特集
屋久島の作品集は、作品はもとより、
印刷や装丁にいたるまで、
現在望みうる最高のものを目指しました。

■いままでのような「作品集」ではありません。
「美術集」なのです。
●今、お話しいただいた屋久島の森の独特な感覚は、はじめて屋久島の森に入られたときから感じられたものなのですか?

 最初はほんの少し感じ取れただけでした。それがはっきりとわかったのは5、6年たってからだったと思います。
私は写真家の土門拳さんを尊敬しているのですが、調べてみますと土門さんも屋久島を訪れたことがあって、屋久島を撮りたがっていたようです。土門さんは『古寺巡礼』という大変な名作の写真集を出版されましたが、私が今回、4月の末に出版を予定している屋久島の写真集は、土門さんの『古寺巡礼』とまったく同じ大きさで、A3判(297mm×841mm)の大きな写真集です。

●今回出版される屋久島の写真集が、以前に出版されてきた写真集ともっとも違うところは、どういった点なのでしょう。

 美術集に仕立てたというところです。私は今まで「作品」として写真を撮ってきたわけですが、この屋久島の写真は、それを美術品にまで高めたいと思っています。つまり屋久島の写真集は、いままでのような「風景写真集」ではありません。「美術作品」なのです。
 屋久島の森はもちろん自然のものです。しかし、それが写真を通じて美術品にまで高められる、そのことを示してみたいのです。国宝の、たとえば仏像などが高い価値があるというのは誰でもわかることだと思うのですが、自然が美術品だと言ってもわかりづらい。それを写真を使って、見てわかってもらおうと思っています。
贅沢な装丁なので、屋久島の写真集は、12万円と7万円の二種類の特装版をつくります。

●えっ、12万円と7万円ですか。

 12万円の本にはオリジナルプリントがつく限定版です。印刷も現在可能な最高の精度である700線の高精細印刷を使用していますので、葉の1枚1枚まで、葉の上の水滴までもが明確に再現されています。印刷技術から言っても、この写真集は現在望みうる最高のものですので、印刷出版を前提とした写真表現の可能性をかなり高めてくれるものになると思います。
 12万円という価格は、おそらく写真集としては今まで出版されたものの中で、もっとも高価なものだと思いますが、少しでも多くの方に見ていただきたいという気持ちもありますので、同時期に3,200円の廉価版のものも出版します。中味はほとんど変わりませんが、装丁や使用している用紙が違います。
屋久杉とシャクナゲ。大樹の存在感を出すように構図を考えた。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:300mm 絞り:f32 シャッタースピード:10秒 フィルム:ベルビア 撮影地:鹿児島県屋久島屋久杉ランド
見事な枝垂れ桜だが、雨露のある樹に感動した。座って見上げるアングルで大きさを強調した。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:150mm 絞り:f32 シャッタースピード:1/4秒 フィルム:プロビア 撮影地:京都府北京町常照皇寺の九重桜 
苔むした幹をバックに、うんと絞り込んでピントを合わせた。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:300mm 絞り:f45 シャッタースピード:1秒 フィルム:プロビア 撮影地:山形県長井市伊佐沢の久保桜
●以前にも、今回のように特別装丁版と廉価版の2種類を同時期に出版されたことはあるのですか?

 ありません。これがはじめてです。どちらも高精細印刷で刷る予定なのですが、これまでは高精細印刷を使用したくてもできなかったのです。写真の出来もありまして、高精細印刷に適した写真と適していない写真があるのです。

●どのような写真が高精細印刷に向いているのですか?

 ピントが限りなくシャープな写真でなければ意味がありません。それと、できるだけ明るい写真の方が向いています。もちろん、フィルムも35mmよりは中判、中判よりも大判の方が向いているのですが、ただ、今回撮った写真をテストしてみたところ、35mmでもうまく印刷が仕上がっているものもありました。写真集の中にも何枚かは35mmのものを採用しています。
絞りを開けめにしてボケ味を楽しむ。日陰の部分を狙って花びらのやわらかい感じを出した。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:400mm 絞り:f11 1/2秒 シャッタースピード:1/15秒 フィルム:プロビア 撮影地:岐阜県岐阜市芥見の中将姫誓願桜
 
 
 
 
 
 
 
 
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