5,000m以上の峠越えをする輸送隊

絨布寺より望むチョモランマ峰(8,848m)

 
完全な形で現存する古橋

メコン川を渡る(西蔵)

玉津橋(雲南省)

 

誰もが知っているシルクロードは
観光地化されていて魅力が半減。


 初めてカメラのシャッターを押したのが昭和30年代の中学生のとき。しかし本格的に撮り始めたのは、それから40年も経った53・54歳の頃からとおっしゃる加賀さん。
 「仕事がありましたので遠くに出かけることができず、海外まで脚を延ばして撮るようになったのは、仕事を辞めた61歳を過ぎてからのことです。もともと少数民族の暮らしに興味があったので、最初の頃は中央アジアをターゲットにしていました。ところがその地域が政情不安になってしまい、それではと中国へ行ってみたところ、こちらは治安も安定していたので、安心して写真を撮ることができたのです。九寨溝へ撮影に行った時に、自分の思い描いているのは観光地化されていない昔ながらの地域なのだと現地の人に話したところ、ではシルクロードはどうかと言われたのですが、今では誰もが楽に行けるので興味が薄らいでいると伝えました。それなら山沿いの道があると言われ、それが『茶馬古道』で、その話を聞いて興味を持ったのがきっかけになり、約五千キロの全行程を追い続けることになりました」。


人が行かないところ、人に知られていないところに魅力を感じる。


 昨年頃から日本でも『茶馬古道』が話題になりはじめ、現地の旅行会社が日本人向けに「茶馬古道」のツアーを組むほどになりました。
 「私が最初に『茶馬古道』へ行った4年前は、日本でその情報を入手することはとても困難でした。当然ツアーもありませんので、自分でプランを練ってインターネットで現地の旅行会社に行きたい場所や期間を伝え、ガイドさんや運転手さんを手配してもらいました。これまでに10回に渡る撮影を行い、毎回同じガイドさん、運転手さんなのでお互いに気心も知れていますが、初めての時はそれはもう不安だらけでした」。
 その当時、加賀さんはガイドさんから「『茶馬古道』の撮影に来たのは、あなたが初めて」だと言われたそうです。
 沿線の少数民族の暮らしを見ていると、ご自分が幼かったときのことを思い出し、とても懐かしい気持ちになったとおっしゃる加賀さん。
 「最初は道の存在よりも、そこに暮らしている少数民族の姿に魅力を感じました。中国でも観光地化された地域の人々はカメラにも慣れていますが、『茶馬古道』沿線では今でもカメラを嫌うお年寄りがいます。反対に、こどもたちはカメラを向けるとこちらに寄ってきます。当然私は言葉がわからないので、身振り手振りでしかコミュニケーションは取れないのですが、かえってそれがいいみたいです。お礼にはその場で出来上がるインスタントプリントが喜ばれますね」。

3年に渡り追い続けてきた「茶馬古道」。
その魅力を写真展で伝えていきたい。


 この3年間に『茶馬古道』に10回通われた加賀さん。ほとんどの区間を走破し、現在到達していない区間は、チベットからヒマラヤ山脈を越えて行く、ネパール・インドへのルートです。
 「この最後の区間も今年の11〜12月に行く予定です。『茶馬古道』には今年だけでもすでに3回行きました。自分としては長い時間をかけて撮影してきたので、その魅力を伝える写真展を、4回くらいに分けて行ないたいと思っています。7月には第1回の写真展をフォトギャラリーキタムラで開催しましたが、これは『茶馬古道』沿線の古道を中心にしました。年末には2回目の開催を予定しています。そこでは“暮らし”と“人々”をテーマにするつもりです」。
 残された『茶馬古道』の最後の区間を撮影した後は、もともと興味のあった中央アジアの国々の撮影に取り組まれる予定とおっしゃる加賀さん。私たちがまだ知らないさらなる魅力あふれる写真に、近い将来出会うことができそうです。

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