フォトライフ四季

協力:カメラのキタムラ

カメラノキタムラ
Studio Mario

夏 vol.81 SUMMER|撮っておきたい それぞれの夏 たったひとつの夏をとらえる

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   思い出をつくる道具たち Vol.5 門出平男

思い出を作る道具たち

写真家の道具論お役立ちプロの金言撮影機材&持ち物リスト取材こぼれ話おうち編

写真家の道具論 富士山撮影は事前準備も醍醐味 Vol.5 門出平男

毎日が富士山づけの門出平男さんに、被写体としての富士山の魅力と、愛用の撮影機材についてお話をうかがいました。

360度、全方向が富士山のベストポジション

 「どこから見る富士山が一番美しいですか? とよく聞かれますが、富士山に一番と決められる場所はありません。富士山は360度の全方向から撮影できる世界随一の山。姿さえ見えれば、どんな場所でもベストポジションになる可能性があるんですよ」
 我が子を自慢するかのように熱弁をふるう門出さん。「まだ制作途中なのですが…」と言い添えて、一冊のファイルを見せてくれました。そこに書きとめられていたのは、都道府県ごとにまとめられた富士山の撮影ポイント。お膝元である静岡県や山梨県から、遠方の福島県や和歌山県まで、門出さんが自分の足で調べ上げた絶景ポイントが、
 ①撮影が完了したもの
 ②撮影が不完全なもの
 ③これから下見をするもの
に分類されていました。
「富士山の撮影は悪戦苦闘の繰り返しです。せっかく出かけてもチャンスに巡り合えず、空振りがつづくことも少なくありません。だからこそ決定的瞬間に出合えたときの感動が大きいのです。富士山にハマってしまう人が多いのは、きっとそのせいでしょうね」

車にはつねに撮影機材とキャンプ道具が積んである

 門出さんのお住まいは、富士山がよく見えることから名づけられた埼玉県の富士見市。門出さんは、その日の天候と富士山の状態を確認するために自宅近くの富士山の見える場所にいくことを習慣にしているそうです。そして、気象が味方してくれると思えば、すぐに車を飛ばして撮影地に向かいます。トランクにはいつも撮影機材とキャンプ道具一式が積んであるので、気が向いたらすぐに撮影に出かけられるというわけです。

「富士山の撮影は雲ひとつない快晴が望ましいですが、巻雲・ウロコ雲・笠雲・吊し雲といった雲や、朝夕の焼け雲は、主役を引き立てる名脇役になる場合があります。また、空に霞がかかっていても、山の影が空に映る二重富士という珍しい現象が起きることもあるので、どんなときも富士山から目を離せません」

 撮影は夜が明けきらない未明からはじまります。そのため、夜はもっぱら車のなかで就寝。空が晴れていれば天体とからめた撮影が楽しめるので、旅館に泊まる必要はないそうです。

「体が疲れないかって? シュラフ(寝袋)などのキャンプ道具を持参するので、2~3泊なら車のなかで寝泊りしても問題はありませんよ(笑)」

若い頃から富士山に魅せられ・・・

今でも高山に登り、富士山撮影に挑みます

念入りな計画から絶景との出会いが生まれる

「稜線のお花畑」
ペンタックス645、120mmマクロF4、F16、AE、ベルビア100、中白根山(北岳と間ノ岳の中間)、2001.7.15

 一年365日、富士山を追いかけていて、もっとも楽しいことは、季節によって表情がかわることだと門出さんはいいます。

「富士山はいつ見てもすばらしい被写体ですが、その富士山に花や新緑、紅葉、湖などをからめて撮ると、写真はよりすばらしいものになります。なかでも私が好きなのは、四月と八月に見られる、田貫湖(静岡県富士宮市)と、富士山の山頂部と太陽が重なって起こるダイヤモンド富士という現象の組み合わせ。季節ごとに異なる太陽の出入りの位置を念入りに調べ上げ、撮影ポイントと撮影日時を慎重に計画立てるプロセスは、富士山撮影の醍醐味だといえます」

 門出さんいわく、これからの季節は、空の景色がドラマティックに変化する、台風の前後がねらい目なのだとか。日本一の山、富士山。みなさんも一度は富士山の撮影にチャレンジしてみてはいかがですか。

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富士山を撮る、門出さんの必携アイテム

機動性抜群のお手製リュック

何でも自作してしまう門出さん。なんと、リュックもすべて手づくり。レンズ用のソフトケース生地をつなぎ合わせたアイディアもので、うっかりファスナーを閉め忘れても中身が落ちない構造になっています。他の機材を入れた別のポーチも取り付け可能。なんとも欲しくなる一品ですが、残念ながら非売品です。

