特集

日本の自然環境というのは、
人間に調度いい大きさなのです。
●日本が自然に恵まれているということですが、日本人の中にはそのことを実感できていない方々も多いように思います。先生はたとえばどのような点で日本の自然環境が恵まれているとお考えなのでしょうか?

 たとえば飛行機に乗って空から眺めてゆくと、モンゴル人は牧畜民族ですから家畜の餌である草を大事にしています。ですからモンゴル平野には大草原の緑が保たれている。ところが国境を越えて中国に入った途端、土と岩と泥だけの世界になります。中国人は古代から何千年に渡って木を植えてきませんでした。だから乾いた風景が続く。緑が圧倒的に少ないのです。それが朝鮮半島まで来ますと、やっと山に木が増えてきて、人と緑の関係を思わせるような風景が見えてきます。しかし、日本海を越えて、飛行機が島根県の上空まで来ると、眼下にはいきなり驚くほど緑が豊かな光景が現れるのです。

 日本海沿岸というのは土の空間がないくらいびっしりと木や草が生えていて、秋にはこれがみんな紅葉になるのです。そうした環境に我々はいるのです。
 また、海に囲まれた島国で四季がある恵まれた自然環境というのは、日本以外では、私が知っている限りでは地球上に四ヶ所しかありません。イギリスとアイルランド、それにタスマニアとニュージーランドです。島国にはきめ細やかな自然が育つという特色があります。写真に撮りやすい程度にきめ細やかな自然です。つまり自然風景を通して、自分の心と対話できる程度の大きさの、調度いい自然なのです。

 ヒマラヤのエベレストとか、アメリカのロッキーマウンテンといった広大な風景を相手にしたのでは、ただ自然の雄大さに圧倒されるだけで対話することはできないのです。だから日本人特有の自然観というのは、自分の心と対話しながら、人間のスケールで風景を眺めることで育まれてきたのです。
秋は空が澄んで、天空の月などが目立つ季節。夕闇、朝方の光を利用して、月のある風景を撮ろう。
■カメラ:ミノルタα9 レンズ:ミノルタ28-70mm F2.8 シャッタースピード:Sモード 1/5 AE -2/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:群馬県水上町
日本で一番早く紅葉するのが、北海道の山々。これは大雪山赤岳の紅葉。9月の中旬。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF300mm F2.8L シャッタースピード:1/30 AE +2/3補正 フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:北海道大雪山
紅葉の最も美しい部分のみを抽出するのが、紅葉撮影のコツ。望遠ズームを使って、形、色合いの見事な部分を抽出するのだ。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF70-200mm F2.8L シャッタースピード:1/10 AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:福島県桧枝岐村
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