特集
撮るときの自分の気持ちを
反映させる写真を心がけてほしい。

■背景を活かすかボカすか、
それを決めるのは、撮影する人の気持ちです。
●先生の「ニライカナイ」の作品には構図に雲が効果的に配置されています。美しい空や海を目の当たりにすると、ついついそれだけに注意が向いてしまって、雲を忘れてしまいがちだと思うのですが、とても重要な要素なのだと、あらためて教えていただきました。

 風景写真にとって雲は大切です。たとえば富士山を撮る場合でも、富士山の形ばかりではなく、どのような雲が、どのように富士山にかかっているかによっても写真の善し悪しが決まります。ですから雲を画面の中にどう構成するか、配置するかは重要なポイントなのです。

 人物を撮影する場合でも、背景をボカしたり、あるいは活かすにしても、どのように構成するかは被写体を撮る以上に難しいことです。ですから、背景には十分に気を使わなければなりません。はじめは主題だけに目がいきがちですが、周りの状況が作品の質を決めることもあるのです。
上/シダの葉の上に落ちた花を真上から撮った。着物の柄のような感じを狙った。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:マクロ100mm 絞り:f8 フィルムRDPU 撮影地:沖縄県大宜味村押川
 
 
 
●背景の処理に悩んでしまって、結局ボカしてしまうという方も多いと思うのですが、そうした方々にアドバイスをいただけますか。。

 たとえばマクロや望遠レンズで花をアップで撮る場合でも、不用意に背景をボカすと主題が浅くなってしまうことがあります。小さなサイズで見ている分には気にならなかったのに、大判に引き伸ばして見てみると、どこか物足りなく感じてしまう。それが主題が浅いということで、写真から伝わる情報量が少なすぎるのです。

 その花がどのような状況で咲いているのか、湿地なのか広々とした花畑なのか、そうした情報を伝えることで、主題が深まることもあるのです。
 昨年の春の花フォトコンテストでグランプリを受賞された作品では、望遠レンズを使用しながら、手前の菜の花畑から背景の山並みまで、隅から隅までピントが合っていました。望遠レンズを使用した作品では、背景をボカすことが多いのですが、あえて広範囲にピントを合わせることで、大判に伸ばしてみると延びやかな景観を十分に伝える、迫力のある作品になっています。レンズの性能をよく知っているなと感心しました。
アジサシが星のように見える。ワイドレンズで広い青空をいっぱいに撮った。
■カメラ:ミノルタα7 レンズ:17-35mm 絞り:f16AE フィルム:フジクロームプロビア100F 1段増感 撮影地:沖縄県
新城島上地
 では、なんでもかんでも背景を入れればいいかというと、そうとばかりも限りません。背景をボカした優れた作品も数多くあります。結局、背景をどう処理するかは、写真にとって、何が大切なのかを考えてみると良いと思います。写真にとって大切なのは、撮影者のその時の気持ちです。写真は被写体と出会えた喜びとか、懐かしさといった、その時の心の表現なのですから、背景の処理も、その気持ちの反映として決めると良いのではないでしょうか。
大きな仏像と組み合わせ、絞り込んで両方にピントがくるようにした。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:80-160mm 絞り:f32AE フィルム:フジクロームプロビア100F 1段増感 撮影地:高知県35番札所清滝寺
 
思い切ってカメラのアングルを下げ、バックのボケ具合に気をつかいながら、レンゲ畑の広がりを感じさせるように撮った。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:200mm 絞り:f5.6AE+1/2補正 フィルム:フジクロームプロビア100F 1段増感 撮影地:高知県35番札所清滝寺付近
 
 
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