カメラのキタムラスタジオマリオカメラのキタムラ

デジカメプリント・フォトブック・カメラのことはおまかせ!

閉じる

種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー

2012.05.02【Vol.062】

収差の話 その1

レンズのカタログや説明文の中に「収差」物という言葉を見かけることがあります。物体(被写体)から出た光をレンズを通して像として結像するわけですが、一点から出た光が完全に一点に集まらず周辺に散らばったりします。簡単にいえば、目の前にある被写体と寸分違わない像(画像)ができればいいわけです(理想像)。その理想的とされる像からの色ズレ、歪みのことを収差といいます。収差にはザイデルの5収差と2つの色収差に分けることができます。

それら収差の中でもわかりやすいものに画像がゆがむ歪曲収差(ディストーション)があります。建物の壁などの平面、地平線、水平線など直線が入る写真などで画面が歪んで再現されることがあります。画像全体が中心に向かって凹むような写りを「糸巻き型」、外側に膨らむような形のに写る「樽型」収差に代表されます。また、その「糸巻き型」「樽型」が合わさった「陣笠型」「騎射笠型」と呼ばれる収差もあります。

「糸巻き型」「樽型」ともに絞りを絞ることで改善されることはなく、昔はあきらめるか、周辺をトリミングしてなるべく目立たないように加工することもあったようです。特に単焦点レンズのほうがズームレンズに比べこの画面の歪み「歪曲収差」が少ないものが多く、それが今でも「単焦点レンズのほうが写り良いのでは」という意見のひとつの原因にもなっています。確かに単焦点レンズならではの光学性能から言えば、ズームレンズに比べて歪みが少ないものが多いのは事実でしょう。ただ、適度な歪みもレンズの個性と捉えて撮影するカメラマンの話も聞きますので、一概に歪曲収差が悪いというわけではなさそうです。

デジタル画像に関して言えば、今となっては画像処理ソフトで歪曲収差を補正することが可能です。ただし、歪み方が均一でない場合や平面的な被写体に正対していない場合などは補正が難しくなります。パラメーターをスライドするだけの簡単操作で補正できますが、完全に歪みをなくすためのものと考えずに、ある程度の補正が可能という程度に思っておいてください。いずれにせよ、レンズの性能や焦点距離で大きく変化する歪曲収差ですので、お手持ちのレンズでテスト撮影をして、レンズの癖を確認してみるのも良いかもしれません。