特集

■直接ユーザーに会って生の声を聞くと、
思いもかけない要望が返ってくることがある。
設計はそれが楽しいのです。
●一方で先生はカメラの設計もなさっています。率直なご意見をおうかがいしたいのですが、先生は撮影と設計と、どちらがお好きなのですか?

 どちらかというと写真を撮っているときよりも、カメラを作っているときの方が好きですね。
 写真というのはある意味では相手が求めるものではなく、自分の思うこと、感じたことを相手に押しつける行為だと思うのです。ですから作品を製作している途中では、まったく個人的な、孤独な仕事なんですね。しかし、カメラの開発というのは相手の求めることに応えなければなりません。また、その要望にしても思いもよらないものがあったりする。

たとえば欧米人の中には、日本人とは体格が違いますから、カメラのマウントをねじ切ってしまったり、レバーを折ってしまう人がいるんです(笑)。そんなものが、そう簡単に壊れるとは普通は思いませんよね。でも実際に外国では起きるのです。そうするとすごく頑丈なカメラが求められてくる。そうしたユーザーの実際の要望というのは、実際にユーザーと接してみないとわかりません。ですから設計の仕事をしていると、人と接する機会が多くなります。私は人と接している方が好きなんですよ。

 設計に関しては、私はずっと大判のカメラを作ってきましたし、これからも大判カメラを作り続けていきたいと思っています。いくら時代が大判以外のカメラを出してきたとしても、私のカメラはそれとは比較できないものなんです。それがメーカーの販売商品に結びつくかどうかはわかりませんが、それでも今後も大判カメラを作り続けますよ。自分は自分ですから。

●最後に、先生の航空写真の撮影の方の今後の予定を教えていただけますか?

 単に変わった風景の場所というよりも、やはり今後も人の生活がわかる写真を撮り続けていきたいですね。今企画が進んでいるものでは中国を撮る計画があるんです。中国というとすぐに広大な大地を思い浮かべる人が多いようですが、実は人間とのかかわりが一番面白い国なんです。ですから低い位置から見た中国、空から見た中国人たちの生活を撮ってみたいと思っています。

●楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。
芥川先生は海外のプレスにも知り合いが多い。イタリアの知人が編集している写真雑誌「FOTO graphia」では芥川先生と、その作品が紹介された。
芥川先生が開発に携わったフジフイルムのパノラマカメラのシリーズ。
多才な芥川先生は執筆も行う。ANAの機内でのみ入手できる「翼の王国」では、連載で先生の航空写真の作品と文章を見ることができる。
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