【メリーゴーランド】細かい朝露をまとったクモの巣を、斜めの方向から捉えた。開放絞りのボケ味を活かし、前後はソフトにボカしている。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:180mm マクロ F3.5 絞り:開放 +0.7EV補正 シャッタースピード:絞り優先 AE フィルム:RVP100 三脚使用 撮影地:長野県東山高原
 



【かぜのベール】赤い花を前ボケにして、ポピーの一輪をマクロレンズでクローズアップした作品。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:180mm マクロF3.5 絞り:開放 シャッタースピード:絞り優先AE フィルム:RVP100 三脚使用 撮影地:千葉県南房総



【ウェーブライン】小雨の中でハスの葉と雨粒に着目。葉の緩やかなラインを切り取り、滴の中に映る花に焦点を合わせた表現。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:180mm マクロ F3.5 絞り:開放 -0.7EV補正 シャッタースピード:絞り優先 AE フィルム:RVP100 三脚使用 撮影地:京都府立植物園

 
大学で制作していた版画作品の
素材づくりが写真との出会い。


 江口さんがカメラを手にしたのは大学生の時。そのきっかけは版画作品の素材づくりのためでした。
 「愛知県立芸術大学でリトグラフ(石版画)の制作をしていまして、その素材にするために人物や風景を写真に撮ったのがカメラとの出会いです。それは父親が使っていた2眼レフカメラでした。撮影したモノクロフィルムを大学の暗室で現像して、印画紙に焼き付けるまでの工程を自分で行なっていました。この暗室作業には面白さを感じましたが、撮影することが特別好きだったわけではありません」。
 大学を卒業して印刷会社に就職。その後、結婚されお子さんが生まれたのをきっかけに一眼レフカメラを購入し、毎日写真を撮るようになりました。お子さんが歩けるようになると近くの植物園などに出かけて撮影。その時に花の写真も撮っていたそうです。
 「当時は花の写真以外に、船の錆びた部分や水面に映り込んだ景色など、今とは全く違う被写体を撮っていました。初めての一眼レフカメラでしたので、自分なりに写真表現の面白さを味わっていたんです。花を中心に撮り始めるようになってからはリバーサルフィルムを使うようになりました」。


肉眼では見ることのできないものが見えてくる。
そこには驚きと発見がありました。


 やがて植物園の花をクローズアップで撮り始め、その肉眼では見ることのできない独特の世界に魅了されていった江口さん。
 「でも当時はマクロレンズを持っていなかったので、80〜200mmのズームレンズにクローズアップレンズを付けて撮影していました。仕事はアートディレクターをしていましたので、マクロで写しだされる花の形や色に興味があり、撮影のたびに驚きと発見の連続でした」。
 平日は仕事なので休みの日に撮影をし、撮った写真もかなりの数になっていた頃、江口さんは10年間勤務した印刷会社を退職しました。それは花のマクロ撮影を始めて5年が過ぎた頃でした。
 「元々サラリーマンは自分には向いていなかったのです。時間や予算に縛られて仕事をすることに抵抗がありました。退社後はフリーのデザイナーと写真家という、二足のわらじを履いた生活を3年ほど続けていました。しかし、一人でやっていましたので徹夜の連続。当然体がきつくなってきましたので、少し不安ではありましたがデザイナーは辞めて、写真一本で行くことを決心したのです」。
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