このときに撮った作品で開いた写真展が「葬儀」ですが、この写真展の時は会場を薄暗くして、お経を流したんです。お線香を立てて、お客様にはご焼香をしていただいてから入っていただきました（笑）。初日には知り合いがお葬式用の花輪を送ってきてくれたんです。一応、写真展を開いたお祝いですので、お葬式用の花輪に「お祝い」と書いてある。花屋さんが悩んでいました（笑）。

「写真家を盗る」もコンパクトカメラを使いました。写真家は、ギャラリーで写真展を開く際に、初日にオープニング・パーティーを開きます。日頃はおとなしい写真家の方々も、パーティーでお酒が入ると変身するんです。その変身したところを約２００名分撮りためて写真展を開きました。

　私は日頃からコンパクトカメラを持ち歩いています。今はAＰＳです。それで名刺をもらった方の写真を撮らせていただいて、後日、できあがった写真を皆さんに送っているんです。一眼レフを向けると皆さん緊張されるので、そういう場合はコンパクトカメラがいいんです。皆さんリラックスしてくれますから。

　写真の下には撮った家の方の名前と出身地、結婚して何年になるのか、職業、今の家の住み心地などを書き添えて並べました。１枚では作品として成立しませんが、それが何枚もたまると作品になるのです。

　また、「好食３６５日」という写真展も開きましたが、これは私が１年間、毎日食べたものを全部撮ったものなのです。それをサービスサイズでプリントしたのですが、普通はサービスサイズはサイズに合わせて１枚１枚切ってしまいます。それを切らずに続けてプリントしてもらいました。ですから１カ月で25ｍくらいの帯のようなプリントになります。それが12本あるんです。それを並べた写真展です。

●その後、先生は「うさぎ追いしかの山」「よさこい祭り」といった、比較的日本の風土に近いものをテーマとして取り上げていますね。

「うさぎ追いしかの山」は私の郷里である熊本の原風景を撮ったものです。ここも近代化が進む中で懐かしい風景がどんどん失われています。今撮っておかなければ、これらの風景はもう撮れなくなると思い、郷里に帰ったたびに、撮りためて写真展で発表したものです。このテーマは今も撮り続けています。

「よさこい祭り」は仕事で高知に行ったときに、「いごっそ」の皆さんとすっかり気があってしまい、何度か行っているうちに、ちょうど、よさこい祭りの時期と重なったことがあるのです。それから毎年行って撮りためています。それを写真展で発表しました。最近は踊り手の方々が私のことを知っているらしく、レンズを向けるとポーズをつけようとするので困ります（笑）。