撮影地をメモした単語帳

「富士山の撮影に行きたい場所はまだまだある」という門出さん。何度か訪れていても、再挑戦したい場所はあるそうです。行きそびれがないように、「気になる撮影地」を単語帳のカードに書きとめ、目的地別・コース別・季節や時間別・撮影順別に束ねておき、必要に応じて持ち歩いているそうです。

手製の間欠露光用プロペラ

「さて、これはなんでしょう?」といいながら、電動のねじ回しに、黒いプロペラを取り付けた門出さん。スイッチを入れると、羽根がまわりはじめました。携帯用扇風機ではありません。正解は、長時間露光で車の光跡を破線に見せるためのアクセサリー。その効果は作品をご覧ください。
※間欠露光:一定の間隔をおいて露光を行う方法

「夕暮れの東名高速道路」

ペンタックス645、75mmF2.8、F8、AE、ベルビア100、秦野市中井町、2006.4.21、手製の間欠露光用プロペラ使用

プロペラを使用することで、このような不思議で幻想的な写真を写すことができます。

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「レンズの性能を頭に入れて撮影をする」

 「桜や紅葉と一緒に富士山を写すときは、近景から遠景までピントがシャープにいき渡るように絞りを設定する必要があります。一般的にレンズの描写性能が最大限に発揮されるのは、F8からF11あたり。絞り優先AEで絞り値を決めるときは、そのことを頭に入れておきましょう。また、撮影ではカメラブレや被写体ブレを防ぐことも肝心。シャッタースピードが1/30秒よりも低速になるときは三脚を使い、花や葉が風にゆれているときは、風が止む瞬間を待ってシャッターを切ってください」

ありがちなNG

なごやかな雰囲気のなか、富士山について熱く語ってもらいました

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撮影機材&持ち物リスト

【カメラボディ】
ペンタックス645(×2台)
サブカメラとして、デジタルカメラ、ペンタックスK10

最近はペンタックスK5も愛用しているそうです。

【交換レンズ】
超広角35mmF3.5、広角45mmF2.8、標準75mmF2.8、120mmF4マクロ、望遠200mmF4、リアコンバーター2×

【その他】
三脚、レリーズ、各種フィルター、ストロボ、予備電池、シュラフ(寝袋)、キャンプ道具、長靴、雨具、地図、磁石、ヘッドランプ、救急用品、非常食など。

愛用のデジタル一眼、ペンタックスK5
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Web 限定!取材こぼれ話

 世間は暖かな陽気になり、桜も咲きはじめた4月の初旬に、富士山写真家・門出平男さんの取材をしました。今回は『フォトライフ四季』編集部内での取材。門出さんは、わざわざ車で訪ねてくれました。事前のお電話で門出さんが車を使って、あちこち撮影に行くと聞いていた編集部は、ひそかに「どんな車なのか」、「どんな機材を積んでいるのか」を楽しみにしていました。

到着すぐに門出さんは「いやー、今日の富士山はきれいだね。できれば撮影にいきたかったよ」と富士山トーク。編集部は、タイミング悪くいい天気の取材になってしまったことを恐縮に思いながらも、「さすが富士山写真家はいつも富士山のことを考えているんだなあ」と感心しきりでした。

左のケースにはこまごまとした撮影機材を、右側には車内泊に使う寝袋や、三脚を数本積んでいます

そんな和やかムードのなか取材はスタートし、運転で疲れているのにも関わらず、過去から今までの富士山撮影秘話や、富士山の魅力、独自の撮影技や機材など、記事に書ききれないほどの富士山ネタを惜しげもなく披露してくれました。

取材の時間はあっという間にすぎてしまい、門出さんを車の場所までお見送りすることに。そこで、ひそかに門出さんの車を楽しみにしていた編集部は「ぜひ車のなかも見せていただきたいのですが・・・」と無理なお願いをしました。「この間の撮影から整理していないからなあ」といいながらも快く車内を見せてくれた門出さん。散らかっているなんて、とんでもない。とても整頓されて使い勝手のよさそうな車内でした。その後、車に乗り込み、笑顔で颯爽と去っていった門出さんを見て、いつまでも富士山を追いつづける若さと元気さに驚く編集部なのでした。

門出平男(もんで・ひらお)

ペンタックスを定年退職後、日本旅行写真家協会に所属し、旅行情報誌やカメラ誌などで活躍。富士山広域写真家の第一人者であり、風景、花、天体写真などの作品も多い。現在は日本写真家協会(JPS)会員。

門出平男(もんで・ひらお)
写真家の道具論あれこれプロの金言撮影機材&持ち物リスト取材こぼれ話おうち編
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