レンズ:プラナー60mmF4 絞り:f8 シャッタースピード:1/500秒 フィルム:エクタクロームEPR ストロボ使用 撮影地:埼玉県
しまだ ただし
1949年埼玉県生まれ。日本大学農獣医学部を卒業後、1972年に動物雑誌『アニマ』(平凡社刊)の創刊に写真家として参加、以後野鳥を中心に独自の動物写真の世界を開拓している。1980年に北海道千歳に移住。スチル、ビデオと幅広い活動を展開している。写真集に『カワセミ清流に翔ぶ』『火の鳥アカショウビン』『炎のカムイ』『シマフクロウ闇のカムイ』(以上平凡社刊)、『森に生きる』(朝日新聞社刊)など多数。
もくじ

 当サイトに掲載されている写真・テキスト等を無断で複製・転載することを禁じます。